犬夜叉の悲劇

作・兜

「下がっていろ、カゴメ」
そう言うと、犬夜叉は持っていた刀で切りかかった。相手は、人間のような妖怪・ばく。犬夜叉と対して身長は変わりない。しかし、犬夜叉よりも少し身軽だった。
「犬夜叉、獏は普通、手下と来るはず。どこかに手下が・・・・・・・・」
アドバイスしたのは法師・弥勒。少しスケベなのがいけない法師だ。
「分かったぜ、弥勒!」
「ふふふ。お前らには死んでもらう」
獏は不吉な笑みを浮かべながら口笛を吹いた。
「きゃあああ!!!」
「カゴメっ!」
獏の口笛にあわせて、手下の雷鳴が出てきてカゴメと弥勒を襲った。
「雷撃派!」
雷鳴がそう言うと、雷鳴の手から無数の雷が出てきて弥勒たちのほうを襲う。
しかし、カゴメと弥勒は間一髪のところで避けた。
「あれを避けるとは、なかなかやるな」
「ご主人様、雷鳴は火炎を呼び出したほうがいいと思います」
「よし」
獏が、もう一度口笛を吹いた。
「今度は何?」
カゴメがそう聞くと、獏は
「お前らが死ぬのさ!」
「ふざけんな!」
犬夜叉が再度切りかかった。しかし、雷鳴によって阻止された。
「火炎弾!」
不意に後ろをつかれ、弥勒が直撃を受けた。カゴメも避けたものの、足をくじいてしまった。
「カゴメ、ここから弥勒を連れて逃げろ!」
「で、でも・・・」
「はやくっ!」
一瞬とまどった様だが、カゴメは走って逃げた。しかし弥勒はもう死んでいた。
「やれやれ、逃がしちまったか・・・犬夜叉この償いはしてもらうぞ」
そう言うと、獏は犬夜叉から見えないようにして、手下の雷鳴に合図をした。
「雷撃派!」
犬夜叉を無数の雷が貫く。
「うっ・・・」
気を失った犬夜叉を獏は担いであたりを見回した。
「犬夜叉―!」
カゴメがさけんだ。チッと舌打ちをした獏は、カゴメを手下の忍者・ひょうえんに追わせ、犬夜叉を担いだまま消えた。

