鬼畜たちの宴

 

              一

 

「ぎゃ~~~~あああっ」

「やめ・・・、やめて・・くだ・・・・さ・・っ」

「ばち~~~~~~ん」

 女の懇願する声をかき消すように鞭を打つ音が響く。

「ぎっ、ぎゃ~~~~~~~~~あああっ」

 女がものすごい悲鳴をあげる。

 両手を縛られ上から吊るされ、つま先立ちの裸の女に、仮面を付けた女が革鞭を打ちつけている。ステージの両脇には、屈強な男が一人ずつ立っていて、それを見守っている。まだ始まったばかりだが、既に顔中涙でべとべとになり、打たれる度に悲鳴をあげて、許しを請うている。

「百回もつかな、この女。始まってから今のでまだ五回目だぞ」

 横にいたラルフが耳打ちした。

「どうだろうな」

 今岡がぶっきらぼうに言った。

「でもこんな調子では、この先どうなるのか分かったものじゃないな」

 何かを期待するような感じでラルフが言った。

 

              二

 

 一人の女と四人の男がステージに立ち、女が、手にした一枚の紙を読み上げた。仮面を付けて、顔つきが分からないようにしているが、かなりの美人であろうということは、仮面の上からでも容易に推察できる。

「皆様、ようこそクラブ・デスティニーへお越し下さいました。本日も最高の、そして本物のエンターテインメントを、皆様が楽しめるよう、準備を整えることができました・・・」

 流暢な英語で女が話しはじめた。

「ここはドイツなのに、なんで、英語で話している?」

 今岡がラルフに聞いた。

「アメリカやイギリスからもお客が来るからだろう。英語は万国共通語だからな」

 今岡が納得したようにうなずいた。

 女の話は続いている。

「私はマスター・ローザ、そしてこちらがマスター・ケイン・・・」

 マスター・ケインと紹介された男が一歩前に出た。端正な顔つきで、なかなかの二枚目だ。このような場所には似つかわしくないイメージだ。

「こちらがマスター・ディーター・・・」

 ディーターも一歩前へ出た。ケインと違って、なかなかの強面だ。ナチスものの映画の中で、女を拷問している軍人という感じだ。

「そして、アシスタントのジャンとロバート・・・」

 二人とも、身長は二メートルぐらいあるだろうか、ボディービルダーのような筋肉質で、でまるでプロレスラーのような体格だ。立っているだけでも、ものすごい迫力と圧迫感を感じる。

「本日は三人の生け贄を用意いたしました。皆様のご要望に叶った、若くて美しい女たちばかりです。これから、私たち三人のマスターによって、三人の女たちを、皆様が満足なされるような拷問にかけたいと思っております。それでは、どうぞ最後までお楽しみ下さい」

 客席からの拍手とともに、短い挨拶とスタッフの紹介が終わった。

 

 すぐに一人の女が裸のまま、ジャンとロバートに脇を抱えられ、引きずられるようにして連れてこられた。抵抗はしているものの、さすがにこの二人に抱えられていてはどうしようもない。

 年は二十歳前後か、かなりの美人だ。長いブロンドの髪と、スレンダーな体の割には豊満な胸がその女の美しさを際立たせている。

 ローザが、女が来るのを待って続けた。

「この女は、ビクトリア・スウェイジ。アメリカ人で二十一歳。オランダのロッテルダムで捕獲され、ここへ連れてこられた。これよりこの女を拷問にかけ、皆様にお楽しみ頂きます」

 ビクトリアが悲鳴をあげ、盛んに何か叫んでいるが、それを無視するようにローザがビクトリアに向かって、

「これよりビクトリア・スウェイジに対し、百回の鞭打ちを行う。また、それに耐えられなかった場合には、その後、さらなる拷問を行う」

 その瞬間、ビクトリアの悲鳴と抵抗がさらに激しくなった。どうにもできない様子がなんとも哀れだ。

 

                三

 

 ローザが振るう革鞭は、ビクトリアの豊かな胸、腹、背中、尻、腿などを打ち付けていく。カウント数を見るとまだ二十八回目だ。パシーン、パシーンと音がすると同時にビクトリアの悲鳴が響き渡る。

「まだまだこれからよ。こんなところでそんなに悲鳴をあげていたら最後まで持たないわよ」

 ローザが意地悪そうにビクトリアに言い放つ。ところどころ皮膚が裂け、血が流れ出ている。ビクトリアは何度も止めてくれるように懇願するも、容赦なく鞭打ちは続く。四十三回目の時、ビクトリアの体から力が抜けたような感じになった。

「どうやら失神したみたいだな」

 ラルフが言った。

「どうするんだ?」

「強制的に意識を取り戻させるだけだ」

 ステージの脇にいたロバートが、ビクトリアの口元にマスクのようなものをあてて、なにやらしている。不思議そうに見ている今岡に

「何のガスだか分からないが、そのガスを鼻から吸わせるとすぐに意識が戻る。」

 とラルフが説明した。

 ビクトリアは意識が戻ったのか、何やら喚いている。

「ここまでは序の口だ、本番はこれからだ」

 ラルフが独り言のようにつぶやいた。

 ジャンとロバートがビクトリアの両脇に立ち、ビクトリアの両足首にロープを結び、そのロープの先をステージ上部の左右両方にある滑車にそれぞれ通した。恐怖に満ちた顔でビクトリアは必死に抵抗するも、無言で二人は作業を進める。二人が力を込めてビクトリアの足首に結ばれたロープを左右同時に引っ張った。足首から、足が広げられるようにしてビクトリアの体がだんだんと持ち上げられてゆく。

「きゃああああ~~~あああ」

 ビクトリアが悲鳴をあげる。足首が滑車のところまで来たとき、ジャンとロバートは、それぞれその横の部分にある鉄で出来た輪に、もう一度ロープでビクトリアの足首を固定した。その結果、ビクトリアは足を広げた状態で、逆さに宙づりになってしまった。

 ローザが革鞭を持ってビクトリアに近付いた。客席から催促するように手を叩く音がもれてきた。口笛を吹く者もいる。それに釣られるようにビクトリアが悲鳴をあげる。

「お楽しみはこれからよ、ビクトリア」

 そう言って、おもむろにローザは、上に向かって開かれているビクトリアの女の部分に指を滑り込ませた。そして愛撫するように優しく指を動かし始めた。ビクトリアの体はブルブルと震えている。

「そんなに震えなくてもいいのよ。もう少し感じさせてあげるから」

 と言って、ローザが妖しくイヤらしい手つきで、ビクトリアの女の部分をまさぐっている。

「ああっ、やっ、や・め・て・・・、くださ・・・いっ」

 ビクトリアが逆さに吊られたまま腰をもぞもぞさせている。

「どう? 感じてきた? だいぶ濡れているけど。声を出してもいいのよ。あなたがいつもベッドの中でしているようにね」

 意地悪そうに言って、ローザの口元に笑みがこぼれた。ビクトリアは声を出すのを我慢しているのか、苦しそうに口元を歪めている。

「ふふふ・・・」

 ローザが笑みを浮かべて、弄んでいた指を離した。そして右手に鞭を持ち、ビクトリアの股間めがけて振り下ろした。

「ばし~ん」

「うっ、ぎゅああああ~~~~~~あああ、ぐぎゃああ~~~~~~あああっ」

 その瞬間、いきなり襲ってきた激痛に、ビクトリアの目が見開かれ、ものすごい悲鳴が響き渡った。

「おっ、お願いです。もうやめ・・・」

「ばっし~ん」

「ぐっ、ぎゃ~~~~、ぎゃ~~~あああっ」

「ばっし~ん」

「いっ、ぎゃ~~~~~~~~~っ」

 すさまじい悲鳴が続き、ビクトリアが泣きながら哀願するも、それには構わず鞭が振り下ろされる。

「ぱし~ん」

「ぎ、ぎ、ぎっ、ぎゃ~~~~~~~~~~~~~あああっ」

 そして、再開してちょうど十回目の時、ビクトリアがまた失神した。

「あらら、また失神しちゃったの?」

 ローザが両手を広げた。

「すごい・・・」 

 今岡が独り言のようにつぶやいた。上に向かって広げられたビクトリアの女の部分が赤く晴れ上がっているのが、客席からでも分かる。ロバートが再度、あのマスクをビクトリアに当てて、また意識を取り戻させた。

「あっ、あわ、あわっ、もうっ、もう、ゆっ、ゆっ、ゆるして・・・く・だ・・」

 意識を取り戻したビクトリアが懇願するも、それを無視して、ローザがビクトリアの性器めがけてまた鞭を振り下ろした。

「ばし~ん」

「ぐっ、ぎゃ~~~~ああああっ、うぎゃああああ~~~~あああっ」

 その後、ビクトリアは胸、股間などあらゆるところを打ち続けられた。失神すると強制的に意識を取り戻させられるという繰り返しで九十回を過ぎた頃、また失神した。しかし、鞭打ちはそのまま続けられた。最後は顔面めがけて鞭が振り下ろされたが、すでに悲鳴も聞こえなかった。

 百回の鞭打ちが終わった。皮膚が裂け、血が流れ、逆さに吊られた体に動きはなかった。

「まあ、あの女も頑張った方だろう。でも最後は失神したままだったから、次の拷問は免れないだろうな。といっても、奴らも最初から鞭だけで終わらすつもりはなかっただろうけど。それに、それでは面白くないしな」

 呆然とした表情の今岡にラルフが言った。

「・・・・・」

「ん? どうした」

 今岡に再度問いかけた。

「すっ、すごい迫力だ・・・」

 今岡はそれ以上言葉が出なかった。

 

             四

 

 今岡光太郎がドイツ郊外の都市、デュッセルドルフへ赴任してきて二年が過ぎた頃、ラルフ・クルーガーと知り合った。単身赴任だった今岡は、仕事帰りに馴染みのバーに寄ってから帰るのが日課になっていた。そんなある日、一人で飲んでいた今岡に、声をかけてきたのがラルフだった。最初は単なる飲み友達だったが、二人は気が合うのか、古くからの友人のように打ち解けていった。

 ある時、今岡がラルフの招きで、彼の部屋で飲んでいるとラルフが、こういうのは興味ないかといって、一本のビデオを今岡に見せた。そのビデオには拷問にさらされる若い女たちが映っていた。

「ドイツ人は変態が多いと言われているけれど、本当だったんだな」

 今岡が皮肉を込めてそう言うと

「まあ、それは認めるが、これが俺の趣味だ。どう思う?」

「悪くないんじゃない?」

 素っ気ない感じで今岡は言ったが、実を言うと今岡もラルフと似たような趣味があった。日本に居るときは、家族に内緒で、密かにSMや拷問に関する書籍、それにビデオや映画なども集めていた。ここドイツへ来てからもその手のホームページを立ち上げて主催するほどのマニアでもあった。そのことをラルフに言うと少し安心した表情をして、今岡へ向かって照れ笑いをした。

「思いきって話してみて良かったよ。実はちょっと不安だったんだ。飲み友達とはいえ、ただの変態とは思われたくないからな」

「変態だと自覚しているのか?」

 今岡が笑いながら意地悪そうに聞いた。

「そういうお前だって、俺と似たようなものだろ」

「いや、俺は・・・」

 今岡が何か言おうとしたのを片手で遮って、ラルフが、

「まあ、そんなことはどうでもいい、実は今度の土曜日に俺の知っているところで拷問ショーがあるけど、一緒にどうだ?」

「いいねぇ、ぜひ誘ってくれよ」

 軽い感じで今岡が答えた。

 しかし、ラルフが急に真剣な口調になり話しはじめた。

「最初に断っておかなければならないが、このショーはアンダーグラウンドのショーだ。だから秘密は絶対に守られなければならない。そのことは理解して聴いてくれ。そうじゃなかったら、おれたちが危なくなるからな」

「どういう意味だ?」 

 普通のSMショーのようなものだと思っていた今岡が、不可解な表情で聞いた。

「秘密は守れるか?」

 真剣な表情で、再度ラルフが聞いてきた。

 どうやらマジらしい。

「ああ、口は堅いつもりだ」

 声を一段低くして、今岡が言った。

 ラルフがバーボンを一気に飲み干し、話を続けた。

「俺が言っている拷問ショーというのは、何処にでもある普通のその手のショーじゃない。全て本物だ。ヤラセはいっさいない。若い女を本当に拷問にかけて、それを見物するんだ」

 今岡は鼓動が早くなるのを感じていた。ビジネスマンとして世界各国を回ってきた今岡は、地下でそういうことが行われているという噂は何度か聞いたことがある。ハードSMショー、強姦ショー、殺人ショー、人身売買などなど・・・。裕福な人間を集めて、裏の組織が運営しているというのがお決まりのパターンだった。そして、実際にそのような闇の風俗を体験したことがあるという香港の友人から、その内容を聞いたこともある。ただ、今岡自身そういう誘いは今まで一度も受けた事がないし、自分には縁のない世界だと思っていた。しかし今、自分にその誘いの声がかかっている・・・。

 ラルフが続ける。

「俺自身、まだ三回しか見にいったことはないが、ものすごい迫力だ。いちいち考える必要もないが、それは当たり前のことだ。何せ、何も知らずに、しかも拷問にかけられるなんて思ってもいない普通の若い女たちが、突然連れてこられて手加減なし、ヤラセなしの本当の拷問にかけられるのだからな。それも徹底的にな。女が絶叫する声、一つとっても、普通のショーのそれとはまるっきり違う

 一晩に三人の女を拷問にかけて観せるんだが、横に置いておきたくなるような、いい女ばかり集めてくる。その女たちも、最後には見るも無惨な姿に変わり果てる。それぐらい本格的だ」

 今岡はどのように反応したらいいのか分からなかった。ラルフの話の内容よりも、このような話を聞かされて不快感を覚えるよりも、逆に興奮してくる自分が恐かったからか。

「それってヤバくないのか?」

 やっと言葉を見つけて、今岡が言った。

「ああ、普通に考えればな。しかし、その組織にはある大物が関わっている。誰だか言えないが、お前も知っている人間だ。だからおれたちが逮捕されたり、まずいことになることは絶対にない。秘密を漏らさない限りはな。それは保証する。それに客のほとんどは、社会的に成功した金持ちか特権階級の連中、それ以外にも政治家など政府関係の連中もいる。それなりの地位も名誉もある彼らが客としてくるのだから、当然、主催する側もそれなりの手は打ってある。そうでなければ、客は集まらないからな」

 確かにその通りだと今岡は思った。地位も名誉も持っている連中が、すべてを失うリスクを冒してまでこのようなショーを見に来るわけがない。とりあえず、安全と思っても差し支えないだろう。

「でも俺なんかが行ってもいいのか? 俺は金持ちでもないし、たいした地位も名誉もない」

「そんなことは気にするな。俺の紹介さえあれば大丈夫だ。それに俺だってたいした身分の人間じゃないからな」

 笑いながらラルフが言った。

 “たいした身分じゃない”か。でもラルフが若くして投資の世界で成功し、ドイツ国内はもちろん、ヨーロッパの投資家や金融関係者の間では、ちょっとした顔であることを今岡は知っている。だが、あえてそれには突っ込まなかった。

「ところで、拷問にかける女たちはどこから連れて来るんだ?」

「それは俺にも良くは分からないが、その筋の業者へ頼めば、どこの国の女でも世界中から集めてきてくれるらしい」

「要するに誘拐してくるってことか」

「さあな、でもそういうことは知らない方がいい。ただ俺たちはヤラセなしの本物を楽しめると思えばいいんだ。そのために安くはない金を払うのだからな」

「いくらぐらいなんだ?」

 今岡がためらいがちに聞いた。

「本当は二十万ユーロの入会金が必要だが、会員一人につき、他に一人まで、ショーの料金だけで入れる。俺が会員だから、お前はショーの料金だけでいい。それでもちょっと高いが、一人三万ユーロだ。そのかわり十五人しか参加できないから、十分に楽しめると思う」

 楽しめる、か。今岡は苦笑いした。しかし三万ユーロとは高い。日本円で四百万円くらいか。十五人で約六千万円。たった一回のショーでそれだけの金が動くのだから、多分相当なモノなのだろう。

 三万ユーロの出費は痛いが、そのぐらいなら用意はできる。それに、このような誘いはめったにあることじゃないし、興味もある。今岡はラルフに自分も連れて行ってくれるように頼んだ。

「そうくると思ったよ」

 ラルフが嬉しそうに言った。

 

