メリエル編


 今日、予想よりもずいぶんと早く、私のやりたいように拷問できる機会が巡ってきた。もう少し信頼させてからじゃないとそういう機会はこないと思っていたから、馬鹿なことをしてくれた二人には感謝しないと。しかも私に与えられたのは女の方と、かなり運がいい。男を回されても嬉しくはないものね。
 絶望の表情が見たかったから、とりあえず男たちに犯させてみたけど、思ったより長持ちしたのは嬉しい誤算と言う奴かしら? おかげで、胸やあそこを焼かれて身悶える姿も見れたし、最初の予定よりずっといい形で絶望の表情を浮かべさせることが出来たんですもの。本当に、私は運がいいわ。
 でも、結果を報告した時、あの女が私を責めるようなことを言うのには参ったわね。自分で好きなようにやっていいって言っておいて、殺したことを責められるんじゃたまったもんじゃないわ。それじゃ、私があの子を助けてたらどうしたわけ? どうせ、後で自分で殺しちゃうんでしょ?
 ま、今はまだ日も浅いし、あせることはないわよね。あの女、何を考えてるのか分かりにくいけど、所詮は二十歳にもならない小娘だし。信頼させて、実権をこっちのものにするのなんて難しくはないわ。それまでは、せいぜい従順なふりでもして、取り入るとしましょうか。
(クリシーヌの独白より)

「お願い、許して……酷いこと、しないで……」
 断頭台に首と手首を拘束され、膝立ちになった体勢でメリエルが哀願の声を上げた。彼女のはるか頭上で、鋭利な刃が鈍い光を放っている。逃れようともがいても二枚の板に手首と首とを挟まれ、まったく逃れようもない。刃に繋がったロープが断ちきられれば、刃が落ちて彼女の首を切り離すことになる。
「あなたは、領主暗殺を企んだ重罪人。本来であれば、慈悲など与えずにこの断頭台で首を落とされても文句は言えない所なのよ」
「いやっ、死にたくないっ! お願いっ、許してぇっ」
 薄く笑いを浮かべながらクリシーヌが人の腰の辺りの高さにあるメリエルの髪を掴んであおむかせ、恐怖に顔を歪めてメリエルが叫び声を上げる。彼女の恐怖の表情に楽しそうに唇を歪め、クリシーヌがすらりと腰に吊るした剣を引き抜いた。
「ひいいっ! いやっ、やめて、殺さないでっ!」
「そんなに、死ぬのが怖い?」
「こ、怖いわ。お願い、許して……なんでもします、何でもしますから、命だけは助けて」
「そう。それじゃ、一つ賭けをしましょうか。これから、あなたにはそこにいる五人の相手をしてもらうわ。それが済んだら、そこから解放してあげる」
 くすくすと笑いながらクリシーヌが視線を壁際にたたずむ五人の下男たちに向けてそう言い、恐怖に青ざめていたメリエルの顔にわずかに血の気が戻る。
「ほ、本当? 本当に、助けてくれるの?」
「ええ、約束するわ。ただし……」
 薄く笑いながら、クリシーヌが刃を吊るすロープを手繰り、メリエルの手元へと引き寄せる。きょとんとした表情を浮かべるメリエルへと、笑いを浮かべながらクリシーヌは言葉を続けた。
「あなたには、このロープを握っていてもらうわ。そして、これからロープを切る。ロープを離せば、あなたの首は胴体から離れることになるわ」
「つ、つまり、五人の男の相手をする間、ずっとロープを握っていればいいのね? それが出来たら、助けてくれるのね!?」
「ええ、約束するわ」
 クリシーヌの言葉に、メリエルがごくりと唾を飲み込んでロープを握る。笑いながらクリシーヌが彼女の手の下でロープを断ちきり、メリエルがくうぅっと声を上げた。ずっしりと重い刃に引かれ、手の中からロープが抜けていこうとするのを懸命に握り締める。
「さて、それじゃ、始めましょうか」
 壁際に立つ五人の男たちのほうに視線を向け、クリシーヌは楽しそうにそう告げた。

「うあっ、あんっ、ふわっ、ああっ。深いっ、深いのっ、こんなの、初めてっ。ああ--っ」
