六月八日 雨


 今日は、少し悲しい日でした。今までに私はずいぶんとたくさんの人を殺してきましたけど、その人たちのことはみんな覚えています。でも、もしかしたら、今日捕らえたミシュエルさんのことは、しばらくしたら忘れてしまうかもしれません。
 ミシュエルさんは、以前姦通の罪で処刑したメリエルのお兄さんで、昨日、私のことを殺そうとした罪で処刑したバドちゃんの恋人です。ああ、恋人、というのは少し違うかもしれません。バドちゃんは彼のことを好きだったらしいんですけど、彼の方では何とも思っていなかったみたいですから。
 バドちゃんを殺させた私がこんなことを言うのもおかしいかもしれませんけど、彼のせいでバドちゃんが死ななければならなかったなんて……可哀想だし、少し、腹が立ちます。

 領主の館の地下に造られた、無数の拷問部屋の一つ。壁から生えた鎖で手足を拘束された若い女性が、全裸で鞭打ちを受けて悲鳴を上げている。鞭は皮鞭、イバラ鞭や鎖鞭とは違って、それほど大きく身体を傷つけるようなことはない。痛みも、そう言った凶悪な鞭と比べれば少なく、拷問としては軽い部類に入る。まぁ、素肌を皮の鞭で打たれればそれだけでも充分痛いのだが。
 鞭を振るっているのは、この屋敷に仕えるメイドの一人で、ミレニアの側近と目されているクリシーヌ。メイド服には不似合いな剣を腰に吊るした姿で、薄く唇に笑いを浮かべて鞭を振るい、女に悲鳴を上げさせている。彼女の背後では椅子に腰かけたミレニアが、いつもと変わらぬ無表情でその光景を眺めていた。
「ひいっ、痛いっ、きゃああぁっ。お、お願いっ、許してっ。きゃあっ」
「あらあら、この程度で泣き言を言うようじゃ、これから一週間、とてもじゃないけどもたないわよ? 今日は初日、まだほんの小手調べなんだから」
 悲鳴を上げて身悶え、哀願の声を上げる女へと、楽しそうに笑いながらそう応じ、クリシーヌが鞭を振るう。乳房をしたたかに打ち据えられ、甲高い悲鳴を上げて女が顔をのけぞらせた。
 彼女は別に、罪人ではない。今年の春、今は亡き前領主が出した布告によって集められた、『生贄の娘』だ。拷問を受け、惨殺されることを前提に、高い金でいわば買われてきた女たち。本人が望んだのか、家族などに強制されたのかは分からないが、その総数は二十六名。前領主の慣習では、使用人の募集は春秋二回。ミレニアがその慣習に従わねばならない義務はないのだが、彼女は秋に使用人の募集を行い、同時に『生贄の娘』も再募集する予定でいる。
 そして、次の募集までの二十六週間にミレニアは単純に『生贄の娘』を一人ずつ割り振り、一人の人間を六日間に渡って拷問にかけ、七日目に殺す、ということにした。彼女が受けている皮鞭による鞭打ちは、その一日目の拷問だ。もちろん、鞭打ちだけで今日の拷問が終わるわけではない。少し離れた場所に置かれた机の上には大型の親指締め器やペンチが置かれている。その時のミレニアの気分次第でどんな拷問が加えられるかは違うのだが、今回は指締めや爪剥ぎといった手に対する拷問をやるつもりらしい。
「きゃあっ。ひっ、ひいいぃっ。お願いです、お金はお返ししますっ。だ、だから、許してぇっ」
「あら、駄目よ。今までにもそう言った人は何人も居たけどね、一人の例外もなく死んでいったわ。あなたも一週間後には死ぬの。血まみれの、無残な肉塊になってね」
「いっ、いやあああああぁっ!」
 楽しそうにクリシーヌが笑い、女が恐怖の悲鳴を上げる。前の『生贄の娘』が殺される場面に彼女は立ちあわされており、ここに連れてこられた時点で既に怯えきっていた。例え覚悟を決めていたとしても、若い娘が目の前で人間が惨殺される所を見させられ、次はお前だといわれれば怯えない方がおかしいだろう。恐怖と苦痛に泣きわめく女と楽しげに笑うクリシーヌ。自分が命じたことだというのに、その光景をミレニアは何の表情も浮かべず、無言のまま静かに眺めている。