 あれから三日、いま最初のショー、鞭打ちが終わった。これだけでも今岡にとっては十分すぎるほどの衝撃であった。しかし、まだ始まったばかりだ。この後どんな残虐なショーが繰り広げられるのだろうか。想像するだけでもわくわくする。

 今の今岡には、残酷な拷問を受ける罪のない女たちに対しては、哀れみよりも自分の欲求を満たすためのひとつの材料としてしか感じていない。しかし、すでに自分も女たちと同様、すでに引き返すことのできないところに来てしまっていることに、今岡自身、まだ気づいてはいなかった。

 

               五

 

 ステージはそれほど大きくなく、横七~八メートル奥行き三~四メートルくらいか。照明も十分で、明るくて見やすい。人を拘束できるように出来た台や椅子などが置いてある。右奥には内側が赤々と燃えるレンガ製の暖炉のようなものが目に付く。そこに鉄の棒などが無造作に何本も入れられているが、たぶん焼ごてか何かだろう。壁や壁際には鞭などの拷問のための道具が何種類も置かれている。拷問に関してそれなりの知識があると自負している今岡ですら見たこともないような器具なども置かれてあった。たぶんここ独自の器具なのだろう。

 ステージの床はタイル張りだが、客席側は分厚い絨毯が敷き詰められている。ステージと客席の境目には高さ一メートルほどのガラスのような透明の板がステージと客席を分け隔てるように左右の壁まで伸びている。客席とステージとの距離は三メートル程しかないため、客は目の前で行われている拷問を至近距離で見ることができる。しかし拷問中は血や汗などが客席に向かって飛ぶこともある。この透明な板は、それらが客席に飛び散らないように設置されている。ラルフによれば、この板をこえて血などが飛び散ることはめったにないというが、今岡にとっては無いよりもまし、程度にしか思えなかった。

 客席は十五人定員の割には余裕を持たせてある。一人がけの大きめのソファーに、専用のサイドテーブルが付いている。客はそこに座り、酒などを飲みながらリラックスしてショーを楽しめる。また、接客のための若い女性が二人いて、客の世話をしてくれる。

 客は十五人、今岡以外は全員白人だった。その中に女性も三人いた。仮面舞踏会で見るような仮面をしている客が何人かいる。自分の顔を見せたくないのだろうが、それがまた異様な雰囲気を作り出している。

 

「この後どんな感じで行くのかな?」

 今岡が聞いた。

「さあな。でも期待は裏切らないショーが続くことは保証するよ」

 ラルフが得意そうに言った。

 一人の男が出てきた。ケインだった。手には鞭を持っている。続いてジャンとロバートに両脇を抱えられるようにして連れられた若い女が入ってきた。さっきの女よりも若く見える。東洋系で、多分十七、八歳くらいか。黒い瞳の大きな目が印象的だ。綺麗というよりもかわいいという感じか。ジーンズにTシャツというラフな格好だった。

 すでにこの場の雰囲気を察しているのか、少女は何か喚きながら泣いているが、ケインが鞭を床に思いきり叩き付けたら少女は怯えるように大人しくなった。

 ケインが一枚の紙を持って、少女に向かってそれを読み上げた。

「マギー・チュン、十七歳、中国人。香港にて捕獲。これよりおまえを電流拷問の後、更なる拷問を加え、お客さまにお楽しみ頂く」

 読み終わるやいなや、

「な、何でもしますから・・・、お願いですから拷問はしないで・・・」

 とマギーが泣きながら必死に懇願している。しかしそんな少女の思いを無視して、ケインがジャンとロバートに向かって合図を送った。

 すぐにジャンがマギーを押さえ付け、ロバートがTシャツを引き千切るようにして脱がした。そしてジーンズと下着も脱がし、マギーはあっという間に全裸にされてしまった。大きいというよりはきれいに整った乳房がなかなかいい。今岡は、これからマギーが電流拷問にかけられ、その後どのような拷問にかけられ、絶叫するのかを想像すると、すでに興奮を抑えきれなくなっていた。

「電流拷問の後はどんな拷問をするんだろうな?」

 今岡がラルフに聞いた。

「そう早まるなよ」

 笑いながらラルフが今岡を諭すようにそう言って続けた。

「それは分からない。いつもそうだが、最初に女の前で、最初に行われる拷問を発表する。これは女を怯えさせて、その表情を楽しむためにする。そして、その後に何をするのか言わないのは、これだけでは終わらないから、“どのような拷問をするのか楽しみにしていろ”という、主催者側からのメッセージだと思えばいい。犯人が分かっている推理小説なんて読む気はしないだろ? それと同じで、最初からどんな拷問をするのか全部分かっていたら、意外性がない分、盛り上がりに欠けるからな」

 ジャンとロバートが用意されていた産婦人科の診察台のような台の上にマギーを乗せた。マギーは激しく抵抗するも、プロレスラー並みの体格の屈強な男たちの前には、なす術もない。頭、手、足、腹、胸とベルトで固定されて、足は上に向けて大きく開かれて固定された。

 ケインが、コードがついたクリップを持ってきて、無造作にマギーの両乳首に挟んだ。その瞬間、マギーが悲鳴をあげた。そして、マギーを乗せた台が、ジャンとロバートによって横向きから縦へと動かされた。大きく足を広げられ、丸見えになったマギーの性器が今岡の正面に飛び込んできた。縦に一本、筋があるだけの幼い性器だった。ケインがまた、コードの付いたものを取り出した。ただ、そのコードの先は、先ほどのようなクリップではなく、先が丸く曲がった釣り針を太くしたようなものが付いていた。

「マギー、拷問の前に少し気持ち良くしてあげよう」

 ケインが笑みを浮かべながらそう言って、大きく広げられている足の後ろ側に回り、マギーの性器を指で左右に大きく開いた。少女が泣きわめきながら、うっ、と声を出した。きれいなピンク色をした女性器が丸見えになった。そして、皮に覆われているクリトリスを露出させた。ピンク色の芽が露になった。男は弄ぶように、クリトリスをさすりだした。だんだんと少女の芽が大きくなってくるのが分かる。そして、追い打ちをかけるようにケインが、小さい玉のようなものを出した。たぶん小型のバイブレーターだろう。そして、それをマギーのクリトリスへと当てた。声こそ出さないが、マギーは不自由な腰をもぞもぞさせている。左右に開かれて丸出しになったマギーの女の部分は濡れて光っている。感じているのだろうか。

「気持ちいいかい、マギー。声を出してもいいよ」

 ケインがからかうようにマギーに問いかけた。

「や、やめて下さい」

 とマギーは言うが、ケインがそれをやめる気配はない。客も静かに成り行きを見守っている。一~二分ほど経った頃、ケインはクリトリスにあてがっていたバイブレーターをはずした。

「そろそろいいかな」

 とケインが独り言のように言って、そして、さっき彼が持っていたコードの付いた太い釣り針のようなものを客席に向かって見せた。誰も声を出さない。部屋の中は静まり返っている。そして、ケインはそれを、刺激を与えられて大きくなったマギーのクリトリスへと突き刺した。

「ぐっ、ぎゃ~~~~~~~~~~~あああっ」

 それまで静寂に包まれていた部屋にものすごい悲鳴と絶叫が響き渡った。興奮状態にされていたクリトリスに、あの太さの針をいきなり刺されたらひとたまりもないだろう。マギーはまだ悲鳴をあげているが、体は固定されていて動けない。痛みから逃れる方法は何もない。

 ケインは悲鳴をあげ続けるマギーを横目に、今度は、これも先からコードが出ている金属の棒を取り出して、それをマギーの膣に挿入した。

 

「準備が出来ましたので、どうぞお楽しみ下さい」

 そう短く言って、ケインがラルフのところへラジコンのコントローラーのようなものを持ってきた。コントローラーからもコードが延びている。コントローラーには左にLOW、右にMAXと書かれてあるダイヤルが付いてあるだけだった。

「このコントローラーで電流の操作が出来るんだ」

 とラルフが言って、おもむろにダイヤルをまわした。

「ぎゃ~~~~~~~~っ、やめて~~~~~~~~~っ、やめっ・・・」

 マギーが体を硬直させ、悲鳴をあげた。そしてダイヤルを戻すと悲鳴が止まり、マギーの息づかいだけが聞こえてくる。

「こうやって遊ぶんだ。お前もやってみろよ」

 遊ぶ、か、外道ここに極まれり、だ。今岡はおもむろにダイヤルを中間くらいまで回してみた。

「ぎっ、ぐぎゃ~~~~~~~~~~~っ」

 マギーがものすごい悲鳴をあげた。ダイヤルを戻すと悲鳴が止む。今度はMAXまで回してみた。

「ぎゃ~~~~~~~~~~~~っ、やっ、やめ・・て・・・、ぎゃ~~~っ」

 マギーがひときわ甲高い絶叫をあげる。足を大きく広げて縛り付けられた体を硬直させながら絶叫する姿は、今岡のサディスティックな欲求をますます刺激する。今度はリズムをつけてダイヤルを操作してみた。悲鳴がリズムに合わせて聞こえてくる。

「そろそろ隣へ廻してあげろよ」

 夢中になっている今岡にラルフが言った。

「あっ、すまない」

 と言って、今岡が隣の客へコントローラーを渡した。しかし、よく考えている。こうすることで、客が拷問に参加でき、拷問をしてみたいという欲求を満たされるのだから。

 まだコントローラーは客の間で廻されている。マギーは悲鳴をあげ続けている。もうかれこれ二十分以上は電流を受け続けているはずだ。他の客たちもそれなりに楽しんでいるのか、なかなか終わらない。

 一通りコントローラーが廻った。ケインが少女の両乳首に挟まれていたクリップを外し、膣の中に挿入してあった金属の棒も抜いた。そして最後にクリトリスに刺さった太めの釣り針のようなものだけが残った。再度、ケインがマギーの足の後ろ側に回った。そして、ジャンとロバートにマギーの性器を両側から開いておくように命じた。ケインがコードに手をかけて、それをそのままゆっくりと引っ張った。マギーのクリトリスに刺さっている太い針が、マギーのクリトリスを引っ張り上げる。

「きゃ~~~~~~ああああっ、あわっ、やっ、やめて・・・・」

 マギーが悲鳴をあげる。

 だが、ケインはかまわずにゆっくりとコードを引っ張る。クリトリスが引っ張られだんだんと伸びてくる。マギーは悲鳴をあげ続けている。そして、ケインがコードを強く引っ張った。

「ぎぎぎ、ぎっ、ぎゃ~~~~~~~~ああああああああああ」

 ものすごい悲鳴とともに、針がマギーのクリトリスから離れた。千切れたのかどうかよく分からないが、その部分からは血が出ている。

 しかし、これでは終わらなかった。すぐにケインがワニのあごの部分を模したペンチを取り出した。ワニのペンチだ。そしてギザギザした部分で引き裂かれたクリトリスを思いきり挟みこんだ。

「ぐぎゃ~~~~~~~~~~ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぎゃ~~~~あああっ」

 狂ったようにマギーが絶叫する。

 女が最も感じる部分を引き裂かれたばかりなのに、そこをワニのペンチで思いきり挟まれてはたまらない。

 客の何人かは興奮し、ケインに向かって煽り立てる。

 ケインはそれに答えるかのように、マギーの性器のいたるところを挟んだり、引っ張ったり、捻ったりしている。そして、仕上げにニッパを取り出し、クリトリスの部分を根元から切り取ってしまった。

「ぐぎゃ~~~~~~~ああああああっ、いっ、いた・いっっっ~~~」

 マギーは、ひときわ高い声で絶叫して、失神した。しかし、失神は許されない。すぐにマスクを使って、意識を取り戻させられた。ケインは切り取ったばかりのマギーのクリトリスの部分を指でつまんで客席に向かって見せている。口笛を吹く者、手を叩く者、隣の人とごそごそ話す者、客席のボルテージも上がってきた。

「これからですよ。本当の地獄は」

 ケインは叫びながら泣いているマギーに、追い打ちをかけるように言う。ケインはジャンとロバートに命じて、ギロチンの断頭台のような台の上にマギーの首と両手首を固定させた。台の高さは一メートルぐらいしかないので、マギーは腰をかがめるようにして拘束された。股の部分から流れ出ている血が足首にまで達している。

 ケインは奥の赤々と燃える暖炉のようなところから、真っ赤に燃えた一本の棒を持ってきた。長さは七十センチぐらいで、先に向かって細くなっている。それをマギーに見せながら、

「今からこの棒を、おまえの肛門へ突き刺します。まっ、たいした意味はありませんが、お客さまがお楽しみになられるのでね」

 口元に笑みを浮かべながら事務的にケインがマギーに言った。客席から笑い声と拍手が巻き起こった。

「ジャン、ロバート、マギーの肛門を露出させて、この真っ赤に燃えた鉄の棒を突っ込みやすくしてくれ」

 ケインがわざと説明するように、そしてマギーに聞こえるように二人に命令した。

「いやぁぁぁあああ・・・・・・・・・・、やめてぇ~~~~、おっ、おねが・・」

 何をされるのかを理解したマギーは、足をばたつかせて激しく抵抗し、絶叫したが、ジャンとロバートの前ではどうにもならない。二人の男によって足を押さえつけられ、綺麗に窄まったマギーの肛門があっけなくケインの前に晒された。

「おっ、お願いです。もう酷いことはしないで下さい・・・、おっ、おねが・・・」

「あっ、その前に突っ込みやすくするために、少し肛門を切らないと」

 思い出したようにケインが言って、ナイフを持って近寄り、刃先をマギーの肛門に入れ、上下に切れ目を入れた。切れ目を入れたところから、血が玉のように浮かび上がってきた。

「いや~~~~、いっ、いた・い~~~~。やめて~、やめて~~~っ」

 ケインは、マギーの声が耳に入らないかのように平然と指を肛門に入れた。すっと指が入った。穴が広がったことを確認して、火に焼けた鉄の棒をマギーの肛門めがけて突き刺した。

「ぐっ、ぎゃ~~~~~~~~~~~~~」

「あっ、熱い~~~~~っ、ぐっ、ぐうぇ~~~~~~~~~~」

 首と両手首を拘束された台をカタカタと音をたてさせながら、マギーが絶叫した。ケインは力任せに棒を押し込んでいる。棒が煙を上げながら徐々にマギーの肛門の中へ消えていく。何ともいえない、焼けたような匂いが漂ってくる。マギーは狂ったように叫び続けている。棒の長さが半分ほどになったとき、ケインは動きを止めた。

「三十センチぐらい入ったかな」

 今岡がラルフに聞いた。

「ああ、それぐらいだろう」

 マギーは放心状態になっているのか、うっ、うっ、うっ、と小さく呻いているだけで、ほとんど体が動かなくなったり、ふと思い出したように絶叫している。ケインの指示で、ジャンとロバートが乳房裂き器のようなものを持ってきた。鋭い鉄の爪が片側に二つ、合計四つ付いている。爪の部分が先ほどの鉄の棒と同様、真っ赤に燃えている。

「スペインの蜘蛛か・・・」

 今岡が誰にともなくつぶやいた。

「なんだそれは」

 ラルフが聞いてきた。

「古くからある拷問器具で、主に乳房を切り裂くのに使われる」

 今岡が簡単に説明した。

 一メートル程の台の上で、かがむようにして、首と両手首を拘束されているため、マギーの乳房は床に向かって垂れ下がっている。それほど大きくはないが、美しく整った乳房が震えている。

「かわいいおっぱいですね。これを千切り取るのは惜しい気もしますが、皆様がお待ちかねですのでね」

 下に垂れ下がった乳房を掌で弄ぶようにしてケインが笑みを浮かべる。マギーは顔が真っ青になり、叫びはじめた。

「おっ、おねがい、とっ、とらないで、おっ、おねがい・・・」

 少女の願いも空しく、ジャンが右側の乳房の根元に、真っ赤に燃える鉄の爪を食い込ませて挟んだ。その瞬間、煙が上がり、マギーが、絞り出すように絶叫した。

「ぎゅぎ、ぐぎゃ~~~~っっっ、あああっ~~~~あぢっ、やめ・・、やめっ・・・」

 続いて左側の乳房にも鉄の爪を食い込ませて挟んだ。

 マギーは肛門に棒を突き刺されたまま、足をばたばたとさせたり、腰を上下に動かしたりして絶叫している。鉄の爪で挟まれた乳房が、器具と一緒に揺れている。

 ロバートがボーリングの玉を少し小さくしたようなおもりを持ってきた。かなり重そうだ。上の部分にはフックが付いている。右にロバート、左にジャンが、それそれ、そのおもりをマギーの乳房にがっちりと食い込んでいるスペインの蜘蛛の元の部分に取り付けて、同時に手を離した。