 膝を突いた体勢のまま、背後から犯されてメリエルが首を振り立てる。正常位以外の体勢での性交は、神の教えに反するものとして教会の堅くいましめるところ。奔放な性格のメリエルだが、実際にはそれほど体験豊富なわけでもない。マルジュ以外の男に抱かれたことはないし、その時もすべて正常位での性交だった。背後から犯されたのは初めてで、味わったことのない角度での挿入に早くも惑乱気味の喘ぎ声を上げている。
「うあっ、あんっ、あんっ、ふわっ、あぁんっ。ああっ、熱い、熱いのっ、ふわああぁっ」
「あらあら、たいした淫乱ね。あははははっ」
 首を振り立てるメリエルの姿に笑い声をあげ、クリシーヌがあざけるような表情を浮かべる。彼女の見守る中、メリエルを背後から犯していた男が黙々と腰を動かしつづけ、やがて低い呻き声を上げてメリエルの胎内に精を放った。あああぁっ、と、悲鳴にも似た叫びを上げてメリエルが顔をのけぞらせ、がっくりと顔を伏せる。はぁ、はぁと喘ぐメリエルの背後で男が入れ変わり、二人目の男がつい先刻精を受けたばかりのメリエルの秘所へと自分の男根をねじいれる。
「ふああぁっ。やめっ、少し、休ませて……うああぁっ」
 犯された直後のただれた秘所に強引にねじこまれ、メリエルが悲鳴をあげる。男はそれを無視して腰を動かし、首を激しく振り立ててメリエルが悲鳴じみた喘ぎ声を上げる。
「ひあっ、あうっ、うあぁっ、あんっ、ああんっ、ふわああぁっ。激し、過ぎるっ、ああっ、壊れ、ちゃうっ、ふわぁんっ」
「あらあら、まだ二人目よ? そんなんで、最後までもつのかしら? ほらほら、しっかりロープを握らないと、首が落ちるわよ?」
「うあっ、あぁんっ。ひっ、ひいっ、許して、うあぁんっ」
 クリシーヌの言葉に、激しく首を振り立てながらメリエルが喘ぐ。やがて二人目の男もメリエルの胎内に精を放ち、背筋を反りかえらせてメリエルが叫ぶ。がっくりと首を折るメリエルの秘所から飲み込みきれなくなったのかどろりとした白いものが滴り落ちた。
「ひ、ひあぁ……うあ」
 うつろな視線をさまよわせ、掠れた呻きを漏らすメリエル。クリシーヌのめくばせを受け、三人目の男がメリエルの背後に立つ。ひくっ、ひくっと痙攣するように震えるメリエルの腰を掴み、尻肉を割り開く。ずぶり、と、ドロドロになったメリエルの秘所奥深くまでいったん挿入すると、すぐさま引き抜いてメリエルの愛液と前の男たちの精液とに濡れた自分の男根をメリエルの肛門へと無造作に突きいれる。
「ぎゃあぁっ!? そこっ、違うっ! 痛いっ、痛い痛い痛いっ! 裂けちゃうぅっ!」
「あら、こっちは初めて? 男を誘い、領主様の暗殺を企むようなあなたのことだから、とっくの昔にこっちも使ったことが有ると思ったけど」
「いやっ、イヤッ、イヤァッ! こんなのっ、嫌ぁっ! 痛いっ、お願いっ、抜いてぇっ!」
 肛門での交わりは悪魔の所行。倫理的な嫌悪感と肉体的な痛みにメリエルが目を見開いて泣き叫ぶ。苦悩の表情を浮かべながらも男が腰を動かしつづけ、やがて泣き叫ぶメリエルの肛門へと精を放つ。ひいぃ、と、掠れた息を吐いて顔を伏せ、ぼろぼろと涙を流すメリエル。それでもロープを握る手からは力が抜けない。半分感心したようにクリシーヌが肩をすくめた。
「頑張るわね。でも、いつまで耐えられるかしら?」
「もう、もう許して……死んじゃう」
 弱々しい哀願の声を上げるメリエル。くすくすと笑いながらクリシーヌが次の男にめくばせをし、四人目の男がメリエルの肛門を犯しはじめた。後ろから貫かれ、男が腰を動かすたびに悲鳴を上げてメリエルが顔を振り立てる。男の腰の動きに合わせて乳房を揺らし、メリエルが苦痛の呻き声を上げる。
「うあっ、あぐっ、んぐっ、ぐっ、い、痛いっ。ぬ、抜いて、くあっ、ああっ、あぐぐぅっ。……むぐぅっ!?」
