セーラーマーキュリーの受難


「もう逃げられないわよ! クンツァイト!」
 洞窟の中、大きく丸い部屋のような形になった場所へと駆け込んできたセーラームーンがそう叫ぶ。彼女の後に従い、他の四人のセーラー戦士たちもその場へと姿を現した。洞窟はここで行きどまりになっており、彼女たちが居る入り口とは反対側の壁際に四天王最後の一人、クンツァイトを追いつめた格好になっていた。だが、じりじりと間合いを詰めてくる五人のセーラー戦士たちを振り返り、クンツァイトがにやりと笑う。
「逃げる? 違うな。私は、誘い込んだのだよ。お前たちを、ここへ!」
「っ! いけない! みんな、逃げて!」
 クンツァイトの叫びと、マーキュリーの警告が交錯する。次の瞬間、クンツァイトの立つ部分を除いた床がいっせいに崩れ落ちた。悲鳴を上げながら五人のセーラー戦士たちが深い闇に満たされた穴へと落下していくのを、クンツァイトが愉快そうな笑みを浮かべて見送る。
「くっくっく、他愛のない……。せいぜい、薔薇妖魔の姉妹たちと遊んでくれたまえ。くっくっくっくっく、はぁっはっはっはっは」
 高らかに笑いながら、クンツァイトが洞窟の壁に手を触れる。ずずっと、岩壁が横に動いて隠し通路があらわになった。通路の奥へとクンツァイトが姿を消し、後にはただ、静寂だけが残された……。

「ぐっ」
 受け身も満足に取れずに床へと叩きつけられ、セーラーマーキュリーは苦しげな呻きを漏らした。落下の最中、既に何度か岩に身体を叩きつけられている。まっすぐな円筒状ではなく、途中から穴が枝分かれしていたらしい。他の四人がどうなったかは分からないが、少なくとも彼女が独り分断されてしまったのは確かだった。
「ホホホ……。水の属性の娘ではないか。どうやら、当たりクジは私が引いたようだねぇ」
「だ、誰!?」
 全身に走るずきずきという痛みを堪え、マーキュリーは立ち上がった。洞窟の床はむき出しの岩ではなく、植物の蔓のような緑色のものでびっしりと覆われている。これが、クッションのような働きをしてくれたらしい。そうでなければ、落下してきた距離から考えてまず間違いなく即死していただろう。
 そして、びっしりと床を覆った蔓がひときわ高く盛り上がった所に、一人の女が立っていた。女、といっても、もちろん人間ではない。肌の色は床を覆う蔓と同じく緑色だし、人間であれば髪に当たる部分は薔薇の花のような形になっている。
「薔薇妖魔五姉妹の一人、ローゼさ」
 薔薇妖魔がそう名を告げると同時に、大きく床がうねった。正確には、床の上を覆った蔓がいっせいに動き出したのだ。足元をすくわれ、体勢を崩したマーキュリーへと、薔薇妖魔の足元から鋭い刺のびっしりと生えた緑色の蔓が四本、蛇のようにうねくりながら勢いよく伸びた。かわそうにも、足元をすくわれて体勢を崩している状態では避けようもない。びしっ、びしっと、勢いよく両手両足に刺の生えた蔓が絡みつく。
「くっ、ああぁっ」
 刺蔓に絡みつかれ、手足に走った激痛にマーキュリーの表情が歪む。しかし、彼女の手足からは血の一滴も流れ出さない。それを見て、軽く薔薇妖魔が首を傾げた。
「おや、おかしな力場を張っているようだねぇ。私の刺は、その気になれば鉄をも切り裂く。むき出しの肌と肉など、たやすく引き裂けると思ったが。
 とはいえ、その表情から察するに、完全に防げているわけでも、ないようだがねぇ」
「うっ、くぅっ」
 ぎしぎしと、絡みついた刺蔓がマーキュリーの手足を締め上げる。苦痛に表情を歪め、マーキュリーが苦しげな呻きを漏らした。薔薇妖魔の言葉は正しく、一見無防備に見えるむき出しの部分も、実はしっかりと目に見えない幕に覆われている。決して、防御力がないわけではない。だから、肌の上にびっしりと刺の生えた蔓が巻きついていても流血はしていないのだが、痛みはかなりのものだ。