 と、遠慮がちなノックの音が微かに響く。鞭打たれる女の上げる悲鳴にかき消されそうな、小さな音だが、ミレニアは無言のまま椅子から立ち上がった。ノックには気付かなかったのか、鞭を振るう手を休めようとしなかったクリシーヌだが、ミレニアの動きには流石に気付いて振りかえる。
「御主人様? どうか、なさいましたか?」
「プラムが帰ってきたようです。クリシーヌは、彼女への責めを続けていてください」
 扉の方に向かいながら、振りかえりもせずにミレニアがそう命じる。はい、と、従順に頭を下げるクリシーヌの返事を背中で聞きながら、ミレニアは部屋の外に出た。開いたドアの隙間から見えた室内の様子、特に鞭打たれて身体の前面に縦横に赤い筋を走らせた女の姿に一瞬息を飲み、目を丸くしているメイド姿の少女の頭にぽんと軽く手を置く。
「お疲れ様、プラム。うまくいきましたか?」
「あ、はい、ミレニア様。街の衛士の人たちに協力してもらって、無事に捕まえてきました。言われた通り、別の部屋に閉じ込めてあります」
「そう。あなたは、もう部屋に戻っていていいですよ。後は、私がやりますから」
 ミレニアの言葉に、プラムが頷きかけてためらうような表情を浮かべる。
「あ、あの、ミレニア様。お手伝い、しましょうか?」
「……プラム?」
 既に歩き始めていたミレニアが、足を止めて肩ごしにプラムの方を振りかえる。静かに名前を呼ばれ、どぎまぎしながらプラムが言葉を続ける。
「そ、その、お一人だと、大変ですよね。だから……」
「拷問を、やりたいんですか?」
 プラムの言葉を半ば遮るようにして、ミレニアが静かに問いかける。表情も口調も変わっていないのだが、責められているような気分になってプラムが口篭る。
「そ、そういうわけじゃ、ないんですけど……あの、御迷惑、ですか? 私、邪魔ですか?」
「……しかたないですね。いらっしゃい」
 ほんの僅かに溜め息のようなものをつくと、ミレニアは目的地へと向かって歩き始めた。

「りょ、領主様! 何故私がこのような目にあわなければならないのです? わ、私は、誓って領主様に叛意など抱いておりません。何かの間違いです。どうぞ、しっかりとしたお取調べをお願いします」
 ミレニアとプラムが拷問部屋の一つに足を踏みいれると、今まで拘束から逃れようともがいていた男が哀れっぽい声を上げた。線の細い、優男系の美男子だ。無表情に彼のことを見つめると、ミレニアは静かに問いかけた。
「ミシュエル、でしたね。あなたは、バドに命じて私を殺そうとした。違いますか?」
「誤解です! 誤解です、領主様。あの女が何を言ったかは存じませんが、私はそのようなことを命じてはおりません! 私は、領民として領主様のことを敬愛しております。その私が、どうして領主様の暗殺など企みましょう! ええ、そうです、あの女が、罪を免れたい一心で私に罪を擦りつけたに相違ありません。どうか、どうか御明察を!」
 身をよじり、見苦しいまでに哀願の叫びを上げるミシュエル。彼の哀願を無表情に聞きながら、ミレニアは彼を縛る縄の端を掴んでいる下男の方に視線を移した。
「トムス。彼の縄をとき、その椅子に座らせてください」
「あう、うあ」
 不明瞭な声を上げて下男が頷き、もがくミシュエルのことを引き起こす。力の強さではバルボアと互角かそれ以上なのだが、頭の働きが鈍く、命じられたことしか出来ないために他人の気配りを望む前領主からは軽視されていた男だ。とはいえ、誰かを拷問にかけようと思えば、どうしても力ずくでねじ伏せる場面は出てくる。ミレニアにしろクリシーヌにしろ、力が強い部類ではないから彼のような人間は必要だ。
「や、やめろっ、やめてくれっ。領主様っ! お許しをっ、ああっ、私はっ、無実ですっ! 誓って、領主様の暗殺など……!」
「ですから、その取り調べを今から行います。プラム。彼を、ベルトで椅子に固定してください」
「は、はい……」