 苦痛に呻くメリエルの髪を掴み、強引にあおむかせると五人目の男がメリエルの鼻をつまんだ。とっさのことで一瞬目を白黒させたメリエルだが、鼻をつままれては口で息をするしかない。そして、息をするために大きく開かれた口へと、男がすかさず自分の男根をねじこむ。驚愕に目を見開くメリエルへと、クリシーヌが笑い声を上げた。
「歯を立てちゃ駄目よぉ? ちゃんと、口でいかせてあげなさい」
「むぐっ!? むぐぅっ! むぐっ、うぐっ、むぐうぁっ!」
 鼻をつまんでいた指を離し、男が両手でメリエルの頭を掴んで腰を前後に動かす。口を塞がれ、喉の奥まで突かれて息が詰まる。口の中に形容しがたい味が広がり、吐き気がする。肛門と口を犯されるという、今まで想像もしたことのない行為を受けてメリエルが惑乱したような呻きを上げた。そんな少女の反応に表情を歪めながらも、男たちは腰を動かしつづけ、やがて同時にメリエルへと精を放つ。
「うえぇっ、おえっ、げほげほげほっ……」
 口からどろりとした男の精を吐き出し、ひとしきりむせると、メリエルは弱々しく顔を上げた。
「こ、これで、五人、よね……? 助けて、くれるのよね……?」
「あら、まだ二人でしょ?」
「え……?」
 すがるような表情で尋ねるメリエルへと、クリシーヌが悪戯っぽい笑いを浮かべる。彼女の答えに、動揺の表情を浮かべるメリエル。
「口やお尻の穴じゃあねぇ。ちゃあんと、あなたのいやらしい所に精を受けなきゃ、カウントはしないわ」
「そ、そんなっ! 約束が、違う……!」
「あら、そう? 不満なら、別にいいのよ。取り引きはなしでもね」
 思わず詰るような口調になったメリエルの叫びに、軽く肩をすくめてクリシーヌがあっさりとそう応じる。僅かに口篭り、恐怖に表情を引きつらせるメリエル。
「そ、それは……分かりました。どうぞ、私を……犯して、ください」
「そうそう、そうやって素直になればいいのよ。さぁ、あなたたち。存分に犯しなさい」
「お、お願いっ、口やお尻はもう許してっ。私の、私のいやらしい所を犯してくださいっ」
 羞恥に頬を真っ赤に染め、メリエルが近寄ってくる男へとそう叫ぶ。くすっと笑うとクリシーヌは軽く両手を広げて肩をすくめてみせた。顔を見合わせ、男たちが気の進まなさそうな表情を浮かべる。
「どうしたの? あなたたち、まさか、私の命令が聞けないとでも?」
 クリシーヌが顔を見合わせる男たちへと僅かに尖った声を向け、男たちが慌てて首を横に振る。本来、メイドに下男へと命令する権利などないのだが、クリシーヌはミレニアの側近だ。彼女の命令に逆らうことは、即ちミレニアの命令に逆らうことだと下男たちが考えるのも無理はない。そして、この屋敷にあえてミレニアに逆らおうと考えるほど度胸の有る--あるいは無謀な--人間など何人も居ない。
 クリシーヌと下男たちのやり取りに、メリエルが不安そうな表情を浮かべる。そして、彼女が感じた不安を裏付けるように、二人の男たちが同時にメリエルの前後に立った。恐怖に表情を歪めたメリエルが叫び声をあげようと口を開きかけるが、そこへと男の男根が強引にねじこまれる。
「むぐうぅぅっ! むぐぁっ!? むごぉ、おごっ、ふごおおぉぉっ!」
 口を塞がれ、目を白黒させるメリエルの肛門へと男根がねじこまれる。既に二回そこで男のものを受け入れているとはいえ、そう簡単に慣れるものでもない。痛みと嫌悪感、そして、そこをいくら犯されても解放に繋がらないという恐怖とがないまぜになった叫びをメリエルが上げる。もっとも、口を塞がれている状態ではその叫びはくぐもった呻きにしかならないのだが。
「うぐっ、むぐうぅっ、ふごおおぉっ! おぐっ、んっ、んぐっ、んぐぐぐぐ……!」