「ぐっ、ぎゃ~~~~~あああっ、とれちゃっ・うっ、うっ、ぎゃ~~~うううっ」

 足と腰は自由になるので、暴れれば暴れるほど乳房が裂けていく。それを見ながらケインが、まだマギーの肛門に刺さったままの棒を、マギーの尻の部分に足を掛けて、乱暴に引き抜いた。

「ぎゅ、ぎゃ、ぎゃ、ぎゃ~~~~~~~~、やめて~~~~~~~~」

 いきなり別の部分に激痛を感じたのか、目を一杯に開いて、絶叫する。そして、失神した。が、すぐに覚醒させられた。

「あまり暴れると、おっぱいが取れちゃいますよ。でも、そのうち千切れますから、早くしたかったら、それでもいいけどね」

 意地悪く言い、ケインがまた、真っ赤に焼けた鉄の棒を持ってきた。マギーは叫び続けている。そして、再度、それをマギーの肛門へ突き刺した。じゅっという感じで煙が上がる。

「ががが、ぎっ、ぎゅあ~~~~~~~~っ、ぎぁあ~~~~~あああっ」

 この世のものとは思えない、女の絶叫が響き渡った。ケインが棒を突き入れる度に、スペインの蜘蛛の先につけられたおもりが揺れ、乳房にがっちりと食い込んだ鉄の爪が、マギーの乳房を引き裂いていく。そこから出る血が床に落ち、床に赤い血だまりを作っていく。

「ぎゃ~~~ああああっ、とれっ、とれっ・・、あぢっ、あぢっ~~~」

 マギーは絶叫を続けるが、ケインはそれには構わずわざと揺するようにマギーの肛門へ棒を突き刺している。乳房の先のおもりはだんだんと下へ降りてきた。客たちの興奮もレッドゾーンまで来ているのか、異様な雰囲気だ。今岡も例えようのない興奮状態に達していた。

 マギーがまた気を失った。すぐに意識を取り戻されると、また絶叫しだした。顔中涙と鼻水でべとべとになり、ものすごい形相で叫んでいる。肛門の棒はすでに三十センチほど突き刺されている。

 ケインが手を止めて、マギーの脇へと回った。鉄の爪は乳房を引き裂き、血がおもりを伝って床へぽとぽとと落ちている。

「もう少しですかね」

 ノンシャランな感じで言って、おもりを蹴飛ばした。

「ぎゅえぇええええ~~~、やめっ、やめっ・・・、ちぎ・・れっ・・る・・・・」

 もうだいぶおもりが下がってきている。ケインがジャンに向かって何か合図をした。ジャンがマギーの肛門に突き刺さっている棒をつかんだ。そして、軽々と棒を上へと持ち上げた。マギーは首と両手首を一メートル程の台の上に拘束されているので、足はだらんと下へ向いたまま、胴体だけが反るように上へと引き上げられている。

「いっ、いっや~~~~~~~、ぎゅぎゃあああああぁぁぁぁぁ」

 マギーが狂ったように悲鳴をあげる。肛門に焼けた棒を刺されて、その棒で上に持ち上げられている。そして、もう少しで裂け、引き千切れそうな乳房にはおもりをつけられたスペインの蜘蛛ががっちりと食い込んでいる。

 ケインが再びジャンに合図を送った。ジャンが持ち上げた棒を叩き付けるように下へ向けて手を離した。

「ぎゅあああああ~~~~っ、ぎゃあああああっ、いっ、やああああ~~~ああ」

 床に叩き付けられるようにしてマギーの下半身が落とされた。それと同時に、おもりが二つ「どん、どん」と床に叩き付けられた。マギーの乳房が千切れ、夥しく血が流れ出た。その瞬間、客席からはどよめきがもれ、しばらくして、拍手が巻き起こった。マギーはまた失神していた。

 すぐにマスクが付けられ意識を取り戻させたが、マギーは気がおかしくなったのか意味不明なことを叫び続けている。ジャンとロバートが拘束されているマギーの顔を客に見えるように正面に移動した。目は完全に生気を失っている。最初に見たときのかわいらしさの面影は何処にもない。

 ケインがマギーの額にベルトを当てて、それを、首を固定している板に通して顔を上げておくように固定した。

「まだやるのか・・・」

 今岡は心の中でつぶやいた。

 そして、額のベルトのところに、糸が何本か出ている小さい板を、糸の先が右目の部分と左目の部分に合わさるようにして挟んで固定した。糸の先には極小のフックみたいなのが付いている。

 ケインはそれを器用な手つきでマギーのまぶたに取り付けていって、糸を引っ張るようにして、額に固定されている板に、マギーのまぶたを引き上げるように固定していった。マギーはこれで強制的にまばたきができなくなってしまった。

 今岡はCIAなどが、秘密工作員を訓練する時に、どんな残虐なことがあっても耐えられるように、残酷なフィルムを見せ続ける訓練があり、その時に、訓練員に対して強制的にまばたきをできないようにする器具を取り付けると、何かの本で読んだのを思い出した。マギーに取り付けた器具も、たぶんそれと同じようなものなのだろう。

 ケインが手に持っている小さな箱から、長さ五センチほどの一本の針を出して客席に向かってみせた。それをマギーの固定された顔の前へ持っていき、マギーの反応を伺うように、ゆっくりと廻してみせた。大きく見開かれたままの黒い大きな瞳に、わずかながらに恐怖の色が映り、うっ、うっ、とうめき声をあげている。そしてケインがおもむろに、マギーの左の黒目の部分へ針を突き刺した。

「うぎゃあああっ、あああ・・・・・」

 マギーが悲鳴をあげる。黒目に突き刺さった針が、黒目と一緒に動いている。

「やっ、やっ、やめ・・・」

 マギーが懇願するように小さく訴えかけるが、ケインはそ知らぬ顔で、今度は右目に針を突き刺した。

「うっ、ぎゃあああ~~~~あっ、あっ、あっ・・・」

 絶望と恐怖が入り交じった声でマギーが叫ぶ。

 ケインは次々にマギーの瞳に針を刺し続けた。途中からマギーの叫び声もだんだん弱くなってきて、今は小さいうめき声しか聞こえない。

 ケインの手が止まった時、マギーの瞳は銀色の針で塞がり、そして血の涙が流れ、人の顔とは思えない、異様な顔つきになっていた。

 

               六

 

「ちょっとトイレへ行ってくる」

 別にトイレに行きたかったわけではないが、ラルフにそう言って、今岡が席を離れた。

 洗面所で、今岡は高まった興奮を冷ますように冷たい水で顔を洗った。最初のビクトリアのときでもすごいと思ったのに、今のマギーに対する拷問は自分が想像していたことの遥か上を行くものだった。あそこまでやらなくても、という思いもある。こんなに壮絶なものだとは思わなかった。絶叫するマギーの声が、耳にまだ残っている。あの後マギーはどうなったのだろうか。今岡の頭の中に、血の涙を流し、銀色の針で瞳を埋め尽くされたマギーの顔が過った。あの後、首と両手首の拘束を解かれ、ロバートに抱えられて奥へと連れていかれた。肛門には鉄の棒が刺さったままだった。スペインの蜘蛛によって引きちぎられた乳房も器具ごと片付けられた。こんなことをラルフに聞いても、“そんなことは知る必要がない”などと言われるのだろうが・・・。

 しかし、なんでこんなことを考えているのだろう。ビクトリアの鞭打ちが終わったときは、ここの女たちは自分の欲求を解消するための材料だ、などと思っていたのに。あまりにも壮絶だったマギーへの拷問が、今岡のわずかばかりに残っていた人としての良心を刺激したのだろうか。今岡はもう一度、冷たい水を顔にさらした。

 

「お楽しみになられていますか? お客さまは初めてのようですが」

 突然、今岡の背後から女の声がした

 今岡は振り返って声のした方を見た。黒のワンピースを着て、豊かなブロンドをたずさえた女が、腕を組み、笑みを浮かべながらこっちを見ている。今岡は直感的にローザだと感じた。ビクトリアを鞭で打っていたときは仮面を付けていて顔つきは分からないようにしていたが、間違いない。

「ミス・ローザ、ですね?」

 今岡が尋ねた。

 女はまだ笑みを浮かべながら今岡を見ている。美しさの中に愛くるしさがあるその笑顔は、全ての男を虜にしてしまいそうな雰囲気を持っている。目を見ているだけで、引き込まれてしまいそうだ。

「ええ、マスター・ローザこと、ローザ・ウィリアムスです。お合いできて光栄です」

 と言って、手を差し出した。

 今岡も手を差し出した。声の感じもステージの上とは大分違う。とても人に拷問を与えているような女には見えない。

「は、はじめまして、今岡、今岡光太郎です」

 彼女のペースに引き込まれているのか、それとも彼女の美しさのためなのか、今岡が吃りぎみに言った。

「ショーはいかがですか、楽しまれていますか?」

 再度、ローザが聞いてきた。

「ああ、ええ、とても・・・」

 戸惑いながら今岡が言った。

「それはよかった。お客さまに楽しんでいただけると、私たちもやりがいがあります」

 ローザが嬉しそうに笑みを浮かべる。

「ところで・・・、さっきのマギーはどうなりました?」

 思わず口に出てしまった。すぐに聞くべきではなかったと後悔したが、後の祭りだ。だがローザはそれには答えず、

「ミスター・イマオカはここへは初めてのようですね」

 と相変わらずの笑顔で言った。

「えっ、ええ、友人のラルフ・クルーガーに誘われて初めて来たのですが、本当にすごいショーですね。圧倒されっぱなしです」

 少しほっとした感じで今岡が答えた。

「そうです。ここでは全てが本物、若い女たちを連れてきて本当に拷問する・・・。ここへ連れて来られた女たちで、五体満足にここから出られた女は今までに一人もいません。そのぐらい徹底的に責め、拷問を加える・・・。そして、それをお客さまにお見せして、お客さまはそれを見て楽しまれ、満足される・・・」

 今岡の表情を伺うようにして、ローザが続けた。

「ミスター・イマオカ、次のショーは最初に鞭で打たれていたビクトリアに、私が更なる拷問を与えるのですけど、どんな拷問をしたらいいと思いますか?」

「そ、そんなこと急に言われても・・・」

「そうねぇ、たとえば焼ごてを使って焼いてあげたり、針を刺したり、猫の爪とかを使って全身切り刻んでもいいかなぁ。指の骨を一本ずつ折ってあげたり、熱した油をかけたり、いろんなところを火で焙ってみたり、水責めはあまり面白くないかな。あと、全身引き延ばしとか。それかマギーとは違う方法でおっぱいを千切り取ってもいいかもね。あの娘、おっぱい大きいから楽しめるんじゃない? あっ、その前に、おっぱいを万力とか使って締め上げて楽しまないとね。あとは、性器拷問、徹底的に性器を破壊するとか・・・。何かリクエストありませんか?」

「・・・・・」

 明るい口調で聞いてくるローザに今岡は何も答えられないでいる。

「ミスター・イマオカ・・・」

 ローザの声の調子が変わった。

「ここは普段の生活から解放され、このような趣味をお持ちの方たちが楽しまれたり、欲求を解放するところです。男性のお客様の中には、このショーを見て射精される方もいますし、女性のお客さまの中にはエクスタシーを迎える方もいます。先ほどミスター・イマオカは、マギーはどうなったかと私に聞かれましたが、それはあなたにとっては、どうでもいいことです。ここでは人としての良心は必要ありません。そのようなものは邪魔になるだけですので。

 ミスター・イマオカ、ここで楽しむためには、あなたの本能をさらけ出し、欲望を満たすことだけを考えることです」

 今岡は、何か洗脳されていくような不思議な感覚に襲われてきていた。

「ミスター・イマオカ・・・」

 言いながらローザがそれまでとは雰囲気を変え、今岡のところに歩み寄ってきた。そして、今岡の肩に手を回し、耳に息がかかるほど口を近付けた。香水とローザの体臭が混じりあい、独特のいい香りがする。

「ねぇ、このあとビクトリアをどうして欲しい?」

 ローザが甘えるような、妖しい感じで今岡の耳元で囁く。右手は今岡の男の部分をズボンの上からゆっくりとさすっている。

「私って、女たちを拷問しているときはいつも濡れてくるの・・・。どうしようもないぐらいに感じる。そして、エクスタシーを迎える。さっきビクトリアを鞭で打っていたときもそうだったわ・・・」

「ああっ・・・。思い出したらまた濡れてきたみたい・・・。ほら・・・」

 と言って、ローザはワンピースの裾をまくり上げ、今岡の手をパンティーの中へと導いた。今岡はローザの女の部分へ指を滑り込ませた。暖かいぬるぬるとした女の蜜で溢れている。ローザも今岡のズボンのベルトを外し、手を滑り込ませてきた。

「ああっ、・・・すごい・・・」

 すでに大きく立ち上がっている今岡のペニスを手のひらで包み込みローザがつぶやいた。

「あなたはどう? 女の子が拷問されているのを見ると感じる?」

「・・・・・」

 今岡はどう答えていいのか分からないぐらいに興奮していた。ローザは今にも爆発しそうなぐらい大きくなった今岡のモノを上下させながら話しはじめた。

「男の人が拷問にかけられる前、とくにペニスへの拷問の時は、例外なく勃起するというわ。女も同じような感じで、拷問される前というのに、あそこが濡れていたり、指を入れると子宮が降りてきている娘もいるわ。そう言えば乳首が立っている娘が多いけど、それは恐怖心が原因かもしれないわね。でも性器が濡れている娘が多いのは事実よ。

 拷問される前というのに、男は勃起して、女は濡れる。不思議だとは思わない?」

 と、問いかけて、ローザが今岡の大きくそそり立ったペニスを出し、口にくわえてきた。爆発寸前だったペニスをローザが巧みな舌使いで刺激してくる。どうしようもないぐらいの快感が頭の先にまで伝わってくる。今岡がもう限界だと感じたとき、それがわかっているかのようにローザはペニスから口を離した。

「気持ちいい?」

 ローザがいたずらっぽく笑っている。

「あ、ああ・・・」

 絶頂寸前で止められ、欲求を放出できなかった今岡が、少し不満そうに答えた。しかし、その今岡の不満そうな顔をよそに、ローザが話を続けた。

「なぜ拷問される前だというのに男は勃起して女は濡れるのか。どうしてだと思う?」

「・・・・・」

「それは拷問を受ける側も性的に興奮しているからよ。今のあなたのように・・・」

 ローザが、出るところを失い、欲求を溜め込んだまま大きくそそり立っている今岡のペニスを、また手でまさぐりはじめた。

「・・・これは人間の本能なの。性的欲求を満たしたいと感じたときとか、それを解き放てると感じたとき、男はペニスを勃起させ、女は子宮でそれを感じとり、濡れてくるもの・・・。いくら頭では否定していても、そういう時、体は自らの意志に関わらず反応してしまう・・・。拷問もそれと同じ。それがどんなに残虐なことでも、快感を求めようとする人間の本能の内の一つなのよ。する方もされる方も」

 相変わらずローザは今岡のモノを掌に包み込み、弄ぶように今岡を刺激してくる。

「ミスター・イマオカ、あなたのモノがこんなに大きくなっているのは、あなたの体が欲求を満たせると感じているところからくる本能よ」

 そう言うと、ローザが今岡を見つめながら首に両手を回し、微笑んだ。そして、ワンピースをまくり上げ、パンティーを脱いで、両手を洗面台につけて足を広げ、今岡へ向けて腰を突き出した。

「きて・・・、あなたのモノで、私を鎮めて・・・、あなただけ満足するんじゃ、不公平でしょ?」

 ローザが発散すフェロモンが、今岡の男としての欲望をかき立てた。今岡は本能の赴くまま、ローザの女の部分をかき分け、そして自らのモノを滑り込ませた。

「ああっ・・・、いっ、いいっ・・・。そう、あなたの本能のままに来て・・・」

 ローザが甘い声をあげる。ローザを突き上げる度に体中に言い様のない快感が突き抜ける。

「ううっ、そう、そっ、ああっ、良心なんか捨てて・・・。あなたの本能をさらけ出し、欲望を満たすことだけを考えて・・・。欲望よ、欲望・・・。あっ、あなたはここで、あなたが持つ本能を解き放てばいいの・・・。ね、ねぇ、ビクトリアにどんな拷問をすれば・・いい・・・?」