「ふふふ、さて、いつまでもつか……試してみようかい」
 薔薇妖魔の言葉と同時に、マーキュリーの手足に絡みついた刺蔓がうねくりながら手足を引っ張る。マーキュリーも手足に力を込めて何とか対抗しようとするのだが、細さからは想像もつかないほど蔓の力は強い。たちまちのうちに、肩幅よりもやや広いぐらいに両足を広げ、両腕をそろえて頭上に伸ばす、丁度『人』の字の形に蔓によって身体を拘束されてしまう。
「さあ、いい声で泣いておくれよ」
「きゃあああぁっ!」
 嘲笑うように薔薇妖魔がそう言うと、その足元から新たな刺蔓が延び上がった。拘束されたマーキュリーの胸元へと、一直線にその刺蔓が宙を走り、鞭のようにしなって打ち据える。胸に走った激痛に、マーキュリーが顔をのけぞらせた。
「あぐっ、あっ、ああっ。くっ、あっ、きゃあああああっ」
 びしっ、びしっと、刺蔓が容赦なくマーキュリーの身体を打ち据える。全身を覆う力場のおかげで、身にまとったセーラー服が裂けることもなく、肌が破れることもない。だが、痛みと衝撃までは、完全には防げない。唯一自由になる首を振り、マーキュリーが苦痛の叫びを上げる。
「くくく……いい顔だよ。ぞくぞくする」
「はぁ……はぁ……くっ、ううぅっ!」
 いったん刺蔓を動かすのを止め、ぺろりと唇を舐めながら薔薇妖魔が呟く。反論の言葉を口にのせることも出来ず、うなだれて荒い息を吐くマーキュリー。ぎりりっと、彼女の足と手を絡みついた刺蔓が締め上げ、マーキュリーに苦悶の声を上げさせた。骨が砕けるかと思うほどの、激痛。力場を、刺の先端がついに貫通したのか、肌が破れてつうっと僅かに血が滴った。蔓にその血を吸わせた薔薇妖魔が陶然とした表情を浮かべる。
「ああ、やっぱり、お前の血は美味しいよ。この血を吸えば、私はもっと力を得られるだろう。そして、お前の身体に私の種を植えつければ、私の子供たちはきっと美しく咲き誇ることになるだろうねぇ」
「くっ、あっ、あああーーっ!」
 蔓の上に滴るマーキュリーの血。まだ僅かでしかないその血を少し残念そうに眺め、薔薇妖魔がマーキュリーの手足を締めつける刺蔓に更に力を込めた。マーキュリーが苦痛の叫びを上げる。しかし、力場は未だ健在で、薔薇妖魔が望むように鮮血がほとばしるようなことにはならない。ちっと、いらだったような舌打ちを一つ打つと、薔薇妖魔は更にマーキュリーの身体めがけて刺蔓を鞭のように振るった。溜まらずに、マーキュリーが甲高い悲鳴を上げる。
「ああっ! っ! ひっ! あっ、あああーーっ!」
「しぶとい娘だねぇ! どうせ、お前はここで死ぬんだよ。強情はらずに、さっさとあきらめるんだ。そうすれば、これ以上苦しまずに済むんだよ!」
 薔薇妖魔の叫びと同時に、ざわり、と、薔薇妖魔の足元で蔓がうねり、更に二本の刺の生えた蔓がマーキュリーに襲いかかった。三本の刺蔓による、休みない連打に、マーキュリーが悲痛な叫びを上げる。胸、腹、背中、腕、足、頬。身体中のいたるところへと、刺の生えた鞭が襲いかかり、打ち据える。執拗な連打の前に、時折、耐えきれずに肌やセーラー服が裂けるようになった。だが、いずれも浅く、せいぜい血がにじむ程度の傷でしかないから、薔薇妖魔の不満は解消されない。いったん、三本の刺蔓による連打を止めると、薔薇妖魔は舌打ちをした。
「ちっ。本当に、しぶといねぇ」
「わ、私は、みんなを、信じてるから。あなたの、思い通りになんか、ならないわ……!」
 舌打ちをする薔薇妖魔へと、苦しげな息を吐きながらマーキュリーがそう応じる。あちこちに傷を受け、血をにじませながらも、毅然とした態度は崩していない。ちっと、もう一度いまいましそうに舌打ちをすると、薔薇妖魔がいったん刺蔓を引っ込める。入れ代わりに、彼女の足元から刺の付いていない蔓が二本、するするっと伸びるとマーキュリーの身体に絡みついた。