「あいててて・・・」
「気がついたか?犬夜叉」
「獏っ!」
そう言って、獏に殴りかかろうとした犬夜叉だが、手足が動かない。なぜなら、獏につかまった犬夜叉は、ふんどし1枚にされ、石の十字架に縄ではりつけにされているからだ。
「残念だが、弥勒は死んだ。もう時期カゴメも死ぬだろう。」
すました顔で犬夜叉に告げると、犬夜叉をにらんだ。
「てめえ、ふざけたこというな!」
犬夜叉が、いつもの調子で縄を切ろうとするが切れない。
「くそっ、何で切れねえんだ、この縄は!」
「ふふふ、それはねえ、君の力を抑える力がこの縄にはあるんだよ。」
「くっ・・・・・」
犬夜叉はあきらめた顔で獏に言った。
「何を望むんだ、獏」
「犬夜叉、君が持っている四魂しこんの玉だ。どこにあるのかな?」
「なんだと!?」
四魂の玉とは、犬夜叉が集めている玉で、もともと1つの玉だったが、砕けてしまったのだ。犬夜叉はそのうちのほとんどを持っていた。1つの玉なら願いがかなうこの玉のかけらを犬夜叉はどこかに隠したのだ。
「渡せるか!このくそ野郎!」
「痛い目にあいたいかい?とっとと白状しな!」
「せっかく集めたものをわたせるか!」
「じゃあ仕方ない・・・雷鳴」
「ははっ!」
「やれ」
というと、犬夜叉の両腕をつかんだ。
「おい!」
雷鳴の呼ぶ声に返事した。
「なんだ」
「いわねえと、さっきと同じ目に会うぞ、いいのか?」
「うるせえ!」
「その口の聞き方は何だ!」
雷鳴が怒鳴っていると、火炎が犬夜叉に向かって
「いい体つきしてるな。筋肉質だし、力はある。だが、その体がいつまでもつかな?雷鳴の電撃に耐えられるかな?」
獏が雷鳴に、
「おい、やれ」
合図をうけた雷鳴は、犬夜叉の体をつかんで「雷撃派」をした。
「ぐおおおおおお!くっ!あああああああ!」
犬夜叉の体に青白い電流が流れた。20秒ぐらい食らっていたようだ。
「まだ言う気にはなれんか?」
「そんぐらいで言ったら終わりだ」
ふっと笑みを浮かべて、犬夜叉は雷鳴をにらんだ。
「もう1度してやる。雷撃派!」
「ぐおおおおおおおおお!!!あああ!!」
「なかなか強情だな!火炎、洪水を呼んで来い!」
獏の命令にしたがって、火炎が洪水を呼んできた。
「獏様、私の雷撃派は電気切れです。別のやつに交代を・・・」
「そうだな、よし、雷鳴下がれ、洪水、やれ」
「了解」
洪水は犬夜叉に近づき、縄をほどいた。どさっと犬夜叉が倒れた。すぐさま洪水が、犬夜叉の手足をさっきの縄で縛った。さらに、錘を両足につけた。その重量は相当ある。そのまま犬夜叉の手に鎖をつけ、空中に吊り上げた。
「ぐっ、重てぇ」
犬夜叉が苦痛に顔をしかめる。そこに、巨大な水槽が用意された。深さは3メートルくらい。水がたっぷり入っている。これを見て、洪水が
「白状するか、沈められるか、どっちがいい?」
「さあな」
「じゃあ、沈め!」
そう言うと洪水は犬夜叉を水槽の中に沈めた。犬夜叉は必死に耐えているが、息ができない。しかも、錘が水槽の底についていないため、犬夜叉の足にも苦痛が走る。ついに犬夜叉は気絶してしまった。時を見計らって、獏が言った。
「上げろ」
ガラガラと音を立てながら、犬夜叉が、水槽から出された。獏が、鞭で犬夜叉をたたき、
「言う気になったか?」
と、聞いた。犬夜叉は飲んだ水を吐き出して、
「まだだ」
と言った。この答に不満だったのか、獏が
「吐くまでやれ」
と、言ってどこかに行ってしまった。
この後、洪水の拷問を犬夜叉は9回受けた。気絶しては上げられ、鞭でたたき起こして沈める。この繰り返しである。もう犬夜叉は、限界だ。
「言う気になったか?」
洪水が聞くと、獏がやってきた。
「言えねえな」
「ほう・・・・・」
獏が持ってきたのは、鉄の棒だ。犬夜叉に見せつけながら、
「今度はこれだ」
一瞬、びびった犬夜叉は、
「殴っても言わないぜ!獏」
「違う犬夜叉!おい、火炎。火を」
そう言うと、火炎が鉄の棒に火を吹きかけた。鉄の棒が真っ赤に染まっていく。それを犬夜叉に押し付けるようだ。
「やるならやれよ」
あきらめの表情で言った犬夜叉に対し獏は、
「お望みどうりに」
と言って、鉄の棒を押し付けた。両手・両足に押し付けた。
「ぐわああ!くそっ、何しやがるんだ、このゲス野郎め。ぐうああああ!」
「口の聞き方には注意したほうがいいぞ!」
さっきの一言に怒った獏は、雷鳴に雷撃派をさせた。水に浸かっていたため、痛みがます。
「ぐわあああ!ぐおっ!ああああ!」
さっきよりも強い電撃が、犬夜叉を襲う。獏は、洪水と火炎に命令をした。洪水には犬夜叉を、さっきの十字架に、磔にするように言った。火炎には、犬夜叉の刀を持ってこさせた。吊り下げられていたため、縄をほどかれた時、脱出しようと出口に走る。しかし、両手足の火傷と錘で思うように走れない。犬夜叉の前に、獏が現れ、鳩尾を一発殴った。うずくまっている犬夜叉を、すかさず洪水が磔にした。
「クソっ」
犬夜叉はもうだめだと思った。なぜなら、手足が動かないうえに、両手まで錘をつけられたからだ。
「犬夜叉、素直に言えば殺さないでやってもいいぞ」
獏の、言葉に犬夜叉は
「オマエにやるぐらいなら、死んでやる」
「仕方ない」
獏は、そう言って刀で首を切ろうと刀を首にあてたが、やめた。
「獏様―!」
忍者の雹と煙が帰ってきたからだ。二人はこっそり獏に近づいて、小声でつぶやいた。
「四魂の玉は、カゴメが持っていました」
それを聞いた獏は、雹から四魂の玉をもらい、犬夜叉に
「四魂の玉にありかは言わなくていい。あきらめた。仲間になるのなら、おまえを殺さない。どうする?」
犬夜叉は、度重なる拷問によって弱気になっていた。それで、
「わかった、仲間になる・・・」
獏は、この言葉を聞いて、犬夜叉を解放した。
「じゃあ、最初の任務だ、犬夜叉。奴らを殺せ!」
「はい、獏様!」
そう命令された犬夜叉は、赤い衣を着て、火炎・雷鳴・洪水を倒しに行った。
「獏様、これは?」
「お前らはもう用無しだ。犬夜叉に殺されろ」
状況を飲み込めていない間に、犬夜叉は刀で3人の首をはねた。
もう犬夜叉は、完璧な獏の手下となっていたのだ。

この後、獏が持っていた四魂の玉のかけらと、カゴメから奪い取った四魂の玉のかけらを合わせて、願いを言った。犬夜叉と獏を不老不死に・・・と。願いはかなった。

その後、獏と犬夜叉が天下を取ったのは、言うまでもない・・・
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