 ローザが、身悶えながら今岡に聞いてくる。

「なんでもいい。泣き、叫び、悲鳴をあげさせてやれ。ビクトリアが持つ本能を全て奪い取り、見ているだけで射精するような拷問を見せてくれ」

 今までとは違う感じで、今岡がローザに命令するように言った。

「はぁぁっ、そ、それでいいのよ。ああ・・、ね、ねぇ、私の中でイって、あなたの本能のすべてを私の中で出して・・・」

 駆け巡る快感とともに、今岡はローザの中で果てた。

 

「いかがでしたか? 本能をさらけ出した気分は。この後もごゆっくりお楽しみ下さい。本能のままに・・・」

 ニコニコと笑いながらそう言い残してローザが化粧室から出ていった。

 今岡はふと我に返った。まるで催眠術にでもかかっていたような感じだった。そろそろ次のショーが始まると思った今岡は、急いで席に戻った。

 

               七

 

「どうした?遅かったな」

 ラルフが心配そうに聞いてきた。

「すまん。ちょっとな」

「ちょっとって、どうした?」

「いや、ほんとにすまん」

 ラルフが両手を広げて、わからないという仕草をした。

 

 ローザが出てきた。仮面を付けている。続いてビクトリアがジャンとロバートに連れられて入ってきた。血は洗い流されているが、鞭打ちによって出来た傷跡がところどころに目立つ。ビクトリアはすでに半狂乱状態だ。

 ローザがビクトリアに向かって、例によって持っていた紙を読み上げた。

「ビクトリア・スウェイジ、お前は鞭打ち百回を完了できなかったので、その罰として、更なる拷問により償わせる」

「お願いです。何でもしますから。もう拷問しないで下さい」

 ビクトリアが必死にローザに向かって懇願する。

「ばっし~~~~~ん」

 ローザが持っていた鞭で床を思いっきり叩き付けた。

「もう一度、大事なところを打ってあげましょうか? こんどはイバラ鞭で」

 そう言って、ローザがニヤっと笑った。

 ビクトリアの顔が蒼白になった。

「ジャン、ロバート、ビクトリアをその椅子に座らせて」

 ローザが指し示したところには鉄製の椅子があった。二人でビクトリアを無理矢理椅子に座らせ、足首は椅子の脚のところに、手はひじ掛けに、そして胸を背もたれに、それぞれ幅広の革のベルトでしっかりと締め付けた。最後に両膝を椅子の脚に合わせ、足が開き気味になるように、チェーンを巻いて固定した。

「火責め椅子か・・・」

 今岡が独り言のように言った。

「何だ、その火責め椅子と言うのは?」

 ラルフが聞いてきた。

「拷問が趣味だというわりには、こんなことも知らないのか?」

 今岡がからかうように言って、ラルフに視線を向けた。

「いや、俺の場合、拷問そのものというよりも、若い女が拷問にかけられているのを見るのが好きだからな。女の悲鳴を聞いているだけで、イケるぐらいだからな。その証拠に拷問にかけられている男には全く興味がない」

 と言ってラルフが笑った。

 今岡が、やれやれという感じで肩をすくめた。

「普通は鉄で出来た椅子で、中は空洞になっている。そこに炭などを置いて炙るのだが、これはちょっと違う感じだな。椅子から電気コードが出ているのを見ると、たぶん電熱でビクトリアの尻や足を焼くのだろう。だから、火責め椅子ならぬ電熱椅子というところか。どちらにせよ、やられた方はたまらないだろうな」

 

 ローザが真っ赤に焼けた焼ごてを手にしてビクトリアに歩み寄ってきた。鉄の椅子に縛り付けられたビクトリアは悲鳴をあげ続け、ローザに向かって泣きながら懇願している。

「うるさい子は舌を抜いちゃおうかなぁ」

 いたずらっぽくローザがビクトリアに向けてそう言ったとたんに悲鳴が止まった。

「あら、いい子ね。でも痛かったら悲鳴をあげてもいいのよ」

 まるで子供をさとすようにローザが言う。ビクトリアの顔は恐怖でおののき、歯をがちがち鳴らし、体は震えている。そんなビクトリアを無視するようにローザが続けた。

「これは、鞭打ちの時、失神した罰ね。このあと、もっともっと酷い拷問してあげるから楽しみにしててね。ちょっと熱いかもしれないけれど、いいのよ、叫んだって、その方がお客さまも喜ばれるから」

 そう言って、持っていた焼ごてをビクトリアの左腿に押し当てた。じゅっという音をたてて煙が上がった。

「ぐっ、ぎゅあああ~~~~、あっ、あっ、あじゅ・いっ、いやっ、やめっ、やめ・・」

 縛り付けられた体全体をがたがたと振るわせ、ビクトリアが絶叫する。

 ローザはまだ焼ごてを押し当てている。

「あっ、あぢ・いっ、やっ、やめ・・て・・・、ぎゅ、うっ。ああああ~~~~」

 ビクトリアが壮絶な悲鳴をあげ続ける。

 そして、今度は反対側の右腿に焼ごてを押し付けた。

「ぎゅあああ~~~~っ、やめっ、やめっ、おねっ、おねっ、が、あああ」

 頭をのけぞらせビクトリアが絶叫する。不自由な体は痙攣している。

 なんともいえない焼ける匂いが今岡のところにも漂ってきた。たぶんビクトリアの皮膚が焼けている匂いだろう。

「ふふふ、熱かった? でも、これからもっと熱い思いをしなければならないから、頑張ってね、最後まで」

 ローザの言ったことを耳にして、ビクトリアは泣きながら震えている。

 

 ローザの指示で、ロバートが長さ六十センチ、幅三センチぐらいの鉄で出来た板を持ってきた。板は二枚重ねになっていて、両端には上部にハンドルが付いたネジが付いている。そしてビクトリアの乳房の高さに合わせた台を椅子の両側に置き、板を固定した。ロバートが二枚の板の間にビクトリアの乳房を通した。何をされるのかを感じたビクトリアは体を振るわせている。

「締め上げるにはちょうどいい大きさのおっぱいねぇ。ふふふ・・・」

 ローザがビクトリアの反応を伺うように言い、左右のハンドルを二回、回した。まだ、少し板の隙間が狭くなった程度で、ビクトリアの胸も真ん中の部分が少し押されたようになっている程度だ。

「まだ大丈夫よねぇ」

 ローザはビクトリアに問いかけるが、ビクトリアは恐怖ためか、ただ不自由な体をガタガタと振るわせている。

 ローザが再度左右のハンドルを二回、回した。

「あっ、いやっ、やめてっ」

 ビクトリアが声をあげる。乳房の真ん中辺りが挟み込まれ、先の方が、板の先から丸みを帯びて出ている。

 また二回ハンドルを回した。

「ううっ、いやっ、やめてっ。おねっ、おね、がっ、い」

 乳房の真ん中あたりが大分押しつぶされてきた。板の先から出た、先の部分が赤く色付いてきた。

「そろそろきつくなってきたかしら。でも、ハンドルが回らなくなるまで締め上げるからね」

 そう言って、ローザは板の先から出ている乳房の先の部分を引っ張り、板を胸元に押しやって、今度は三回ずつ左右のハンドルを回した。

「ぎゃあああっ~~~、いやっ、やめてぇぇぇ~~~~、いっ、いた、い・・・」

 ビクトリアの表情を楽しむように、ローザがまたハンドルを二回ほど回したが、それ以上、ハンドルが回らなくなった。

「がぁぁぁ~~~~~、ぐ、ぎゅっ、ぎゅあああああっ~~~~」

 顔は涙で溢れ、狂ったように絶叫している。

 二枚の鉄の板が、乳房を極限まで挟み込んだ。板の先からは、絞り出されるようにして、乳房の先の部分が丸くなって出ている。最初は赤みを帯びていたその部分が、だんだんと紫色に変わってきた。

「あらあら、あなたの自慢のおっぱいがこんなになっちゃって、痛い?」

 ローザが絞り出された先の部分を手で触りながら、ビクトリアに問いかけたが、ビクトリアは悲鳴をあげ続け、泣いている。

「聞いてないみたいね」

 そう言って、ローザは長さ五センチほどの針を手にして、それを板の先から絞り出されている右の乳房に無造作に突き刺した。

「ぎゅああっ、あああっっ・・・」

 ビクトリアが新たな痛みを感じ、絶叫する。

 ローザは、刺した針を引き抜いた。血が浮き上がった。その針を今度は左の乳房に刺した。そしてまた引き抜き、また突き刺し・・・。ゆっくりと丸く絞り出され、紫色に変色した乳房に何回も針を突き刺していく。ビクトリアは泣き、悲鳴をあげ続ける。針で刺される度に悲鳴が一オクターブ高くなる。刺された痕から、血が流れ出し、乳房をつたって、下へぽたぽたと落ちてゆく。

 今度は、ぽつんと飛び出している左乳首に針を横から貫通させた。

「いっ、やあああ~~~、ぎゅあ~あああ」

 ビクトリアがひときわ高い声で絶叫する。

「そんなに痛い? でも、ここは入念に虐めてあげるわね」

 ローザが意地悪そうに乳首をつまみながらそう言って、反対側の乳首にも針を突き通した。ものすごい悲鳴をあげるビクトリアをよそに、二本目の針を両乳首に貫通させた。そして、三本目、四本目・・・。五本目は、先の部分から中へと突き刺した。両乳首がアクセサリーで飾られたようになった。

「ぎゃああ~~~~あああ、やめて~~~~、やめて~~~~~、おっ、おねが・・」

「せっかく飾ってあげたのに気に入らないようね。でも、もうちょっとがまんしてね。火で焙ってから抜いてあげるから」

「いっ、いやっ、やめっ、おねが・・いっ、いっやあああああ・・ぁぁぁ」

 ローザは、火のついた細長い筒状のものを手に持ち、それでゆっくりとビクトリアの乳首を焙りはじめた。炎がビクトリアの乳首を焼いていく。

「ぎゃあ~~~~~、やっ、やめてぇ~~~~~~~」

 涙をぼろぼろ流しながらビクトリアが懇願する。五本の針に貫かれた乳首が炎に包まれている。今岡は言い様のないエロティシズムを感じた。

「そろそろいいかな。あまり焼いちゃうと次が出来なくなるからね。じゃあ、針を取ってあげるわね。でもこれで終わりじゃないのよ。ペンチで挟みやすくするためだから、勘違いしないでね」

 それを聞いたビクトリアがさらに悲鳴をあげた。ローザが一本一本、乳首に刺さった針を抜いた。そして、すぐにペンチを取り出して、焼かれたばかりの乳首を挟み捻り上げた。

「ぎゃあ~~あああ、やめっ、やめて、ぎゃあ~~~~~あああっ」

 ローザは乳首をペンチで挟んで、限界まで引き伸ばしたり、回転させて捻り上げたりしている。そして、もう片方の手で針を持ち、また乳房に針を刺しはじめた。血が滴り落ち、ビクトリアは狂ったように叫び続ける。

「乳首って、あんなに伸びるものなんだな」

 ラルフが感心したように言った。

「ああ、コック(ペニス)だって、紐を付けて引っ張られれば、想像以上に伸びるらしいぜ。お前もやってもらって、試してみたらどうだ?」

 今岡が意地悪そうに言った。

「遠慮させてもらうよ。まだまだ楽しみたいからな」

「どう言う意味で楽しみたいんだ?」

 今岡のツッコミにラルフが“これだよ”と言う感じで、右手の真ん中の指を一本上げてみせた。

 

「すごく血が出ちゃったね」

 手を休めてローザが言った。針でさされた痕から出血し、板によって絞り出された乳房は血だらけだった。

「血を止めなくちゃね」

 嫌な予感がするのか、ビクトリアは不安そうにしている。

 ローザがまた焼ごてを持ってきた。今度のは、先が四角くて平たいものだ。先の部分が真っ赤に燃えている。

「やっ、や・めてっ・・・もう、いっ、いやっ・・・」

 焼ごてを持っているローザを見て、ビクトリアが涙ながらに哀願している。

 ローザは無気味に微笑んでいる。そしてゆっくりと持っていた焼ごてをビクトリアの絞り出された右胸に押し当てた。

「ぎゅっ、ぎゅあ~~~~~~~~ああああっ、ううう、いやあああああぁぁぁ」

 ローザは押し当てた焼ごてをぐるぐる左右に回転させるように押し当てている。

「今度は左の胸ね」

 ローザがビクトリアの左胸に焼ごてを当てた。じゅっ、と音がして、煙が上がる。今岡の目には煙とともに炎があがったようにも見えた。

「ぎゅうぁあああ~~~~~あああ、あぢっ、やっ、やめっ、て~~~~~」

 大粒の涙を流しながら、ビクトリアがものすごい顔で腹の底から絶叫する。

「血は止まったかな」

 そう言って、ローザが焼け爛れた部分を指で突ついた。ビクトリアはうめき声をあげているだけだった。

 

「そろそろこれを取ってあげようか?」

 ローザがビクトリアの胸を挟み込んでいる鉄の板を指して言った。ビクトリアが懇願するような目で、ローザを見上げた。

「でもその前に、もうちょっと熱い思いをしてもらおうかな」

 なんともいえない無気味な笑みを浮かべて、ローザがロバートに向かって目で合図を送った。ビクトリアが瞳を潤ませ、ローザを見上げている。

「とりあえず、最初は五十度にしてくれる?」

 ロバートがスイッチを入れ、温度を五十度に合わせた

「どう? 暖かくなってきたでしょ。あなたが座っている椅子は二百度まで温度を上げられるのよ。これからゆっくりと、あなたのお尻と腿を焼いてあげるからね」

 ビクトリアは、だんだんとお尻が熱くなってくるのを感じてきていた。

「あっ、あつい・・・」

 ビクトリアの声がした。

「この程度の熱さなら大丈夫よね」

 ビクトリアの表情を伺いながら再度問いかけるように、

「あなたの胸を挟んでいる板を外してあげようか?」

「・・・・・」

 ローザが何か企んでいると思っているのか、ビクトリアから言葉が出ない。

「そんなに不安な顔をしないで。ただ、この板を取ってあげようかと聞いているだけだから」

「お、お願い・・・します・・・」

 ビクトリアが蚊の鳴くような小さな声で答えた。椅子が大分、熱くなってきたのか、不自由な足と腰を動かし続けている。でも、まだ耐えられる熱さのようだ。

「わかった、取ってあげるね。でも一つだけ問題があるのだけど、その板に付いているネジは、一度閉めちゃうと、もう元には戻らないのよ。鉄板をここで切るなんて出来ないし、それだけ締め付けられていれば、おっぱいを板から抜くことなんて出来ないでしょ? だから、その板を取る方法は一つしかないのだけど、・・・」

 ローザがわざと困った顔をして、ビクトリアの表情を伺う。すでに察しているのか、ビクトリアは恐怖で引きつった顔をしている。

「それで、あなたにはちょっと可哀想だけど、あなたのおっぱいを根元で切り取って、板を取るしか方法がないのだけど・・・。ここにナイフと鋸があるけど、どっちで切り取ってほしい? 鋸の方がちょっと痛いかもね」

「いっ、いや~~^、とっ、とらないでっ。おっ、おねがい~~~、あああ」

 ビクトリアが涙をぼろぼろ流し、必死な形相で哀願する。

「どっちがいい?」

 ビクトリアの願いなど無視するように、ローザが再度問いかける。

「おっ、おねがい・・・、とっ、とらないで・・・・、いっ、いや~~~」

「しかたがないわね。お客さまに決めてもらいましょうか」

 と言って、ローザが客席の方を向き、

「ナイフがいいと思う方は、拍手をお願いします」

「・・・・・」

 誰も手を叩かない。

「それでは、鋸がいいと思う方、拍手をお願いします」

 一斉に拍手が鳴り渡った。口笛を吹いたり、歯を見せ、笑いながら拍手している者もいる。その様子を見て、ビクトリアはひときわ高い声で泣き叫んだ。

「それでは、お客さまのご要望で、鋸でビクトリアのおっぱいを切り取ることにしました」

 ローザがわざと説明するように言い、ビクトリアの顔を見た。ビクトリアは泣き叫び、止めるように哀願している。しかし、客席からは再度拍手が鳴り響いた。

 

 ローザが鋸を手に持ち、ロバートに温度を百度にあげるように命じた。鋸を見た瞬間、ビクトリアが耳を突き刺すような悲鳴をあげた。まだ鳴きながら止めてくれるよう、懇願している。