「くっ、うっ、うあうぅっ」
 ぎりぎりっと、胴体を締め上げられてマーキュリーが苦しげに呻く。二重に巻きついて肋骨が砕けんばかりに強く胴体を締め上げつつ、二本の蔓の先端はくるりと彼女の二つの膨らみの根元に巻きつき、服の上からでもはっきりと分かるほど絞り出している。
「ふふふっ、いやらしい形になったじゃないか。さて、これを受けても、まだ強情を張れるかい?」
「な、何を……きゃあああああああ--っ!」
 バリバリバリっと、マーキュリーの身体に絡みついた蔓が電撃を放つ。薔薇妖魔の言葉にいぶかしげに問い返しかけたマーキュリーが、悲鳴を上げて顔をのけぞらせた。両腕、両足を拘束されている中で、限界まで背中が弓なりに反る。全身を衝撃がかけ巡り、脳裏が真っ白に染まる。
「あ……うあぁ……」
 電撃が止むと同時に、がっくりとマーキュリーの膝が折れた。両腕を締め上げる蔓に吊るされるような格好になり、うなだれて曖昧な呻きを漏らす。ぼんやりと、瞳に靄がかかったようになっていた。
「くくく、これは、流石に効いたみたいだねぇ。さて、それじゃ、もう一度、行くよ?」
「や、やめ……きゃああああああああ----っ!!」
 再び、全身を貫く強烈な電撃。弾かれたように全身を震わせ、背を反らせ、爪先だちになったマーキュリーが絶叫を上げながらぶるぶると身体を痙攣させる。ぴしっと、胸元を飾るリボンをまとめるブローチにヒビが入った。電撃が止み、がっくりとうなだれたマーキュリーの顎に薔薇妖魔の足元から伸びた蔓が掛かり、あおむかせる。半ば失神したようになっている彼女へと、薔薇妖魔は満足そうな笑みを向けた。
「そろそろ限界だろう? 強情張らずに、変身を解きなよ。三度目は、食らいたくないだろう?」
「う、ぁ……だ、誰、が……きゃあああああ----っ!!」
 薔薇妖魔の言葉に、気力を振り絞って首を振るマーキュリー。その身体を、容赦なく電撃が貫いた。弓なりに身体をのけぞらせ、絶叫を上げるマーキュリーの胸元で、ついに耐えきれなくなったのかブローチが音を立てて砕け散る。しゅるっと、一瞬マーキュリーの全身がリボンのような物に覆われ、次の瞬間には、セーラー戦士への変身が解けて変身前に着ていたごく普通の衣服をまとった姿に変わった。身を守っていた力場も消え、手足に絡みついていた刺蔓が肌と肉とを引き裂き、鮮血をほとばしらせる。
「うあっ、あ、く、ああぁっ」
 電撃が止んでも、手足の痛みにマーキュリーの口から苦痛の声が漏れる。彼女の手足からあふれる鮮血を蔓に吸い込ませ、薔薇妖魔がうっとりとしたような表情を浮かべた。
「ふふふ、美味しいよ、お前の血は。もう少し、味合わせてもらおうかねぇ」
 薔薇妖魔の呟きに応じるように、彼女の足元から数本の蔓が頭をもたげる。これもやはり刺が生えている蔓なのだが、今まで使っていたものと比べると刺の長さは短めだし、数も少ない。
「やり過ぎて、殺してしまうと苗床に使えなくなるからねぇ」
 薔薇妖魔の呟きと同時に、刺蔓がしゅるりと伸びる。服の裾や襟元、袖口などに蔓が潜り込み、普通の素材でしかない衣服をあっさりと内側から引き裂いた。なおも身体にまとわりつく服の残骸を取りのけ、短い刺をまばらに生やした蔓が裸に剥かれたマーキュリーの身体に絡みつく。
「くっううぅっ。うあっ、あっ、ああーーっ」
 ぎちぎちと刺蔓に締め上げられ、マーキュリーが苦痛の表情を浮かべて顔をのけぞらせる。全身に無数の浅い傷が刻み込まれ、あふれた血が斑に裸身を彩る。
「ひっ、ぐっ、あぁっ。くあっ、ひいいぃっ」