 前後から男たちに犯され、目から涙をこぼしてメリエルが不明瞭な喘ぎを上げる。メリエルが別の男たちに犯されている間に休んでいたとはいえ、彼らも既に一度精を放っているからそう簡単には射精には至らない。彼らが精を放つまでに客観的にもそれなりの時間がかかったが、犯されるメリエルにとってはそれ以上に長く感じられた筈だ。
「げほっ、げほげほげほっ……。お、お願い、少し、休ませて。死んじゃう……」
 口の中に男の精を放たれ、激しく咳き込みながら吐き出したメリエルが、唇から白いものを滴らしながらそう哀願の声を上げる。くすっと笑うと、クリシーヌは軽く手を振って男たちに合図をした。メリエルの元から男たちが離れ、入れ代わりに二人の男たちが彼女の背後に回る。
「あ……いや、お願い、だから、少し、休ませて……」
 弱々しいメリエルの哀願にぎゅっと表情を歪めながらも、男の一人がメリエルの足を掴んでぐいっと持ち上げ、肩に乗せる。丁度、犬がおしっこをする時のように片足を高々と上げた体勢を取らされたメリエルが、動揺の声を上げる。
「きゃうっ。な、何、何をするの……? アッ、アッヒイイイイイイイィィッ!?」
 秘所と肛門とに同時に男のものを挿入され、メリエルが甲高い悲鳴をあげる。
「あひっ、ひいっ、あひいぃっ! 中っ、中でっ、こすれてるっ! こんなの、初めてっ、あひいいぃっ! ふわっ、あっ、ああっ、変に、変になるっ、あぁんっ、あっ、あひいいいぃっ!」
 目を大きく見開き、よだれを撒き散らしながら激しくメリエルが頭を振り立てる。錯乱気味の彼女の叫びに、楽しそうな笑い声をクリシーヌが上げた。
「あはははははっ。どう? 嬉しいでしょう? あなた、とんでもない淫乱ですものねぇ。
 あはっ、あははははっ。ねぇ、前と後ろ、同時に犯される気分はど~お?」
「ひいっ、きいっ、きひいいぃっ! 狂うっ、狂っちゃうっ、あひいいいぃっ! やめて、壊れるっ、ひいっ、あっ、ああっ、ああぁっ! 許して、こんなの、いやっ、あっ、ああっ、ああああ---っ!」
 壁にもたれかかり、身体を折ってクリシーヌがメリエルへと嘲笑を放つ。その嘲笑もほとんど耳に入っていないような状態で、全身にびっしょりと汗を浮かべ、男たちが腰を動かすたびに甲高い悲鳴を上げてメリエルが身悶える。
「うあっ、あんっ、あぁんっ! こ、こんなの、ふわっ、駄目っ、ひいぃっ、頭が、白く……きひいいいぃっ!」
 ぎしっ、ぎしっと断頭台が軋んだ音を立て、乳房を震わせながらメリエルがうわごとじみた悲鳴をあげる。休む間もなくおかされつづけたメリエルの瞳にはぼんやりと霞がかかり、既にまともな思考力など残されてはいないだろう。体力の消耗もかなりのものの筈で、現に首の動きも最初の頃の激しく振り立てるようなものからゆらゆらと力なく揺れるような感じへと変わってきている。しかし、彼女の右手はまるでそれ自体に意思が有るかのように、しっかりとロープを握り締め続けていた。
「中で、中でこすれてるっ、うあああああぁっ。熱い、熱いの、ふわっ、あんっ、あぁんっ、あっ、ああっ、狂う、狂っちゃう……ひっ!? あひいいいいいいぃぃっ!!」
 うわごとのような悲鳴を上げ、弱々しく首を振るメリエルの胎内へと、男たちが精を放つ。胎内へと熱いものが注ぎ込まれる感触に、弾かれたように顔を上げ、口と目とを大きく開いて甲高い絶叫を上げるメリエル。ぶるぶるぶるっと全身に細波のように痙攣が走り、硬直する。
「ひ、ひいいぃぃぃぃ……」
 掠れた悲鳴がメリエルの口から漏れ、がっくりと首を折ってうなだれる。男たちが離れた下半身は力なく投げ出され、ひくっ、ひくっと小刻みな痙攣を繰り返していた。肛門と秘所からどろりと白いものを垂れ流した無残な状態だ。
「あら、それでもロープは離さないんだ。執念ねぇ。ま、いいわ、なら続けるだけのことだもの」
「う、あ……お願い、少し、少しでいいの、休ませて……こ、これ以上されたら、アタシ、死んじゃう……」