 そんなビクトリアの表情を見ていて、今岡は言い様もなく興奮してきた。これもローザが言っていた人間の本能というものなのだろうか。鳴き、叫び、肉体を痛めつけられ、その恐怖にさらされ、そして、これからバストを切り取るという、女として耐えられないであろう仕打ちを目の前にしても、ビクトリアの体は、性的な反応をしているのだろうか。

「あっ、あつい・・・、おねがい、やめて・・・、おねがい・・・」

 椅子がさらに熱を帯びてきたのか、ビクトリアの表情が徐々に変化してきた。ローザが手に鋸を持ったまま、ビクトリアの様子をうかがっている。

「あ、熱い、熱い、あ・・つっ、やめて、あ、あ、あ・・つ・・・っ」

 つぶやくような声がだんだんと悲鳴に変わってきた。拘束された不自由な体を激しく揺すりはじめた。

「ぎゅあ~~~~あああ、あぢっいっ、やっ、やめて~~~~、あぎゅううう」

 熱を帯びた椅子が、縛り付けられたビクトリアの腿、尻を焼いていく。ローザが持っていた鋸をビクトリアの胸元に当てた。そして、鋸を引きはじめた。

「うぎゃあ~~~~、やっ、やめ・・、あっ、あでゅい~、いやああぁぁぁ・・・」

 胸元から血が流れ出し、その血が高温に熱せられた椅子に落ちて音をたてて煙とともに蒸発してゆく。百度にも熱せられた椅子に、尻と腿を焼かれながら乳房を鋸で切り取られていく。ビクトリアは狂ったように頭を振り、泣き叫ぶ。

「やっと半分切れたけど、あなたのおっぱい、大きいから切るのが大変だわ」

 ローザが汗を拭ってそう言い、また鋸を引きはじめた。ビクトリアは泣き叫び続けていて、ローザの言葉など耳に入っていないようだ。そして左側の乳房が切り取られた。

「ロバート、二百度にして」

 ロバートが温度を二百度に合わせた。

「いっ、いっ、いっ、いや~~~~~っ、あでゅっ、いっ、いやあ~~~あああ」

 ローザが右側の乳房に鋸をあて、引きはじめた。高温に熱せられた椅子と、乳房を切り落とされる痛みに、ビクトリアが狂わんばかりの悲鳴をあげ続ける。

 椅子から煙が上がりはじめた。乳房から流れ落ちる血が、あっという間に蒸発していく。

 女の泣き叫ぶ声、人肉が焼かれ、それに血が混じりあって、漂ってくる異様な匂い。それを、グラスを片手にリラックスして楽しんでいる観客。まさに現代の狂気の世界だと今岡は思った。古代ローマでは、人間を猛獣と戦わせて人が猛獣に引き裂かれるのを楽しんだという。中世では魔女狩りという名の下、多くの、主に女たちが拷問にかけられ、その命を失った。公開処刑が行われると、多くの人々が集まり、祭りのように楽しんだという。このような話は枚挙に暇がない。また、今も残されている数々の拷問用の器具も、人が人を痛めつけるために人が作ったものだ。

 今岡は、ローザが言っていた“本能”という言葉を思い出していた。残虐に人を痛めつけたり、殺したりすることが、あるいはそうしたいと思うことは、人間の本能の一部なのかもしれない。子供が他の子供を苛めたりするのも、その本能から来るものなのか・・・。

 

 夥しい血とともに、もう片方の乳房も切り取られた。ビクトリアは失神していた。ローザの指示でロバートが電熱椅子のスイッチを切って、例のマスクを充てがい、ビクトリアの意識を取り戻させた。そして、ホースを持ってきて椅子に水をかけた。椅子から水が蒸発する音とともに、一瞬ビクトリアが見えなくなるほどに水蒸気が立ち上がった。

 そして、ジャンとロバートが切り取られた乳房が挟まったままの鉄板を両脇の台から外して、ビクトリアに見せた。

「うぎゃああああ~~~~、いっ、いやっ。いっやぁぁあああ~~~」

 切り取られた乳房を見てビクトリアが叫んで、また失神した。

 

「ジャン、ロバート、ビクトリアを椅子から下ろしてくれる」

 マスクをビクトリアに充てていた二人にローザが命じた。ビクトリアが意識を取り戻したのを確認して、二人はビクトリアを拘束していた革のベルトやチェーンを取り外した。そしてビクトリアを椅子から下ろそうとしたが、ビクトリアは動けなかった。どうやら熱せられていた椅子に、尻と腿の皮膚がくっついているようだ

 ローザが二人に頷いた。ジャンが椅子を動かないように押さえつけ、ロバートがビクトリアの脇に手を回し、無理矢理椅子から引き剥がした。

「うぎゃ~~~~~~~~~~あああ」

 凄まじい悲鳴が響いた。ビクトリアはうつぶせにして床に置かれた。尻から腿にかけて、皮膚がとれた部分は、ぐちゅぐちゅした感じでピンク色に焼け爛れている。その周りは、だいぶ熱が回ったのか、白っぽく膨らんだような感じになっている。出血はそれほどしていない。椅子にはビクトリアの尻と腿から剥がれ落ちた皮膚がこびり付いている。

「皮膚が剥がれちゃったわね。痛い? でもまだまだ終わらないからね。まだまだ悲鳴をあげてもらうわよ」

 皮膚が剥がれた部分を足でツツキながらローザが言った。うつ伏せになっているビクトリアが、うっ、うっ、うっ、と唸った。

 ジャンとロバートがローザの指示で、床でうつぶせになっているビクトリアを仰向けにした。腿をだいぶ焼かれ、ビクトリアは思うように足を動かせないようだ。ジャンとロバートにおむつを替えるように足を広げて持たれても、悲鳴をあげるだけで、抵抗らしい抵抗が出来ない。

「今度は毛を焼いてあげるわね。まずは下の毛から」

 と言ってローザが、二人の男によって足を広げられて露出している、ビクトリアの女の部分を覆うようにして生えている陰毛に、オイルをたらして火をつけた。あっという間にビクトリアの女の部分は炎に包まれた。

「ぎゅあ~~~、あっ、あっ、あっ、ああああ、いっ、やっあ~~~~~~」

 毛を焼くといっても、これでは性器を焼いているのと変わりがない。

 ローザが再度オイルをたらした。火が再度燃え上がり、ビクトリアの性器を焼いていく。

「いやっ、あっ、あっ、つっい、やめて~~~~~~~~、いっ、いや~~~~」

 ビクトリアが何処にこんなに力が残っていたのかというほどに絶叫する。

 やっと火が消えた。

「中まで焼けたかな」

 ローザが酷く焼け爛れたビクトリアの性器を指でさするように触ったあと、広げて中をみた。

「中はもうちょっとかな」

 と言って、奥から真っ赤に燃えた鉄の棒を持ってきた。

「仕上げね」

 ローザがそれを膣へねじ込んだ。その瞬間。ビクトリアの目が大きく開いた。

「ぎゃあああああああ、ああああ~~~~~」

 ものすごい絶叫。ローザは棒を出し入れするように動かしている。ビクトリアは涙をぼろぼろ流し絶叫し続ける。ローザが棒を抜いた。ビクトリアの性器は見るも無惨に焼け爛れている。もはや女の部分とはいえないほど、醜くなっていた。

 ローザが今度はビクトリアの頭の上に立った。そしてビクトリアの顔と頭にオイルをまんべんなくたらした。まだ泣き続けているビクトリアが“まさか”という顔をした。

「毛を焼いてあげるって言ったでしょ。下の次は上よ。どうせだから顔も一緒に焼いてあげるわね」

「あっ、あっ、あっ、いっ、いやっ・・・」

 ローザはマッチに火をつけて、ビクトリアの顔の上に落とした。あっという間に火が燃え広がった。悲鳴をあげながら、両手を頭や顔に押しあててビクトリアが懸命に火から逃れようとしている。その手にも火が燃え移っている。

 一分を過ぎた頃、ローザがビクトリアの顔に向かってホースで水をかけ、火を消した。ビクトリアは体を振るわせ、小さくうめき声をあげている。美しかったブロンドはほとんど燃え尽き、顔は焼け爛れ、ついさっきまで存在していた美しさは微塵もなくなっていた。

 

 ローザが一礼して、ステージから出ていこうとした時、今岡と目が合った。笑みを浮かべながら仮面の下で片目をつぶった。

「またエクスタシーを迎えたかい?」

 今岡は心の中で、そうローザに問いかけた。

 

               八

 

「凄まじかったな。あの焼けるような臭いは勘弁して欲しかったけど」

 ラルフが感心したように言った。

「ああ、あそこまで出来るローザという女には感心したよ。ローザはいつもこのショーに出ているのか?」

「俺は今までに三回、ここへ来ているけど、ローザはいつもいる。あの、女ならでわの、いやらしい語りかけ、残酷さ、それに仮面を付けていてわからないが、けっこうな美人じゃないかなって思わせる感じがなかなかいい」

 さっき、化粧室でローザと一発ヤッたなんて言ったら、ラルフはなんて言うのだろうか。今岡は自然と顔がほころんだ。

「何考えているんだ。一人でニヤニヤして」

「あっ、いや、なんでもない。ところでお前、人間の本能ってなんだと思う」

「俺はいつも本能のままに動いている。仕事も女も遊びもな。もともと難しく考えることは苦手だし、考えても分からないしな。それがどうした」

 いかにもラルフらしい考え方だ。聞く方が野暮だった。

「いや、すまん。人間の本能について、ちょっと考えていただけだ。気にしないでくれ」

「さっきからちょっと変だぞ、お前。大丈夫か? ハードなショーを見てちょっと頭をやられたか?」

 心配そうにラルフが今岡の顔を覗き込んだ。

「そんなことはない。次はどんなショーを見られるのか、わくわくしているぐらいだ。大丈夫だよ。そんなに気にしてくれなくても」

「だったらいいんだが」

 いま、目の前で、もはや女とは言いがたい姿にされたビクトリアがロバートに引きずるようにして連れていかれた。切り取られ、二枚の板に挟まれたままの乳房も、そのままジャンが持っていった。

「あの切り取った乳房なんかどうやって処分しているんだろうな」

「よく分からないけど、女を連れてきた“業者”が、ここで使い終わった女をまた引き取りに来るらしい。その時に一緒に渡すんじゃないかな」

 ラルフがこともなげに言った。今岡は可笑しくなった。普通に考えれば異常な会話だが、ここでは普通に聞こえる。いよいよ俺も毒されてきたのか。それとも、ローザの言う俺の本能がそうさせているのか。

「その“業者”というのも大変な商売だな。アフターサービスまでしなければならないなんて」

「どんな商売でも大変だよ。たとえ、この“業界”でもな」

 そう言ってラルフが笑った。

「そういえば、マギーもビクトリアもむちゃくちゃに拷問されたが、死んではいないようだったが・・・」

「そうだ。女に対して限界近くまで拷問をするが、絶対に殺さない。ここは殺人ショーをやっているわけじゃないからな。女たちを徹底的に拷問かけるが、絶対に致命傷はあたえない。治療さえすれば、この後も生きていくことが出来るというところで止める。なぜだか知らないがいつもそうだ。だが、あそこまでやっておいて、生かしておく方がよほど残酷なような気もするがな。しかし、ここは地下で行われているパーティーだ、どんな残虐なことが行われていようと、決して表には出ない。そして、女たちがその後どうなるのかは、おれたちの知るところではない。ここは闇の世界なんだ。」

「闇の世界か・・・」

 ラルフの言葉を聞いて、今岡は、今から十二年ほど前に香港で聞いた話が脳裏に思い浮かんだ。

 

 今岡は今から十四年前に初めての海外勤務として香港へ赴任した。まだ結婚前で、当時二十七歳だった。初めての海外勤務に胸を躍らせていた。

 順調に仕事をこなし、香港での生活にも慣れたある日、今岡は取引先の担当者でもあり、今岡の香港での一番の友人でもあるフランク・ライからの誘いで、夕食をともにした。そして、そのあと二人で、バーで飲んでいた時だった。

「コウタロウ、面白い話をしようか」

 フランクが様子を変えて、少し重々しい感じで言った。そんなフランクを見て今岡は黙って頷き、耳を傾けた。

「今まで、この話は誰にも話したことがなかった。一度は誰かに話したいと思っていたんだが、コウタロウだったら、聞いてくれるかと思ってね。これから俺が話すことは全て本当の事だ。理由は俺が実際に体験したことだからな」

 そう言って、フランクが今岡の表情を伺った。

「何だ、やけにじらすな。そんなに大層な話なのか?」

「いや、すまん。そんなわけじゃないんだが。なかなか言い難くてな。話を続けよう」

 一息入れてフランクが話しはじめた。

「今から一年ほど前のことなんだが、ある知り合いから、ある誘いを受けたんだ。そいつとはもう十年以上もの付き合いで、ビジネスパートナーでもあり友人でもあるという感じだ。そのときもいつものように、馬鹿な話をしながら飲んでいたんだけど、そいつがいきなり、女を買わないかと言ってきたんだ。俺も女は嫌いじゃないし、酔っていた勢いもあってか、その提案に乗ったんだけど、いきなり奴が声を潜めて話しはじめたんだ」

『これはお前だから話すんだ。だから絶対に他には漏らすなよ』

 奴が最初にそう断りを入れてきたんだけど、どうせ他には知られたくないような、いいところを見つけ、もったいぶっているのだろうと思い、軽いノリで“わかった”と返事をしたんだ。そして、奴が話を続けた。

『俺が言っているのはそこらにいるフッカー(売春婦)を買ってくるっていう話じゃない。俺の知り合いに、闇でそういうのを営んでいるのがいるんだが、そこは普通の売春宿じゃない。そこの女を買ったら、後は買った奴がその女を自由に出来る。その女に何をしようが、買った奴の自由だ。普通の売春婦にはさせてもらえない、変態行為もできるし、もし女を殺したいと思ったら殺しても構わない。後片付けは、その組織がやってくれる。多少、金はかかるけどな』

 正直、その話を聞いたときは疑心暗鬼だった。そのようなことが、大昔ならいざ知らず、今の世の中にあるわけがないとね。でも好奇心はあった。もしそれが本当なら、もっと知りたいという。そしてヤツが続けた・・・。

 『例えばこんな話しがあった。ある男がそこで十二歳の女の子を買って、そいつは普通のセックスはもちろん、アナルファックや縛り付けて鞭で打ったりして、さんざん弄んだ。その挙げ句、最後には銃で頭をぶち抜いて殺ししまった。ただ、これは人に聞いた話で、実際に見たわけではないがな。しかし、それと似たようなことが、そこで行われていることは本当の事なんだ』

 こういう話を聞いて、嫌悪感を示すのが普通の人間だ。しかし、俺はまともじゃなかった。恥ずかしい話だが、好奇心と、女を自分の自由にして弄びたいという感情が勝ってしまったのだろう。そして俺はどういうシステムになっているのか奴に聞いてみた。

 『八歳ぐらいの幼女から二十二、三の大人の女までいる。そこへ行けば見て選べる。そして買った時にアメリカドルで一万五千ドルとホテル代千ドルを支払う。もし殺したときは、その時に五千ドルを追加で支払わなければならない。あとは買った奴の自由だ。その組織の経営しているホテルに連れ込んで、何をしても構わない』

 俺は行くことに決めた。もともと自分にサディスティックな傾向があるのは分かっていたし、なによりもそうした闇の世界を覗いてみたいという好奇心も大きかった。まあ、酔って気持ちがでかくなっていたこともあるがな」

 そこまで話してフランクがロックを飲み干し、一息ついた。今岡も内心ドキドキしていた。少なからずこういう話には興味があった。いや、むしろ自分もそこへ行ってみたいとさえ思えた。

 フランクが話を続けた。

「二人でタクシーに乗り、その置き屋に着いた。そこは雑居ビルの一階にあり、外見を見る限り、普通のバーに見えた。二人でそのバーに入り、奴がバーテンダーと何か話をはじめた。客は一人もいなかった。奴が付いてくるように言って、奥へと歩き出した。奥の扉を出て、迷路のような通路を歩いた先に置き屋はあった。入るとすぐに中年の男が出てきて、ここから女を選べと言ってきた。さされた方を見るとガラス越しに女が八人座っていた。もしロリータがいいのなら別の部屋にいると言われたが、俺にはそんな趣味はないから、そこで一人の女を選んだ。あまり美人じゃなかったけど、スタイルは良かった。そして、男が説明をはじめた。プレイ時間は三時間以内、プレイに必要な道具はホテルの部屋のワードローブの横の物置きにある。もし他に何か必要なものがあれば、部屋の電話から内線ボタンを押して電話をすれば、すぐに届ける。プレイが終わった後も、電話する事。そんな程度だったと思う。それから男に小切手で一万六千ドル支払い、案内役の若い男に連れられて、女とホテルへ向かったのだけど、その間、その若い男も買った女も無言のままで、少し恐さを感じたのを覚えている」