 乳房の根元からぐるりと蔓が巻きつき、絞り上げる。短い刺が敏感な膨らみに食い込み、血を滴らせる。決して深い傷ではなく、出血量も多いとはいえないが、場所が場所だけに痛みは激しい。目を見開き、ぱくぱくと口を開け閉めしながら身悶えるマーキュリー。しばらくそうやってマーキュリーのことを嬲っていた薔薇妖魔が、くすりと笑うと右手を軽く掲げた。緑色をしていた他の蔓とは異なり、白っぽい蔓が三本、彼女の足元から伸びる。これには刺は生えていないが、代わりに先端に穴が開いていて白っぽい液体が僅かに滴っていた。
「ふふふ、さて、それじゃ、種を植えさせてもらおうかねぇ」
 薔薇妖魔が楽しげにそう宣言し、三本の白い蔓のうち一本が地を這うようにマーキュリーへと迫る。全身を刺蔓に絡みつかれたマーキュリーには、逃れようがない。表情を引きつらせる彼女の足元でほぼ垂直に蔓が進路を変え、左右に割り開かれた足の間へと滑り込む。
「ひぎいいぃっ!」
 どすっと、勢いよく蔓がマーキュリーの秘所へと突き刺さる。悲鳴を上げて顔をのけぞらせるマーキュリー。うねくりながら、更に奥深くへと蔓が潜り込んで行き、処女穴をえぐられる激痛にマーキュリーががくがくと全身を震わせる。
「ふふふ、ほぅら、もう一本」
「ひゃ、ひゃめ、て……あがああぁぁっ!」
 二本目の蔓が、最初の蔓と同じように地面を這うように走り、尻肉を押し分けて肛門へと潜り込む。身体をまっぷたつに引き裂かれたような激痛に、濁った悲鳴を上げて背を反らせるマーキュリー。彼女の苦悶にはまったくかまわずに、秘所と肛門とを貫いた二本の蔓がうねくり、奥へ奥へと潜り込んで行く。
「はっ、がっ、ぎひぃっ。ひっ、裂け、るっ、あぎいいぃっ」
 普段の物静かな雰囲気からは想像も出来ないような、濁った悲鳴を上げてマーキュリーが泣き叫ぶ。目はまんまるに見開かれ、少しでも苦痛から逃れようと爪先立ちになった足ががくがくと震える。弓なりに反らせた身体を痙攣させ、涙とよだれとを垂流しにしてマーキュリーが身悶える。
「ふふっ、はははははっ。セーラー戦士といったところで、しょせんは女、しかも子供なんだねぇ。さっきまでの威勢は、どうしたんだい?」
「ひぎゃっ、ぎゃっ、ひぎいぃっ。駄、目っ、お願いっ、抜いてぇっ。あぐああぁっ」
 嘲笑を浮かべつつ、二本の蔓でマーキュリーを犯し、嬲る薔薇妖魔。今までに味わったことのない種類の激痛に、それに応じることも出来ずにマーキュリーが泣きわめき、身悶える。秘所と肛門との間の薄い筋肉ごしに二本の触手がこすれ合うが、快感などかけらも感じない。ただただ痛いだけだ。
「あがっ、はっ、はっ、うぐぐうぅっ、ぎっ、ああああーーっ!」
 苦痛の声を上げ、身悶えるマーキュリー。その胸に、更にきつく刺蔓が巻きつき、揉みしだく。膨らみの先にある乳首へと蔓が触れ、膨らみの中にめり込ませるように強く押す。蔓に生えた刺が柔らかな二つの膨らみに食い込み、肌を裂いて血を滴らせる。乳首を刺に貫かれ、悲痛な叫びを上げてマーキュリーが顔をのけぞらせた。
「さて、三本目だよ」
「や、やめ、て……」
 弱々しいマーキュリーの哀願の声を無視して、ぱちん、と、薔薇妖魔が指を鳴らす。しゅっと一直線に最後に残った三本目の蔓が伸び、大きく開かれていたマーキュリーの口の中へと飛び込んだ。
「むぐぅっ!? むぐっ、うぐぐぅっ」
 口を塞がれたマーキュリーが、目を白黒させる。口の中に飛び込んだ蔓はうねくり、彼女の口を蹂躪しつつ喉の方へと潜り込もうとする。喉の奥を刺激され、嘔吐感を覚えて懸命に口の中から蔓を吐き出そうとするのだが、どんなに顔を振っても蔓は口の中から出て行ってはくれない。
「ふぐっ、ぐっ、むぐあぁっ。むぐっ、むぐぐっ、うぐぅっ」