 もがくミシュエルのことをトムスが強引に椅子に座らせる。プラムが椅子にベルトで彼の身体を固定していくが、不慣れなのと彼が激しくもがくために手間取っている。トムスの力であれば、片手で抱き抱えるようにしてミシュエルの身体を押さえ込み、片手で腕を押さえてプラムが腕にベルトを巻くのを手助けする、ぐらいのことは出来る筈なのだが、プラムが悪戦苦闘しているのをただ眺めているだけだ。
「手伝いましょうか? プラム」
「ううん、大丈夫です、ミレニア様」
 プラムのすぐ後ろまで足を進め、ミレニアが問いかける。首を振って答えるプラム。おかげでミシュエルの身体が椅子に拘束されるまで結構な時間が過ぎたが、ミレニアは何も言わずに静かにたたずんでいた。
「プラム。次は、このペンチで彼の指の爪を剥がしてください」
 苦労しながらミシュエルの拘束を終えたプラムに、棚の上に置かれていたペンチを手にとってミレニアがそう言う。は、はい、と、僅かに声を掠れさせてプラムが頷き、ミシュエルが悲痛な声を上げた。
「領主様! 誤解です、誤解なんです! 私は何もやっておりません! どうかお許しを……!」
「では、お願いします、プラム」
 ミシュエルの哀願の声を完全に無視して、ミレニアがプラムに声をかける。緊張した表情でプラムがミシュエルの前に進み、彼の右手人差し指の爪をペンチで挟み込んだ。
「う、うわっ、やめろっ、やめてくれぇっ!」
「ご、ごめんなさいっ」
「うわあああああああっ!」
 ミシッと爪を強く引かれ、ミシュエルが悲鳴を上げる。びくっと身体をすくませたプラムに向かい、ミレニアが静かに問いかけた。
「代わりましょうか?」
「だ、大丈夫です、ミレニア様」
「うわああっ。痛いっ、やめてくれえっ。爪がっ、爪が剥がれるっ、うわっ、うぎゃあああぁっ!」
 ミレニアの問いに首を振り、力を込めるプラム。爪の間から血がにじみ、ミシュエルが悲鳴を上げる。ぎゅっと目を閉じ、プラムが懸命に力を込める。ミシュエルの悲鳴がますます大きくなり、ついにはべりっと爪が剥ぎ取られた。顔をのけぞらせ、ミシュエルが絶叫を上げる。
「あう、うあぁ……りょ、領主様、お許しを」
「私の暗殺をバドに命じたこと、認めますか?」
「そ、それは……」
「そう、ですか。プラム、次の爪を、剥がしてください」
 爪を剥がされ、痛みにうなだれたミシュエルにミレニアが無表情に問いかける。ミシュエルが口篭ると、無造作にミレニアはプラムに次の爪を剥がすように命じた。
「お、お待ちくださいっ。そ、その、酒場で酔って、つい……」
「私を殺すように、命じた、と?」
「命じたわけではありません! その、酔った勢いで、領主様が居なければ妹が死ぬこともなかったのに、などと口走ってしまった、かもしれません。何分酔っていたので、はっきりとは覚えていないのですが……。
 し、しかし、私は、本心から領主様を憎いと思っていたわけではありません。ただ、その、酔っていたもので、心にもないことをつい口走ってしまっただけで……決っして、領主様を殺したいと思っていたわけではありませんし、ましてや、あの女に領主様の暗殺を命じたわけではございません。私が酔った勢いでつい口走ってしまった戯言を勝手に解釈して、あの女が勝手にやったことです」
「バドの独断で、あなたの責任ではない、と?」
「そ、そうです! ええ、悪いのはすべてあの女なのです。領主様、私は何も悪くありません。そもそも、あの女にしても、勝手に向こうから私にまとわりついてきているだけで、私とは何の関係もない相手です。ええ、そうですとも、あの女が領主様の暗殺を企むようなとんでもない女だと知っていれば、とっくの昔に縁を切っていましたとも。ましてや、自分で勝手にしでかしたことの罪を私に擦りつけようとするなどと……っ!?」
 助かりたい一心からか、まくしたてるミシュエル。その言葉が、途中で不意に途切れた。ベルトを巻かれ、椅子にしっかりと拘束された後も最初に言われた通りミシュエルの肩を押さえ、椅子に座らせていたトムスが、怯えたような表情を浮かべて一歩後ずさる。