 今岡はだんだんと興奮してきた。これからフランクが何を話し、聞かせるのか。フランクがそんな今岡の表情を見ながら続けた。

「ホテルの部屋はかなり広かった。ダブルのベッド、テレビ、ワードローブ、バスルームなど、その辺は普通のホテルと変わりないが、ここにはもう一つ、ベッドがあった。ベッドといっても、拘束具の付いた台という感じだったが。それと、ワードローブの横にもう一つ大きなワードローブがあった。開けてみると中には、鞭、ロープ、手錠、バイブレーター、他には、鋭い鉄の爪が付いた拷問器具みたいなものや、ペンチ、ナイフなど、他にもいろいろあった。それらの道具を見た時、女に何をしてもいいと言われていた事を実感したよ。

 ホテルの部屋に入っても女は黙ったままだった。そこで少し話をしようかといろいろ話しかけたけど、ほとんど答えが返って来なくて、分かったのは彼女が十九歳で、今日初めてここへ来て、初めての客が俺だった、というぐらいだった。

 俺は何をしていいのか分からずに思案に暮れていた。自分で望んで来たのに、いざこういう立場になってみると、いったい何から始めればいいのか分からなかったんだ。そんな俺を甘く見たのか、女がベッドに寝そべってテレビを見始めたんだ。俺は頭に来て、俺は客だぞ、なんでサービスしないんだ。と言ったら、やりたければ早くやってよ、さっさと終わらせて帰りたいし、それにこの台、気味が悪い、変なホテル。例の拘束具の付いた台を指しながらそう言って、仕方がないという感じで女は服を脱ぎ出した。なんか、わざと俺を怒らせているのではないかと思うぐらいに、性格の悪い女だったよ。だけど、女が悪態をつく度に俺は冷静になっていった。そして、これからどうするか考えていた。そして、この女に拷問をしてやろうと考えたんだ。

 女が服を脱ぎ終わって、俺にも早く服を脱ぐように催促して来た。どうやらここのシステムを知らないらしい。本当にセックスが終わったらすぐに帰れると思っているようだった。

 俺は女の鳩尾に正拳を一発入れて眠らせた。ガキの頃から拳法をやっていたから、このぐらいは朝飯前だ。そして、眠らせた女をあの台の上に乗せて、手、足、銅などを拘束した。足は産婦人科の診察台みたいに大きく広げてな。そして、女が起きるまで、一杯飲みながら待つ事にした。二十分程してから、女が起きたのか、ぎゃ~ぎゃ~騒ぎはじめた。俺を見て、すぐに外せとか、店の奴らに言うだの、大騒ぎしていたよ。だから女に言ってやった。これからお前を拷問する。この事は店の奴らも知っているし、おまえに何をしてもいいって言われている。たとえ殺しても。ってな」

 今岡は、話に引きずり込まれていた。こんな話はめったに聞けるものじゃない。特に拷問をすると聞いたからには、この続きに期待が膨らむ。この手のものが好きな今岡にとっては、それからどんな事が行われたのか興味津々だった。一息入れて、フランクが続けた。

「そう言ったら、女の顔が真っ青になって、引きつっていた。わずかながらに体も震えていたよ。とりあえず、俺は鞭を持って女に叩き付けた。最初に一発、胸へ打ちつけたんだけど、それだけでさっきまでの悪態はどうしたのか、涙をぽろぽろ流しながら、ごめんなさい、ごめんなさいって何度も謝って、やめて、やめて、って言っていたよ。でも、もう遅い。俺の方に火がついちまったんだからな。十発程あっちこっちを打ちつけてから、こんどはプッシー(女性器)に一発打ち込んだ。そしたら今まで以上に高い声で悲鳴をあげた。それからはプッシーばかり狙って打った。打つ度に赤く腫れあがってきて、ものすごい悲鳴だった。その後はやりたい放題だった。脇の下に無数の針を打ったり、尿道を責め、拡張したり、体中火で炙ったり、起きた時に剥がれるように、乳房をナイフで上から七分目ぐらいまで切れ込みを入れたり、膣を拡張して、子宮口を外から見えるようにしてボールペンを突っ込んだり、最後にはクリトリス、ビラビラ、乳首をナイフで切り取った。失神すると気付け薬を使って無理矢理覚醒させた。終わったときは、女は血だらけで、虫の息だった」

 今岡は圧倒されていた。フランクがそこまでするなどとは、普段の彼を知る今岡にとっては、とても想像できない。多少気が短いところもあるが、行動や身だしなみにも気を使い、女性にも優しい紳士というイメージだ。

「なんで俺がそんな事をしたかと思っているのだろ?」

 フランクが今岡の考えている事を察して話を続けた。

「俺自身も今になって思う。あの時、なんであんな事が出来たのだろうかと。確かに俺にはそういった趣味があるが、妄想と現実の区別は付いていると思っていた。だがあの時は女を責め、凄まじい悲鳴を聞いているうち、次は何をしてやろう、どうやって悲鳴をあげさせてやろうか、という事しか考えていなかった。そして俺はどうしようもないぐらいに興奮していた。今思えば女とヤッている時以上に興奮していたと思う。これが俺の中の悪魔の仕業なのか、それとも俺の知らない、俺の中の本能がそうさせていたのかは分からない。でも、どんな人間も残酷な一面を持っているという事は長い歴史が証明している。拷問という残酷な行為が、この世に存在するのがそのいい証明だ。

 あの時以降、俺は考えてみたのだが、人に対する残酷な行為は、性的快感を追い求める事と同じ事じゃないかと。この二つは相容れないように見えて、実は表裏一体なのだと。あの時、俺はなぜあそこまで出来たのか、そして性的高まりを感じていたのか、それは、俺の体を勝手に反応させた俺の中のひとつの本能だったとしか思えない」

 

              九

 

 本能か・・・。今になってフランクの言った事を思い出してみると、ローザと同じ事を言っている。今岡もここで拷問される女たちを見て、自分の知らないところで反応する自分の本能を感じて来ている。フランクはこの事を自分に伝えたかったのかどうかは分からない。あの後、何度もフランクとは食事をしたり飲みに行ったりしたが、あの話は、あれ以来一度も話題に上がることはなかった。しかし、人が人に対して残虐な行為をすることと性的快感を求める行為が同じようなものであるという事は、何となく分かるような気がする。だが、ローザはそれだけではなく、残虐な行為を受ける方も性的に興奮していると言うが・・・。

 

「おい、どうした? ぼ~っとして」

 ラルフが今岡の肩をポンポンと軽く叩きながら顔を覗き込んでいる。

「ああ、すまない。ちょっと昔の事を思い出していたんだ」

「そうか、でも考え事は後にしたほうがいいぜ。そろそろ次が始まるからな」

 ラルフがもう一度ポンと今岡の肩を叩いて、ステージに顔を向けた。今岡もステージを見た。マスター・ディーターが革鞭を片手に持ち、ステージに入って来た。そして、客席に向かって恭しく一礼した。

 ディーターが女を連れてくるよう奥へ向かって合図を送った。例によってジャンとロバートが女の脇を抱えるようにして入って来た。女はすでに泣きながら叫びまくっている。そして、ディーターが一枚の紙を取り出して、例の如く女に向かって読みはじめた。

「クリスティアナ・リス、十九歳。ポーランド人。ワルシャワにて捕獲。これよりクリスティアナに対し、性器拷問を行う。クリスティアナの性器を徹底的に破壊する。また、もう一つの女であることを証明する乳房に対しても同様のことを行う。この拷問の目的はクリスティアナの女としての機能を全て破壊することにある」

 ディーターが紙を読み上げた後、クリスティーナが凄まじい悲鳴をあげ、必死に止めるように哀願している。しかし、それとは逆に客席からは、待ってましたとばかりに拍手が巻き起こった。

「よし、これからだな」

 手を叩きながらラルフが今岡に囁いた。

「そんなに人気があるのか?」

「ああ、性器拷問はメインイベントのようなものだからな。人間の持つ性の部分と結びつくのか、性器に対する拷問は人気がある。俺も一番好きだしな。それに、性器に対する、取り分けプッシーに対する拷問道具が多く残されているのも、その辺に関係があるような気もする。まあ、確かに昔は魔女狩りなどで拷問にかけられるのは男よりも女の方が多かったらかもしれないがな。

 でも、プッシーを攻める道具がたくさん残っている本当の理由は、案外、当時、主に拷問を取り仕切っていた神父が、女たちを拷問しながら自分の性欲を解消する為だったとしたら面白いな」

 そう言ってラルフが声を出して笑った。

 今岡もあきれたという感じで、一緒になって笑ってしまった。 

「話は変わるが、この前来た時に見たのは凄かった。膣をむりやり拡張して、そこへ細いナイフを突っ込んで、子宮を切り取り出したからな」

「それは凄まじいな。そこまで徹底的にやるとは」

「切り取られた子宮を見せられた時は、さすがに俺もちょっと動揺したけど、頭の中は、今までに感じたことがないぐらいに興奮状態に陥っていたよ」

 

「まずはお客さまにクリスティアナの体を見ていただきましょう」

 ディーターがそう言ってジャンとロバートに目で合図した。すぐに二人が、嫌がるクリスティアナを押さえつけ、服を脱がせにかかった。ジャンがむしり取るようにブラウスを剥ぎ取り、続いてスカートも引きちぎった。そして、ブラジャーとパンティーも乱暴にもぎ取った。クリスティアナはあっという間に全裸にされた。

 病的なほど真っ白なクリスティアナの肌が震えている。スリムで長い足、大きくて整った乳房、大きな目に高い鼻、そして慎ましやかな唇。ブロンドというよりは銀色に近いセミロングの髪、完璧という言葉が霞んでしまうほどの美しさだ。しかし、この美しい体も、ショーが終わる頃には破壊されつくしている。

「もったいない・・・」

 今岡はクリスティアナの体を見て、思わず口にしてしまった。

「それでは皆様に、まだ美しいままのクリスティアナの体を隅々まで御覧いただきたいと思います。皆様、十分に御覧下さいませ」

 ジャンがクリスティアナの手を後ろに回し手錠をかけた。その後、ロバートがクリスティアナの背後から足を大きく広げさせた格好で持ち上げた。クリスティアナは悲鳴をあげて抵抗するものの、この二人にかかってはどうしようもない。ロバートがクリスティアナを抱きかかえたまま、客席まで来て、客一人ずつにクリスティアナの体を鑑賞させた。

 今岡の前に、ロバートによって抱えられたクリスティアナが来た。目の前に、大きく広げられたクリスティアナの性器がある。今岡は慎ましやかに閉じているピンクの花びらを指で広げてみた。尿道の下、膣口の辺りがわずかに潤み、息をしているかのように伸縮している。その上には、皮に覆われた小さめのクリトリスが少し顔を出している。男を刺激するには十分すぎるほどエロティックな光景だ。今岡は、この美しい性器がこれから行われる拷問によって、見るも無惨に変わり果てると思うと、言葉では表せない何かが、下半身から込み上げてきた。

 クリスティアナが隣の客へと移っていった。離れたところに座っている女の客が、マドラーでクリスティアナの性器をつっついて弄んでいる。まるで女子高生のように、きゃっ、きゃっ、とはしゃぎながら、マドラーを膣の中に入れたり、肛門に入れようとしたりしている。それに触発されたのか、その隣に座っていたもう一人の女もマドラーを持ってクリスティアナの性器を弄びはじめた。すご~い、おもしろ~い、などと言って二人ではしゃいでいる。普段、あまり見ることがないであろう、同性の性器が物珍しいのだろうか。クリスティアナの顔は屈辱に満ちている。今岡はある意味、女が持つ残酷な一面を見たような思いがした。それとも、ローザが言うところの本能とでもいうのか。

「今さらながらだが、ローザといい、あの女達といい、女も残酷になれるものなんだな」

 ラルフも今岡と同じことを思っているのか、クリスティアナの性器を弄んでいる女を見てそうつぶやいた。

 

 客席をひと通り回った後、ロバートがクリスティアナを抱えてステージに戻ってきた。そして、そのままクリスティアナを立たせ、ジャンが三十センチ四方程度、厚さ五センチ程の小さな四角い木製のテーブルを持ってきた。テーブルを支える足の構造からして、高さの調節が出来るようだ。

 ディーターがクリスティアナの乳房を揉み、乳首を摘んで、ニヤッと笑った。クリスティアナは体を振るわせ、恐怖で顔が引きつっている。ロバートが台の足下にあるハンドルを回して、テーブルが乳房の高さより少し下になるよう調節した。そして、ジャンがクリスティアナの乳房をテーブルの上に置いて、体を押さえつけた。まな板の上に置かれたようになった大きな乳房がブルブルと震えている。

 ディーターがテーブルの上に置かれた乳房の位置を整え、再度、乳首をコリコリと弄ぶように摘んだ。小振りのピンク色をした乳首がぴょこんと立っている。クリスティアナの体の震えが大きくなってきた。ディーターが長さ三センチ程の釘を乳首の上に垂直に立てた。クリスティアナの顔が青ざめ、体の震えはますます大きくなっている。

「やめ・・て、やめて・・・、おっ、おねがい・・・」

 震えながら小さな声で訴えかけている。

「ちょっと痛いかもしれないけど、これからやることに比べればたいしたことないでしょう」

 そう言って、ディーターは笑みを浮かべながら、クリスティアナの表情を見ている。そして徐に金槌を取り出し、それを乳首の上に垂直に立てられた釘の頭めがけて打ちつけた。

「ぎゃあ~~~~~~あああ、あああっ」

 静かだったステージに悲鳴が響き渡った。釘が乳首を貫通して、テーブルに打ち込まれていく。乳首が釘の頭の平たい部分で押しつぶされるまで釘は打ち込まれた。そして、もう片方の乳首も同じようにして、釘を打ち込み、乳首はテーブルに固定された。

 クリスティアナは涙をぼろぼろ流し、悲鳴をあげ続けている。二つの乳首は釘を打ち込まれ、テーブルに固定されている。ジャンが押さえつけていたクリスティアナの体を離した。しかし、乳首がテーブルに釘で固定されているため、クリスティアナは自由に動けない。

 ロバートがテーブルの足下に屈みこみ、ゆっくりとハンドルを回しはじめた。釘が乳首を打ち抜き、固定されたテーブルが徐々に下がりはじめた。それに従ってクリスティアナも膝を曲げていく。

「うまく合わさないと、乳首が引き千切れちゃいますよ」

 ディーターが意地悪そうに言う。

 クリスティアナの膝が九十度ぐらいに曲がったところで、テーブルの動きが止まった。後ろ手に手錠をかけられているため、足の力だけで、この状態を維持し続けなければならない。乳首がテーブルに釘で打ち付けられているため、立ち上がることも座ることも出来ない。

 テーブルが止まって一分が過ぎた。クリスティアナは乳首の痛みに耐え、足を振るわせて必死の形相をして、姿勢を保っている。早くして、お願い、などとディーターに哀願しているが、ディーターは笑みを浮かべながらただ見ているだけだ。

「頑張って下さいね。バランスを崩したりしたら、乳首が引き千切れちゃいますからね」

 クリスティアナはとうとう我慢できなくなったのか、膝を伸ばして立ち上がろうとした。しかし、釘を打ち込まれている乳首が引き伸ばされ、千切れそうな痛みに耐えかねたのか、すぐに膝を曲げたままの元の姿勢に戻ってしまった。その時、ディーターがクリスティアナの尻へ鞭を一発打ち込んだ。その反動で姿勢が不安定になり、乳首が思いっきり引っ張られた。

「うぎゃ~~~~~ああああ、やっ、やめてっ、いっ、いたぁい~~~~っ」

 ディーターがもう一発、尻をめがけて鞭を振るった。

「いっ、いや~~~~あああ、おっ、おねがあ~~~~~い、あああ」

 クリスティアナが絶叫する。釘を打ち込んだ時は、あまり出血していなかったが、今の鞭を受けて、クリスティアナが動き、乳首がだいぶ引っ張られたのか、木目のテーブルの上に血が広がってきた。後ろ手に手錠をかけられ、膝を曲げたままの苦しい姿勢で、クリスティアナは泣いて許しを乞うている。