 まともな神経の持ち主なら眉をひそめずにはいられないメリエルの無残な姿に、しかし、クリシーヌは軽く肩をすくめ、笑いすら交えて続行を宣言する。彼女の言葉に弱々しく頭を上げ、メリエルが哀願の声を上げるが、もちろんクリシーヌはそんな哀願に耳を貸したりはしない。
「あなたが死ぬのは自業自得というものでしょう? 泣きごとを言う力があるなら、しっかりロープを握っていることね。まだ三人目が終わった所なんだから」
「もう、ゆ、許して……お願い……死ぬのは、嫌……助けて、お願い……」
「死にたくなければ、頑張ることね。
 さて、じゃ、次は、三ヶ所同時に犯してあげるわ。嬉しいでしょう? 淫乱なあなたですもの、ねぇ」
「そ、んな……やめて、ホントに、死んじゃう……」
「言ったでしょう? あなたは元々、殺されて当然なの。死なないように配慮なんて、する必要はないわ。さ、はじめなさい」
 ひらひらっと右手を振ると、クリシーヌが男たちを急き立てる。顔を見合わせ、気のすすまなさそうな表情を浮かべて男たちがメリエルの周囲を取り囲んだ。
「イ、イヤ……やめて……いやぁ……っ!」
 恐怖に怯えるメリエルの口、肛門、そして秘所へと男たちの男根が突き立てられる。身をよじり、逃れようとメリエルがもがくがその動きはあまりにも弱々しい。抵抗とも呼べないような微かな抵抗だ。
「むぐっ、うぐっ、ぐぐっ、むぐぅっ! うぐっ、むぐ、むぐぅ……」
 すぐに、陵辱されるメリエルの、弱々しく哀れな呻き声が響き始めた……。

「……呆れた。三ヶ所全部、五人の男に犯されたくせにまだロープを離さないなんてね。意識も体力も、途中で尽きると思ったんだけど」
「こん……そ…終…り…しょ…助、け…早……も、う……」
 クリシーヌが呆れたように肩をすくめ、がっくりと顔を伏せたまま、切れ切れに掠れた声でメリエルが哀願の声を上げる。顔には白いものが飛び散り、ぐったりと投げ出された二本の足の間からは今も白いものがあふれ出して床の上に広がっている。瞳からは焦点が消え、口からはとめどなくよだれがあふれていた。肉体的にも精神的にも、気絶する寸前、いや、既に半分以上は気絶している。生への執着が、細いギリギリの糸となって彼女を支えているのだ。軽く肩をすくめるとクリシーヌは脇のテーブルの上から燭台を取り上げ、短い蝋燭に火を点す。だが、がっくりと顔を伏せたままのメリエルはその動きには気付かない。
「頑張ったあなたには、御褒美を上げないとね」
「早く……手が……痺れ、て……っ!?」
 くすくすと笑いながらクリシーヌがメリエルの元へと歩み寄る。解放される、と、そう思っていたメリエルの顔に驚愕の表情が浮かび、びくんっと身体が跳ねた。
「ひいいいぃっ!? 熱っ、アッ、キャアアアァッ! な、何……!? きひいいいぃっ!」
「どう? 胸を蝋燭であぶられるのは?」
 下半身に力が入らず、だらんと投げ出された状態とは言え、メリエルの首は断頭台に固定されている。当然、彼女の上半身は斜めになっていて、二つの乳房も宙に垂れ下がった状態になっていたわけだが、クリシーヌはその乳房に火が当たるように燭台を置いたのだ。二股に分かれた燭台に刺された二本の蝋燭が、メリエルの左右の乳房をあぶる。
「ひいっ、火っ、熱いっ、あっ、アヒイイィッ! 何で、何でぇっ!?」
「あら、当然でしょう? あなたは、領主暗殺を企んだ重罪人ですもの」
「だって、許してくれるって……ひいいぃっ! 熱いっ、火っ、火がっ、ひいいいぃっ! だ、騙したの!? あっ、ああああ---っ!!」
「へぇ、力尽きかけてて、ろくな反応は出来ないって思ってたんだけど、結構いい悶え方じゃない。
 うふふっ、いいわよぉ、その表情かお。苦痛、恐怖、そして信じていたものに裏切られた絶望……うふふ、ふふっ、ぞくぞくするわ」