「もう、充分です」
 薄く、口元に笑みを漂わせてミレニアがそう言う。立ち位置の関係でミレニアには背を向けており、直接にはその笑みを目にしていないプラムも、ミレニアのまとう雰囲気が変化したことを悟って僅かに身をすくませた。振りかえりかけた彼女の肩に、ミレニアの手が置かれる。
「プラム、ご苦労様でしたね。彼の尋問は、これで終わりです。あなたは、もう部屋に戻っていていいですよ」
「は、はい」
「トムス。あなたは、彼をあの台の上に寝かせてください」
「あう、うあ、うああ……」
 トムスがミレニアのことを指差して不明瞭な声を上げた。ミレニアが軽く小首を傾げる。
「どうしました?」
「うあう、うあ、あうう」
「おかしな人ですね。拷問の場に立ちあうのは、初めてではないでしょう? 何を怯えているんです?」
 おそらく、いや、確実に、ミレニアは自分が笑みを浮かべていることに気付いていない。そして、その笑みがトムスを怯えさせ、ミシュエルの言葉を遮ったと言うことも。
「ミシュエル。一つ、あなたは勘違いしていますね。バドは、最後まで、そう、殺される時まで、私を殺そうとしたのは自分の意思だと、誰に頼まれたのでもない、自分の意思だと主張を続けていました。誰かに頼まれたのであれば、あなたの罪を軽くしてあげると言われても、あくまでも自分の意思だと、彼女は主張していたんですよ。
 トムス。彼を台に寝かせて、手足をベルトで固定してください」
 ふっと笑みを消し、ミレニアがトムスに命じる。ぎくしゃくとした動きで、トムスがミシュエルを拘束するベルトを外す。まださっきミレニアが放った気配に圧倒されているのか、抵抗のそぶりも見せず、がちがちと歯を鳴らしながらミシュエルはトムスに引きずられるようにして台の方に連れていかれた。
「りょ、領主様、お許しを……」
「バドの望みとは、違うでしょうけれど」
 ミシュエルの哀願の声に、答えになっていない呟きを漏らすミレニア。まだ部屋の中で立ち尽くしているプラムの方に視線を移すと、ミレニアは軽く小首を傾げた。
「プラム? 部屋に戻っていていいと、言いませんでしたか?」
「あ、は、はい……。あの、ミレニア様。もしかして、凄く、怒ってます?」
「……少なくとも、あなたに対して怒っているわけでは、ありませんから」
 怒りを覚えていること自体は、否定せずにミレニアがそう言う。何か言おうとして、しかしミレニアの雰囲気に飲まれてプラムが口をつぐんだ。普段であればミレニアに対しても遠慮なしにいろいろと言うことが出来るプラムだが、地下の持つ雰囲気のせいもあってか精彩を欠いているらしい。再度部屋に戻るように促され、しぶしぶながら、といった感じではあったがプラムは地下室を後にした。

「あがっ、がっ、ぐあああああぁっ。りょ、領主様っ、お許しをっ、うああっ、背、背中がっ、がっ、はっ、折れ、る……ぐあああああぁっ」
 台の横に取りつけられたハンドルが回されるたびに、寝かされたミシュエルの肩の下と腰の辺りで台から突起が伸び、その二ヶ所を支えにしてミシュエルの身体が反りかえっていく。目を剥き、悲鳴を上げるミシュエルの姿を無表情に眺めながら、ミレニアは更にハンドルを回した。
「ぐああああああぁっ! 痛いっ、ぐあっ、はっ、がっあっ、りょ、領主さまぁっ! ぐあああああぁっ!」
 ミシミシッと、肩や腰の辺りで骨が軋む。手と足は固定されているから、胴体部分が持ち上がって行けば当然引き伸ばされるような格好になり、激しく痛む。更に突起が伸びれば、胴体部分も同じように引き伸ばされる痛みを感じるようになるだろう。その前に、肩が外れるかもしれないが。
 無表情に、ミレニアがハンドルを回す。反りかえった身体をのたうたせ、ミシュエルが悲鳴を上げる。哀願する彼の声を無視してミレニアはハンドルを回し続ける。やがて、ゴキッという鈍い音が響き、ミシュエルの肩の骨が外れた。聞き苦しい濁った絶叫を上げてミシュエルが身体をのたうたせる。