 ディーターがまた鞭を振り下ろした。

「ぎゅっ。ぐわああああ・・・あああ、あ~~~~~あああっ」

 鞭打たれたクリスティアナが動き、乳首が引っ張られる。テーブルの上の血は、さらに広がった。

「もっ、もう・・だ・・め、おっ、おねがいし・・ま・・す」

 苦しそうにクリスティアナが途切れ途切れに哀願する。

「ロバート、テーブルを少しずつ下げてくれ」

 ディーターの指示で、ロバートが足下のハンドルをまたゆっくり回しはじめた。徐々にテーブルが下りだした。そして、クリスティアナの膝が床についた時、またテーブルの動きが止まった。ここで、ジャンとロバートが客席側にクリスティアナがくるようにテーブルごと向きを変えた。客席からは、後ろ手に手錠をかけられ、ひざまずいて立っているクリスティアナの背中が見える。次に、ジャンが白い板を持ってきて、クリスティアナの膝の下に入れ、板から出ているベルトで、クリスティアナの足首とふくらはぎの上の部分を、足が開き気味になるように縛り付けた。そして、白い板の四隅をボルトで床に固定した。クリスティアナはその間もずっと喚きながら泣いている。

 またロバートがテーブルを下げはじめた。膝から下を拘束されているため、クリスティアナの体は腰から曲がっていく。腰が九十度まで曲がった時にはテーブルの上には上半身が乗った状態になった。そこで、クリスティアナの頭の上のところに一本の銀色の柱が置かれ、床に固定された。そのまま、またテーブルは徐々に下がりはじめた。乳首が引っ張られ、クリスティアナの悲鳴が大きくなってくる。そして、テーブルの動きが止まった。頭が床につき、乳首は少し伸びている状態だ。もし、頭を支えている柱がなかったら、上半身が前へ押し出され、乳首が引き千切れているだろう。その上、腰は上に向かって突き出すような格好になり、膝から下は開き気味に拘束されているため、クリスティアナの女の部分は肛門まで客席には全て丸見えになった。

 女の部分は無防備に晒され、少しでも頭を動かして柱の支えがなくなると、上半身が前へ押し出され、その反動で乳首が引き千切れる。後ろ手に手錠をかけられているから手は使えない。何という惨い姿勢だろう、と今岡は思った。

「くれぐれも頭は柱から滑らせないことですね。もし滑ったら乳首が引きちぎれますよ。もし引き千切れていいのでしたら、別に構いませんが」

 ディーターがそう言うと、クリスティアナがひときわ高く悲鳴をあげた。ディーターが鞭を振り下ろした。もろに肛門から女の部分にかけて当たった。

「ぎぃぐあああ~~~、あああ、ぎゃあああ~~~~~あああっ」

 ものすごい悲鳴をあげる。

「わかりましたか?」

 ディーターが再度聞いた。

「は、はい、わかり・・まし・た」

 クリスティアナが弱々しく答えた。

「それでは、まずは肛門の破壊からいきましょうか」

「おっ、おねがい、やめて、やめて・・・ください・・・」

 ディーターの言葉を聞いたクリスティアナがすがるような声で懇願する。しかし、それを無視するようにディーターが続ける。

「僕は他の人みたいに優しくないから覚悟してね」

 優しそうな言葉遣いが、いっそう無気味さを漂わせる。クリスティアナはまだ懇願している。

 ディーターがクリスティアナの肛門を指で揉みこむように触った。それだけでクリスティアナは悲鳴をあげる。

「おっ、おねがいですから・・・、やっ、やめて、くださ・・・いっ」

 クリスティアナは泣きながら懇願する。

「こっちからだと顔の表情が分からないのが残念だな。怯えている表情とか見たいのにな」

 ラルフが少し残念そうに言った。そのラルフ言葉が聞こえたのか、今岡の隣に座っていた男が、接客の女の子を呼んで、耳打ちした。彼女はすぐにディーターのところへ行き、それを伝えた。

「ただ今お客さまより、クリスティアナの顔が見えないとのクレームがありましたので、クリスティアナの顔が見えるように、奥に鏡を置きますので、少々お待ち下さい」

 ロバートがクリスティアナの顔が見えるように、奥に大きな鏡を置いた。頭を必死に柱に押し付けているクリスティアナがよく見える。客席から拍手がした。ラルフが今岡の隣の男に小さく手をあげて礼を言った。

 ディーターが電動ドリルを手にした。ドリルの先には斜めに切れ込みが入っている金属の細い棒がついている。木工作業などで木に穴を空けるときに使う道具そのままだ。動きを確かめるように二、三度スイッチを入れた。その音を聞いてクリスティアナがひときわ大きな悲鳴をあげ、やめて、やめて、と懇願している。

「もともと穴が開いているのにドリルを使う必要はないのでしょうけど、派手なパフォーマンスも必要ですからね」

 客席から拍手が起こった。鏡に映るクリスティアナは、柱に頭を付け、ブルブル震えている。

 ディーターがドリルのスイッチを入れてそれを慎ましやかに窄まっているクリスティアナの肛門に近付けた。

「いっ、いや~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」

 切り裂くような甲高い悲鳴とともに、ディーターはドリルを肛門に押し付けた。ドリルの刃がクリスティアナの肛門へと入っていく。

「ぎゅ、ぎゃ~~~~~~あああ、いっ、いや~~~~~~~~~~~~」

 柱に必死に頭を押さえつけ、クリスティアナが絶叫する。出しては入れ、出しては入れ、とディーターはドリルを何度も出し入れしている。血が肛門から流れ出し、クリスティアナの真っ白な尻にも飛び散っている。

 ディーターがドリルを抜いた。ドリルの刃には肛門の肉片がついている。

「さて、もう二度と閉まらないように、穴を大きくしていきますからね。いつも穴が開いたままになっているようにね。これからは、うんちをする時は大変ですね」

 客席から笑い声がもれた。

「いっ、いやっ、おねがい・・・、やめて、おっ、おねがい・・します」

 クリスティアナは泣きながら哀願する。そんなことは全く意に介さない感じで、ディーターがドリルの先を金属ブラシに付け替えた。スイッチを入れて回転するのを確認すると、それを血だらけの肛門に突き刺すようにして差し込んだ。金属ブラシが、ドリルによって抉られるようにされた肛門を、回転しながらさらに掻き回す。ブラシの為か、さっきよりも血が飛び散る。クリスティアナは狂ったように叫びまくっている。それにはかまわず、ディーターは金属ブラシを出し入れしている。金属のブラシが回転しながら出し入れされ、クリスティアナの肛門の内側をえぐるようにして傷つけてゆく。

 ドリルを抜いた。肛門の周りは血だらけだ。思っていた程、穴は開いていないように見える。ディーターがドリルの先を、さっきの金属ブラシよりもひとまわり大きい金属ブラシに取り替えた。そして、またクリスティアナの肛門へ押し当てた。

「ぎゅうあ~~~~~~あああ、ぎゅぎゃ、ぎゃ~~~~~~あああっ」

 クリスティアナの絶叫はすでに狂っていると言ってもよいぐらい凄まじい。ディーターは回転する金属ブラシを肛門にゆっくりと出し入れしている。金属ブラシが肛門を削りながら穴を広げていく。

 絶叫が響くなか、クリスティアナの肛門は破壊されながら広げられていく。今岡は綺麗に窄まっていた肛門が、血だらけになりながら、徐々に広げられていくのを見ながら、いい知れない興奮が込み上げてきていた。頭で考えているのではなくて、体が勝手に反応している。

 ディーターが肛門からブラシを抜いて、ドリルの先を円すい形の形をしたものに取り替えた。下の部分の直径は五センチほどで、先に行くに従って細くなっている。そして、表面には、金属で出来た刺がびっしりと生えている。

「さて、仕上げです。これで肛門の内側の肉を削ぎ取ったら、穴が開いたままになります」

 クリスティアナはそれを聞いても、うっ、うっ、うっ、と泣いている。顔は床に伏せるようになっていて表情は分からないが、柱で支えられている頭が辛そうだ。

 ディーターがドリルのスイッチを入れて、肛門に入れた。

「うぎゃああああああ~~~~~~~~ああああああああっ」

 物凄い悲鳴があがる。

 肛門の肉を今まで以上に引き千切りながらドリルが回転する。ディーターは大きく穴を開けるように、ドリルを回しながら前後に動かしている。その時、クリスティアナが柱から頭を滑らせた。肩に柱が当たり、そこで止まっている。乳首はまだ千切れていないようだ。肛門にドリルを挿したまま、ディーターがジャンに柱を外すように指示した。すぐに柱が外され、クリスティアナの上半身は、伸びきった二つの乳首で支えられている。ディーターがドリルを肛門から抜いた。乳首が今にも引き千切れそうだ。

「ぎゃ~~~~~あああ、おっ、おねが・・、いっ、いや~~~~~~~~」

 その時、突然クリスティアナの体が、前へ引っ張られるようにして、うつ伏せに倒れた。伸びきった乳首がクリスティアナを支えきれず、引き千切れていた。そして、クリスティアナはそのまま失神していた。ジャンがディーターの指示で、失神しているクリスティアナの腰を立てて、血を布で拭った。肛門の部分に三~四センチほどの穴が開いていた。客席から、また拍手が鳴り響いた。

 

 ジャンとロバートが失神したままのクリスティアナをマギーが乗せられていた台と同じ台に乗せ、足を大きく広げて拘束した。足を上に向けて、おしめを替えるように拘束されている為、ポッカリ穴が開いた血だらけの肛門まで丸見えになっている。肛門と引きちぎれた乳首の跡から、かなり夥しく出血している。ディーターが黄色い粉を乳首が千切れたところと肛門にたっぷりかけたあと、肛門には適当に布を詰め、乳首があった部分には丸いガーゼみたいなものをかぶせて、テープで止めた。

「止血しているのか?」

 今岡がラルフに聞いてみた。

「ああ、止血しておかないと、出血多量で死んだり、ショック死する可能性があるからな。出血が酷い時は、必ず止血する。あの黄色い粉は血を止めるための薬だ。だが、酷い出血はこれだけだ、という時は、あえて止血しない。マギーやビクトリアの時みたいにな」

「ということは、クリスティアナはこれからまだ、かなり血を流すということか」

「まあ、そういうことになるな」

 ラルフがあっさりと答えた。

 ジャンが例のマスクをクリスティアナに当てて意識を取り戻させた。クリスティアナは、意識を取り戻した瞬間、激痛の為かまた絶叫しはじめた。そんなクリスティアナを見ながら、ディーターが直径五~六センチ、長さ五十センチ程の角材を手に持って、ほくそ笑んでいる。

「うっ、うっ、うっ、いっ、いやっ、やっ、やめてっ、やめて・・・」

 ディーターが持っている角材を目にしたクリスティアナが何をされるのか察知したのか、震えるように喚きはじめた。

「さて、次は膣を破壊しましょう。まずはこれを膣に押し込みますね」

 そう言ってディーターは角材をクリスティアナの膣に押しあてた。そして、ねじ込むようにして先の部分を力任せに無理矢理入れた。そして、ロバートに角材を支えさせ、木槌で角材を叩き、押し込みはじめた。

「うぎゃ~~~~~~、あああああ~~~~~~、あああっ、やめっ、やめてっ」

 ものすごい悲鳴が響き渡る。ディーターによって叩き付けられる角材が、少しずつクリスティアナの膣を切り裂いて押し込まれていく。血も少しずつ流れ出てきている。すでに十センチぐらいは押し込まれている。

「いっ、いや~~~~~~、やめっ、やめて~~~~~~~」

 クリスティアナの悲鳴をよそに、ディーターは角材を打ちつけた。そして、二十センチ程押し込んだところで手を止めた。膣からは血が流れ、クリスティアナは狂ったかのように絶叫している。

「痛いですか?」

 ディーターが人事のように言った。

「では、これはどうですか」

 と言って、持っていた針をクリトリスの下から刺して、上へと貫通させた。

「うっ、ぎゃあああ~~~~あああ、いや~~~~~~~~っ」

 クリスティアナが全身を引き攣らせ、断末魔の悲鳴をあげる。

 それには構わず、ディーターはクリトリスにまた新たに針を突き刺した。そして、また一本、また一本と全部で五本の針をクリスティアナのクリトリスに貫通するように刺し込んだ。クリスティアナは狂ったように絶叫し続けている。

 次に、ディーターは五本の針が刺さったままのクリトリスをペンチで挟み込んで捻り上げた。

「うぎゃ~~~~~あああ、ぎゃめて・・、うやめてっ、うっ、ぎゃあああああ」

 言葉にならないほどの絶叫が響き渡る。そして、ディーターは持っていたペンチをジャンに持たせた。狂おしいほどの絶叫が響く中、針が刺さったままのクリトリスを挟んだペンチを、ジャンが力任せに、左右に捻り込むようにしてクリトリスを引き千切ろうとしている。そして、時折、苦痛を長引かせるかのように、引っ張る力を緩めたりしながら・・・。そして、ディーターの合図とともに、ジャンがおもいっきり捻り上げ、クリトリスを引き千切った。

「いっ、やああああ~~~~~~あああ、ぎゅぎゃあああ~~~~~~~あああっ」

 クリトリスが引き千切られた瞬間、クリスティアナはひときわ高く絶叫して、また失神した。ジャンが持っている折れ曲がった針の中程には、小さな肉片が付いていた。

 

 クリスティアナはマスクを当てられ、すぐに覚醒させられ、また悲鳴をあげはじめた。もうずっと悲鳴をあげっぱなしだ。拘束され動かすことが出来ない体が、時折、筋肉を引きつらせながら震えている。

「そろそろこいつを引き抜きましょうか」

 ディーターがクリスティアナの膣に刺さったままの角材に手をかけた。そして、角材を回しながら引き抜きはじめた。

「いっ、いや~~~~あああ、やめっ、ぃや~~~~~~~っああああ」

 クリスティアナの物凄い絶叫が響き渡った。

 回しながら引き抜かれている角材が、クリスティアナの膣の粘膜を再度傷つけ、また膣から新たな血が流れ出してきた。ディーターは弄ぶように角材をゆっくりと抜いていく。相当、力が入っているのか、ディーターの腕の筋肉が躍動している。クリスティアナは腿からふくらはぎの筋肉をピンと引きつらせ、足首の部分を震わせている。そして訳の分からない言葉を絶叫し続けている。赤く染まった角材が、膣から抜けた。クリスティアナの女の部分は血にまみれ、膣がポッカリと口を開けたままになっている。そこから夥しく血が流れ出ている。ディーターはそこにさっきの黄色い粉を入れて、無造作に布を詰め込んだ。

「次は尿道を破壊しましょう。その前に尿を抜いておきましょうね」

 ディーターの話し方はいつも淡々としている。どんな残酷なことでもサラッと言っておしまいだ。しかし、それが拷問を受ける方にとっては、恐怖が何倍にもなって聞こえてくる。

 ディーターがクリスティアナの性器を指で開いて押さえ、カテーテルをに尿道に突っ込んだ。クリスティアナが大げさなほどに悲鳴をあげる。すぐにカテーテルを通って尿が出てきた。

「いかがですか。皆様の前でおしっこする気分は」

 客席から笑い声がもれた。それに引き換えクリスティアナは顔を引き攣らせて、泣きじゃくっている。

 ディーターは尿が出終わったのを確認して、カテーテルを引っこ抜くように乱暴に抜き取った。そして、細いパイプの中を掃除する時に使う、金属ブラシを手に持ち、クリスティアナに見せた。

「これから、これをあなたの尿道に入れて、中を掃除してあげますね」

「いっ、いやっ、やめて、やめてくだ・・さい、おっ、おねがい~~~~~~」

 途中から悲鳴に変わるほどのクリスティアナの哀願を無視して、ディーターは金属ブラシをクリスティアナの尿度に突っ込んだ。

「ぎゃあ~~~~~あああ、うっ、ぎゃあ~~~~~~~~あああっ」

 強烈な痛みに、クリスティアナが絶叫する。ディーターはまるでパイプの中を掃除するように、金属ブラシをクリスティアナの尿道の中で回しながら前後に動かしている。

「これは利くぜ」

 ラルフが思わず口にした。

 ディーターが金属ブラシを尿道から引き抜いた。絶叫しまくっていたクリスティアナは失神していた。ジャンがすぐにマスクを当てた。その間にディーターは奥の焼ごてが入れられている処から、直径二センチほどの、先が真っ赤に焼けた棒を持ってきた。そして、クリスティアナの意識が戻るのを確認すると、それを尿道に突き刺した。じゅっ、と音がして煙が上がった。