 炎で胸をあぶられる熱さと痛みに、弾かれたように顔を上げ、悲鳴を上げて身悶えるメリエル。彼女の詰るような言葉を聞き流し、クリシーヌが笑う。
「ひいっ、熱いっ、イヤアアァッ! 助けてっ、助けてよぉっ! 約束、したのに……ひいいぃっ!」
「あはっ、あはははははっ。馬鹿ねぇ。そんな約束、本気にしてたの? あなたの運命は、最初から決まっているの。ここで死ぬってね。
 あなたたち、彼女の腰を持ち上げて、足を開かせるのよ。で、その蝋燭で彼女の股間をあぶるの。いいわね?」
 涙をぼろぼろと流し、泣きわめくメリエルの正面に回り込み、屈み込んで顔の高さを合わせるとクリシーヌが楽しそうに笑う。憮然とした顔を見合わせる下男たちへと指示を出すと、クリシーヌはメリエルの前髪を掴んだ。
「熱いでしょう? でも、あそこをあぶられるのは胸よりももっと熱いわ。さあ、耐えられるかしら?」
「ひいいいぃっ、いやっ、嫌いやっ、やめてぇっ。助けてくれるって、言ったじゃないっ! やめてぇぇっ! ヒギッ!? キヒイイイイイイイイイイィィィィ-----ッ!!」
 前髪を掴まれたまま泣きわめくメリエル。下男たちの手によって彼女の腰が持ち上げられ、足が割り開かれ、散々犯されてだらしなく開ききった秘所の粘膜へと蝋燭の炎がかざされる。甲高い悲鳴を上げて激しくメリエルが顔を振り立て、ぶちぶちぶちっと掴まれていた前髪が根元から抜ける。
「熱いっ、熱い熱い熱いっ! 死ぬっ、死んじゃうぅぅぅ! ヒギイイイイィッ!」
「熱いわよねぇ。苦しいわよねぇ。さあ、手を離しなさい。そうすれば、すぐに楽になれるわ」
「いやっ、死ぬのはイヤッ、ひいっ、死ぬのはイヤッ、ああっ、熱いっ、きいっ、きひいいいぃっ! 死ぬのは嫌アアアアアアアァッ! ひいいいいいいぃっ!」
 最後に残った力を振り絞るように、炎から逃れようと身体をのたうたせ、絶叫を上げるメリエル。涙と鼻水、よだれ、更にはぶちまけられた男の精液でベトベトの顔を苦悶に歪め、泣き叫ぶ。
「きひいいいぃっ! 熱いっ、ああっ、何でっ!? 言うこと、聞いたのにっ、ああっ、あっ、あひいいいぃっ! 助けて、くれるって、約束したのにっ! きいっ、きひいいいぃっ!」
「往生際が悪いわねぇ。そうやって泣き叫んでいれば、助けてもらえるとでも思っているの? あなたはここで死ぬ運命なの。さっさと手を離して、死んじゃいなさい」
「嫌ぁっ、イヤイヤイヤっ、嘘つきっ、ああっ、嘘つきぃっ! きひいいいぃっ、熱いっ、ああっ、ひいっ、許さないっ、ああっ、絶対、許さないっ、ひいっ、あっ、熱いぃっ! 呪って、ああっ、呪ってやるっ、ああっ、ひいっ、きひいいいぃっ! 助けて、くれるって、言ったのにっ、ああっ、ひいぃっ、火っ、あっ、熱いっ、ああっ、死んでも、許さないっ、きひいいいいぃっ!!」
 乳房と秘所とを焼き焦がされ、熱さと痛み、そして絶望で気が狂いそうになりながら、メリエルが呪いの言葉を放つ。ぎゅっと眉をしかめると、クリシーヌは立ち上がって腰の剣を抜いた。
「呪うなら、自分の愚かさを呪うことね」
「イッ、イッヤアアアアアアアア-----ッ!!!」
 クリシーヌの剣が一閃し、メリエルが懸命に握り締めていたロープを断ち切る。恐怖と絶望に満ちた断末魔の絶叫を上げ、表情をこわばらせるメリエル。
 勢いよく落下した刃がメリエルの首をすっぱりと切り飛ばす。恐怖と絶望に歪んだ表情のままメリエルの首がごろごろっと床を転がり、胴体の切断面から勢いよく鮮血が噴き出してクリシーヌの足を濡らす。ふんっと小さく鼻を鳴らすと、クリシーヌは足元に転がってきたメリエルの生首を蹴り飛ばした。
「呪い、ですって……? 馬鹿馬鹿しい」
 自分に言い聞かせるような感じで小さくそう呟き、クリシーヌは軽く首を振った。
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