 無言のまま、ミレニアは棚の上から燭台を取り上げ、蝋燭に火を点した。中央の太い幹から枝分かれするように細い蝋燭立てが伸びるタイプのもので、蝋燭の数は七本。その全てに火を付けると、ミレニアは無造作に燭台を反りかえったミシュエルの背中の下に置いた。
「ギャアッ!? ぎゃっ、熱いっ、うぎゃああああああああぁっ!!」
 七つの炎が、ミシュエルの背中をあぶる。身に付けていたシャツが燃え上がり、身体をのたうたせてミシュエルが絶叫を上げた。
「ぎゃあああああぁっ、熱いっ、うあっ、お許しをっ、ぎゃああぁっ、死ぬ、焼け死ぬっ、うぎゃああああぁっ!!」
 絶叫を上げてミシュエルが身悶える。とはいえ、身に付けていたのはシャツ一枚。しかもそのシャツは季節が夏ということもあって薄手のものだ。だからこそあっさりと燃え上がったともいえるが、その分燃え尽きるのも早い。上半身にある程度の火傷を負うことにはなるだろうが、命に関わるというほどのものではない。
「ぎゃあああぁっ、領主様っ、許して、うぎゃあああああぁっ、燃える、死んでしまうっ、ぎゃあああああぁっ!」
 悲鳴を上げて身体をのたうたせるミシュエル。彼に背を向け、再びミレニアが棚に向かう。普通のペンチを手に取ったミレニアは、上半身を炎に包まれた--といっても、その炎の大きさはさほどのものではないが--ミシュエルの方に視線を向けた。
「最初に、服は脱がせておくべきでしたか」
 炎の熱さと痛みに泣き叫んでいるミシュエルの姿を眺めながら、無表情にミレニアがそう呟く。びくっ、びくっと痙攣するように跳ねるミシュエルの腰に手を伸ばすと、ミレニアは彼のズボンの腰紐をほどき、陰部を露出させた。痛みと恐怖とで縮込まっている陰茎を無造作につまみ、ペンチで挟む。
「ギャッ!? ギギャアアアァッ!! ギャウウウゥッ! ウギャアアアアアアアァッ!!」
 敏感な部分を挟み込まれ、捻られる激痛と上半身を覆う炎の熱さ、全身を引き伸ばされる苦痛。そういったものにまとめて襲われ、ミシュエルが絶叫する。泣き叫ぶ彼の陰茎を無造作に捻り、挟み潰すミレニア。ぶちっと根元から陰茎がむしり取られ、断末魔じみた絶叫を上げてミシュエルが悶絶する。かまわずにミレニアはミシュエルの睾丸をペンチで挟み込み、グシャッと押し潰した。
「ギャビャアアアアアァッ!? ウギャギャギャギャッ! ギャビイイィィィッ!!」
 悶絶から、激痛によって無理矢理叩き起こされたミシュエルが獣じみた絶叫を上げる。男性器を責めるための器具としてワニのペンチというものがあるが、別に普通のペンチでも代用は充分可能だし、どんな道具を使った所で陰茎や睾丸を挟み潰され、引き千切られる激痛は大差ない。
「ひゃべて、ウギャアアアアアアァッ! ギャビャッ、ビャッ、ブギャアアアアアアアアァッ!!」
 残された睾丸も、無造作に挟み潰される。泡を噴き、苦悶に身体をくねらせるミシュエル。上半身を覆っていた炎は、シャツを焼き尽くしただけで身体の方には燃え移らなかったらしく、既に消えかけている。とはいえ、背中の下に置かれた蝋燭の炎は相変わらず彼の背中を焼いているのだが。
「ジヌ、ギャッ、グギャアアアァッ、ギャギャッ、ギャアアアアアアアアアァッ!!」
 股間から伝わってくる激痛と、背中を焼かれる痛み、上半身を覆う火傷の痛み。更にミレニアがハンドルを回し、彼の腰と肩とを押し上げ、全身を引き伸ばす。ミシミシと背骨が軋み、肘や膝の関節が外れそうになって激しく痛む。半ば白目を剥きかけているミシュエルの絶叫と狂乱。
「今日は、まだ、殺しません。あなたは、明日、街の広場でバドちゃんと同じ方法で死んでもらうつもりですから」
 静かにそう告げると、ミレニアは絶叫を上げつづけるミシュエルのことを静かに見つめた……。
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