「ぐっ、ぎゃあ~~~~~~っ、ぎゃあ~~~~~~~あああぁぁぁっ」

 物凄い悲鳴をあげ、クリスティアナが全身を痙攣させる。ディーターは棒を奥まで突き刺して、手を離した。クリスティアナの尿道に突き刺さった棒が、突き刺さったまま、上下に揺れている。凄まじい光景だ。

 尿道に刺さった棒をそのままにして、ディーターはナイフを手に持ち、クリスティアナの脇に立ち、乳房の脇からナイフ刺し、反対側へ貫通させた。そしてもう一方の乳房にも同じようにナイフを刺し、貫通させた。クリスティアナは絶叫を通り越したような唸り声をあげ続けている。ディーターはナイフで切れ込みを入れた部分から、三センチほどの鉄の棒を脇から通して、そのまま、もう一方の乳房にも棒を通した。そして、クリスティアナの二つの大きく膨らんだ乳房には、鉄の棒が脇から横一線に貫通した状態にした。

 ディーターは乳房を貫通している鉄の棒の両端にチェーンをフックで止めて、そして、チェーンの真ん中の部分に、上から滑車を通して降りてきているワイヤーの先のフックを掛け、ロバートにフックから伸びているワイヤーを持つように指示をした。

「乳首が取れちゃったから、こんなに大きなものも不要でしょうから、取ってあげますね。でもただナイフで切って取るのは面白くありませんから、引き千切りますね。ちょっと痛いかもしれませんがね」

 ディーターが絶叫しているクリスティアナにそう言い放ち、ロバートにワイヤーを引くように命じた。二つの乳房を貫通した鉄の棒が引き上げられる。ナイフで切れ込みが入っているところから乳房が引き裂かれるようにして持ち上がっていく。裂けた部分から血が流れ出し、クリスティアナのあげる狂わんばかりの絶叫の中、ロバートが力を込めてワイヤーを引っ張る。乳房を貫通している鉄の棒が、乳房の下側を徐々に引き裂きながら上へと上がっていく。

「い、い、いっやああああ~~~~、やめて~~~~~、ぎゅぎゃあああっ」

 クリスティアナがあげる絶叫の中、乳房の下半分が引き千切れ、解き放たれた鉄の棒が、その反動で血の飛沫と共に上へと飛び上がった。ディーターはすぐにナイフを手に持ち、まだつながっている乳房の上半分を、まるで肉を捌くかのように切り取った。ディーターの手は血で真っ赤になっている。そして、切り取った乳房を手に持って、クリスティアナに見せるようにした。クリスティアナは大きく悲鳴をあげ、そのまま、また失神した。

 ディーターは切り取った乳房を無造作に床に投げ捨てた。びちゃっ、という音をたて、乳首のない乳房が床に落ちた。乳房があった部分から夥しく、血が流れ出ている。ディーターはそこにまた、黄色い粉をかけて布を被せ、胸を拘束してあった、皮ベルトで押さえ付けた。

「素早いな」

 今岡が、素早く行われた止血を見てつぶやいた。

「ここで、出血多量なんかで殺すわけにはいかないからな。おっぱいの上半分をナイフで切り落としたのも、これ以上、出血させない為だろうな」

 ラルフが、さも当然という感じで今岡に返した。

 

 クリスティアナにマスクが当てられた。クリスティアナはすぐに喚きはじめた。その様子を見て、ディーターが、まだ尿道に突き刺さったままの細い棒をいきなり引き抜いた。

「いっ、ぎゃあああ~~~~~ああああっ」

 いきなり尿道に刺さっていた棒が引き抜かれ、クリスティアナはまた大きく絶叫した。そして、止血の為に、膣に押し込んであった布も引っ張り出し、肛門に詰めてあった布も取り出した。床には千切られた二つの乳房と、真っ赤に染まった布切れが無造作に捨てられている。

「さて、次は子宮を切り取って、取り出しましょう」

「いっ、いやっ、おねが・・い、もう、やめ・・・て・・」

「その前に子宮を取り出しやすくするために、穴をもう少し広げますね」

 クリスティアナの哀願も聞こえないかのように、ディーターは大きな鋏を手に持った。料理用の肉を切る鋏だ。

「これで膣と肛門の間を切り取りますね。そうしたら穴も大きくなって、私が作業しやすくなりますからね」

「あっ、あっ、あっ、やめて、ねぇ・・・、おっ、おねがい・・・・」

 クリスティアナが声を震わせて哀願するが、そんな願いも空しく、ディーターは鋏を開いて、刃をそれぞれ肛門と膣の中に深く入れた。そして右手を握った。

「いっ、いたいっ、おねがい・・・、やめて、やめてください・・・」

 ディーターは少し横に間隔をあけて、再度鋏を握った。そして、鋏を斜めに動かし奥の部分を切り、膣と肛門を隔てていた肉壁を切り取った。

「膣と肛門がつながっちゃいましたね。でもこれで子宮が取り出しやすくなる」

 泣きじゃくるクリスティアナに、切り取った細長い肉壁を指で摘んで見せながらそう言って、肉壁を床に捨てた。そして、右手中指と親指に爪を付けた。爪の部分は鋭い刃になっている。

「もう少しで、あなたは本当に女ではなくなりますね」

 そう言ってディーターは口元に笑みを浮かべた。言っている意味を理解しているのか、クリスティアナはワナワナと体を振るわせている。

「おっ、おねがいしまっ・・・す、やめ、やめ・・・てっ」

 ディーターは右手をクリスティアナの膣の奥へと突っ込んだ。ディーターの手は抵抗もなく入っていく。ディーターの手が止まった。そして、膣の中で指を動かし始めたのが外から見ていても分かる。

「いっ、いやああ~~~~~~~~~あああ、やめてぇ~~~~~~~~えええ」

 クリスティアナが大声で悲鳴をあげはじめた。ディーターは右手を動かし続けているが、膣の中でどのようにしているのかは客席からは分からない。しかし、膣の中に腕が突っ込まれている光景は異様だ。クリスティアナの悲鳴が絶叫に変わってきた。ディーターは探るように手を動かし続けている。しばらくして、ディーターが腕をぐっ、ぐっ、と手前に引っ張るような動きをした。そして、また少し手を動かして、また引っ張るようにした。そして、膣から手を抜いた。ディーターの手には、えぐり取られた血だらけの子宮があった。卵巣までは取れなかったようだ。

「では、仕上げをしますね」

 そう言ってディーターは手に持っていた子宮を床に投げ捨て、ナイフを手にした。女を失ったクリスティアナは発狂したように絶叫している。そして、ディーターは手にしたナイフで、性器の部分と肛門までをえぐり取った。大きく広げられた足の真ん中の部分は、縦に楕円形の穴があいているように見える。そして、そこから夥しく血が流れ出ている。下の床には早くも血だまりが出来ていた。

 

              十

 

 うっ、うっ、とクリスティアナの嗚咽が聞こえる。クリスティアナの女であることの証が全て破壊された。ディーターは客席に向かって頭を下げ、奥へと出ていった。

「本当に・・・、徹底的にやったな」

 今岡がそうつぶやいた。まだ心臓がドキドキしている。

 それに答えるようにラルフが、

「ああ、あの女からすれば、あのまま出血多量かなにかで死んだ方が良かったと思っているだろうな」

「そりゃそうだろう。このまま生きていたって、セックスどころかクソひとつ満足に出来ないだろうし、それに、女といえるところが全て無くなったからな」

「それより、どうだった。今日は。今のが最後のショーだったが」

「大満足さ。誘ってくれて感謝しているよ」

 ごく自然に出た言葉だった。マギーの拷問の後に感じていた、蟠りは今の今岡にはない。それよりも欲求を満たしたという満足感の方が大きかった。

 今、クリスティアナが台に乗せられたまま奥へと連れていかれた。引き裂かれた乳房やえぐり取られた子宮、性器も、赤く染まった布とともにゴミのように箱に入れられ片づけられた。釘でテーブルに打ち付けられ、引きちぎれた乳首も、テーブルごと片付けられた。

 

 ローザがケインとディーターを伴って出てきた。ジャンとロバートもその後に続き、三人の後ろに立った。ローザが丁寧におじぎをして話しはじめた。

「皆様いかがでしたでしょうか。本日のショーは全て終了いたしました。今回も入念に準備を行い、本格的な拷問ショーをお見せできたと自負しております。また、皆様にはご満足頂けたことと思っております」

 客席から拍手が起こった。ローザが笑顔で続けた。

「そして次回もまた、皆様がご満足頂けますよう、準備を整えたいと思っております。ぜひ、またクラブ・デスティニーへお越し下さいますよう、よろしくお願いいたします。皆様のまたのお越しを、スタッフ一同、心よりお待ちしております。ありがとうございました」

 客席から再度、拍手が起こった。ローザ、ケイン、ディーターが恭しく頭を下げている。今岡も一緒に手を叩いていた。その時、接客の女の子が今岡のところへ来て、一枚のメモを手渡した。今岡はそれを開いた。

 “明日の午後一時、シュタイゲンベルガーパークのロビーで待っています。ローザ”

 今岡は目を上げた。ローザがステージ上から今岡を見て片目をつぶった。

「さて、帰るか」

 ラルフが今岡を促すように言って、肩をポンと叩いた。

「そうだな」

 言いながら今岡は腕の時計を見た。すでに夜中の十二時を回っていた。

 

十一

 

 翌朝、今岡は九時過ぎに目が覚めた。少し体がだるかった。窓の外は雪が降っている。昨日の夜、あれからラルフと飲みに行って、家に帰ってきたのは朝の四時近かった。

 今岡はそのままベッドに横になって、昨夜のことを思い出していた。

 物凄いショーだった。内容は事前にラルフから聞いてはいたが、実際に見るのとでは大違いだった。何も知らないで連れて来られて、徹底的に拷問にかけられる女たち。悲鳴をあげ、絶叫し、血を流し、残虐に体を引き千切られ、切り刻まれる。もう二度と女の喜びを味わえないほどに。そして、それを客は座り心地の良いソファで、リラックスしながら眺めている。時には拍手をしたり、囃し立てながら。普通に考えれば、狂気の世界だ。しかし、その狂気の世界は、人類の長い歴史の中で繰り返し行われてきた。必要に迫られて行われた拷問よりも、権力者などの楽しみのために行われた拷問の方が多いという。これが、ローザが言う人間が持つ本能の一部ならば、自分や昨夜の客たちも、そして狂気の宴を楽しんだ昔の人々も、ただ欲望を排出したに過ぎないのか。もしそうならば、ショーを見終わった後、満足感を感じた自分を否定することはできない。

 

 午後一時少し前に今岡はシュタイゲンベルガーパークのロビーに着いた。ローザはすでに来ていた。今岡を見つけると笑顔で小さく手を挙げた。ジーンズにタートルネックのニット、ジャケットという、わりとラフな格好だった。手にはカシミアのコートを提げている。ブロンドの髪を後ろでひとつに束ねている。どこから見ても普通のかわいいお嬢さんといった感じだ。マスター・ローザのイメージとはかけ離れ過ぎている。

 二人はカフェに入った。今岡は妙に照れくさい感じがした。若くて美しい女とカフェに入るのは、いつ以来だろうか。話しの糸口が見つからない。

「あれからすぐに帰ったの?」

 ローザが今岡を気遣ってか、話しかけてきた。

「いや、ラルフと少し飲んでから帰って、家に着いたのは朝四時前だったよ」

「そうなんだ。ミスター・クルーガーは昨夜のショーは楽しめたのかしら?」

「けっこう満足したみたいだったね。また行くって言っていたよ」

「ミスター・イマオカ、あなたは? また来たい?」

「・・・・・」

 今岡はなんて答えていいのか分からなかった。それよりもローザに聞きたいことがあった。

「ミス・ウィリアムス、・・・」

「いやねぇ、ローザでいいわよ。そんなに改まらなくても。ローザって呼んで」

 ローザが屈託のない笑顔を見せる。

「ああ、す、すまない」

 と言って今岡が続けた。

「ローザ、なんでマギーの拷問が終わった後、俺がいる化粧室に来たんだ」

 ローザが少し考えるようにして話しはじめた。

「あなたが動揺していたからよ。私、いつもお客さまの様子をステージの奥から見ているの。それに、他のマスターがどんな拷問をしているのかも興味あるしね。ここだけの話しだけど、お客さまの様子を見ているとけっこう面白いのよ。もっとやれ、もっとやれ、って体全体で表現している人や目だけがギラギラと輝いている人、その反対に目がイッちゃってる人、たぶん無意識にそうなっていると思うけどね。あと女性のお客さまだとちょっと違うわ。拷問されるのが若くて美しい女ばかりだから、妬みか、それとも彼女たちの美しさに嫉妬するのか、もっと痛めつけてやりなさい! っていう感じの目をしている人が多いわ。クリスティアナの体を客席に見せ回った時、女性のお客さまが、クリスティアナの性器をマドラーで弄んでいたわよね。あれなんか典型的な同性イビリね。これは女にしかわからないことかも知れないけれど。それとか、あの人今パンツの中でイッたな、なんて分かる時もあるわね」

 そう言ってローザが声を出して笑った。

「どうしたらそんなことが分かるんだい?」

「すぐ分かるわよ。普段足を広げていたり、足を組んで偉そうにして座っているのに、急に足を閉じたりとか、伸ばしたりとか。あと、腰を動かす人、まるでセックスしているみたいにね。でも、たぶんこれは無意識の内にそうしていると思うけど。それを見た時は笑いを堪えるのが大変だったわ。それとか、ただ腰をもぞもぞとさせている人とか。そしてイッたあとは必ずって言っていいほど、おちんちんのところを手で押さえるの」

 ローザがまた声をあげて笑った。今岡も可笑しくなり、一緒になって笑ってしまった。

「それでなんで私があなたのところへ行ったのかっていうと、マギーの拷問の後、あなたの顔に書いてあったわ、なんでそこまでやるのか、ってね。でも、それはそうよね、普通の人間ならば、あんな残虐なものを見たら嫌悪感を抱くか、良心を苛まれるわ。でもあの時も言ったけど、残虐さも人間の持つ本能の内のひとつなの。

あなたはこういう場所に来ていながら、それを理解していなかったわ。人が持つ残酷さをね。ヒットラーも犬を可愛がったと言うわ。それは愛がなければ出来ないことよね。でも彼はたくさんのユダヤ人を殺した。ガス室へ送り込んだり、人体実験をしたり、拷問にかけてね。だからといって、拷問を正当化する気はないけれども、ただ私たちは人間の持つ残酷さを具現化して、日常では決して埋めることが出来ない、人の持つ残酷さを埋め合わせることが出来るように、ショーを見にきている人たちに提供しているだけよ。それは何故か、人間にはそういった欲望があるからよ。あの時、あなたにそれを伝えたかったのかも知れない。でも、あなたとセックスするとは思っていなかったけどね」

 ローザがいたずらっぽく笑った。そして、また話しはじめた。

「反対に拷問を受ける方も体が反応しているわ。性的にね。体を傷つけられることによって、性的快感を得る人たちがいるようにね。普段そんなことを考えてもいない人たちも、そういう状況になったら体が勝手に反応するわ。私ももしそのような状況に置かれたらそうなると思うし、多分、あなたもね。それも全て人間が持つ本能だと思うわ」

 今岡は人間が持つ恐ろしさを実感すると同時に、自分が持つ残虐さを感じていた。そのあと二人はしばらく雑談を交えながら話し続けた。

「さあ、出ましょうか」

 そう言ってローザが立ち上がった。時計はすでに三時を回っていた。今岡も席を立ち、ローザとともにカフェを出て、ホテルの出口へと向かった。

「今日は来てくれてありがとう。もう一度あなたとお話ししてみたかっただけなの。またお会いしましょう」

 そういい残してローザが外へ出ていった。激しく降る雪があっという間にローザの姿を今岡の視界から消し去った。今岡はローザが消えた方向を見ながら、しばらくその場に佇み、思いを巡らせていた。昨夜のこともローザと出会ったことも、自分の本能からくる、単なる夢物語だったのかもしれないと。