 刺のついた蔓に全身を絡みつかれ、身動きすらままならないマーキュリー。全身を血で彩った彼女の、秘所、肛門、口の三ヶ所を蔓が傍若無人に犯し嬲る。ポロポロと涙をこぼしながらマーキュリーが身悶える姿を、楽しげな笑いを浮かべて薔薇妖魔が眺めている。
「ふふふ、さて、そろそろ、終わりにしようか」
「むがっ、むががあぁっ!」
 どれくらいの時間がたったのか、苦痛と恥辱で朦朧としかけたマーキュリーの脳裏に、薔薇妖魔の残酷な言葉がしみとおる。本能的な恐怖に駆られ、首を左右に振ってくぐもった叫びをあげるマーキュリー。その姿に楽しげな笑みを漏らし、薔薇妖魔が指を鳴らす。もぞり、と、彼女の足元で白い蔓の根元が膨れ上がり、その膨らみがすすすっと先端、つまりはマーキュリーの方へと移動して行く。恐怖に目を見開くマーキュリー。
「ふぐうぅあああああああぁぁっ!」
 どくん、と、蔓の先端から大量の液体がほとばしる。三つの穴から大量の液体を注ぎ込まれ、悲痛な叫びと共にマーキュリーが身体を硬直させた。ぶるぶると痙攣する彼女の口と肛門、秘所から、ごぼっと白濁した液体があふれ出す。しゅるりと彼女の全身を拘束していた刺蔓がほどけ、支えを失ったマーキュリーの裸体がどさりと床の上に倒れ込んだ。しかし、ひくひくと全身を痙攣させるばかりで、身体を起こすことすら出来ない。口と股間から三本の蔓が引き抜かれ、だらしなく開ききった三つの穴から白っぽい液体をあふれさせても、その状態は変わらなかった。
「は、ひ……うぅ、ぁ……」
 うつろな呟きを漏らすマーキュリーの身体を、薔薇妖魔の蔓が抱え起こし、洞窟の岩壁へともたれさせる。手足をだらんと弛緩させ、うつろな視線をさまよわせるマーキュリー。薄く笑いを浮かべながら薔薇妖魔が見守る中、ぼこっと、彼女の下腹部の辺りが膨れ上がった。びくんっと、身体を痙攣させ、のろのろとマーキュリーが視線を自分の下腹部へと向ける。
「あ……ああ……あああっ。うあああああぁっ!」
 目を見開き、掠れた悲鳴を上げるマーキュリー。その悲鳴が一気に高まったかと思うと、膨れ上がった彼女の下腹部が内側から弾けた。子供の握り拳ほどの大きさをした緑色の塊が、下腹部の皮膚と肉とを突き破って顔を覗かせる。混乱と痛みに絶叫するマーキュリーの下腹部で緑色の塊はますます大きくなり、先端がほころんだかとおもうと一気に広がって真っ赤な一輪の薔薇の花へと姿を変えた。なおも悲鳴を上げつづけるマーキュリーの胸の谷間が同じようにうごめき、内側から肌を突き破って緑の蕾が姿を現す。
「ぎいいいいぃっ、ぎっ、ぎぎぎぎぎぎっ! うあっ、あああっ、ああああああーーーっ!!」
 全身を襲う激痛に、激しく頭を振ってマーキュリーが絶叫する。首から下は、麻痺したようになっていて指一本動かせない。地面を覆う蔓や背中を預けた岩壁の感触はまったく感じられないのに、肌の下を無数の触手がうごめいているような嫌悪感を伴う激痛だけが全身を包み込んでいた。
「感謝しておくれよ。私の子供たちは、生きた人間しか苗床に出来ないからねぇ。傷を癒したり体力を回復させたりする液体を分泌して、お前の身体が死なないようにしてくれる。老いることも病にかかることもなく、半永久的にお前は生きていられるんだよ。不老不死、というわけさ。嬉しいだろう?」
「あぎぎぎっ、ひあぁっ、ひぎっ、ぎぎぎぎっ。ぎひいいぃいっ!」
 薔薇妖魔の言葉も、マーキュリーの耳には入っていない。脇腹や腕、足からも蕾が突き出し、次々と花開いていく。肉の間に根が延び、内側から皮膚を突き破られ、間断なく全身を貫く激痛に、ただただ獣じみた絶叫を上げることしか出来ない。優に十を越える薔薇の花を全身に咲き乱れさせ、花に半ば埋もれるようになりながらマーキュリーはひたすら悲鳴を上げつづけた……。
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