チェルシーの受難


「っ。まったく、しつこい連中ね……」
 舌打ちしつつ口の中でそう呟くと、チェルシー・ローレックは周囲の気配を探った。敵意を含んだ視線を複数感じる。夜風がざわりと公園の木々を揺らし、雲から顔を覗かせた大きな月が地上を照らす。
「ルミナ! ルリ様をお願い。ここは、私が食いとめる」
 振り返らぬまま、背後へとそう声を掛ける。げっと、名を呼ばれた少年が声を上げた。
「一人で相手をする気かよ!? 俺も……」
「足手まといだっていってんの! いいから、早くルリ様を連れて逃げて! 大技が使えないでしょ!?」
 抗議の声を上げる少年--ルミナへと強い口調で答えると、ふっとチェルシーは唇を綻ばせた。
「あんたに心配されるほど、私は弱くないわ。片付けたらすぐに追いつくから、それまでルリ様をお願い。信頼してあげるんだから、しっかり守ってよね」
「ちっ……! しゃーねーな」
 舌打ちしつつも、ルミナが肯定の返事を返してくる。まだまだ未熟とはいえ、アンダーグラウンドには存在しなかった『風』の属性を持つ彼だ。師兵スーペイが出てこない限りは、そう簡単に負けるようなことはないだろう。そして、基本的に個人主義の師兵が集団で襲ってくる可能性は、比較的低い。目標が、『生命の巫女』ルリの奪還である以上、公司カンパニーの命令で連係を取ってくる可能性も考えられるが、それはあえて意識から追い払う。その可能性を考慮すると、本気で身動きが取れなくなるからだ。
「チェルシーさん!」
 ルリが、不安そうな声を上げる。見えないのを承知で口もとに笑みを浮かべると、肩越しにひらひらっとチェルシーは手を振ってみせた。
「心配は要りません。すぐに片付けて追いつきますよ」
「……ごめんなさい。私が、わがまま言ったから……」
「気にしないでください。私は迷惑だなんて思ってませんし、大体、こんな所でやられるつもりは全然ないんですから」
 意識して軽い口調でそう答えると、チェルシーは意識を引き締めた。相手の第一の目標は、当然ルリだ。彼女がこの場を離れようとすれば追撃が入るのは間違いない。だが、それを許すわけには行かない。さっき拾っておいた小石を右手の中に握り、油断なく気配をうかがう。
 ガサッ。公園の植え込みを鳴らして数人の陰兵が飛び出す。ひゅっと小さなスナップでチェルシーが手の中の小石を投げた。彼女の能力、『重力』の属性の力を受けた小石が銃弾に匹敵する勢いで宙を飛び、空中で陰兵たちを撃墜する。
「さぁ、ここは一歩も通さないわよ!」
 ざわりと膨れあがる殺気に、チェルシーが身構えながら叫ぶ。だが、ゆっくりとした動きで公園に植えられた木の影から姿を現した人影へと視線を向けた途端、彼女の表情がこわばった。
「あ、なた……!?」
「お久し振りですわね、チェルシー姉様?」
 にこやかな笑みを浮かべ、公司の制服を身にまとった少女がそう言った。

「ミ、ミルキー……? ど、どうしてあなたが……?」
 動揺の表情を浮かべて、チェルシーが問いかける。くすっと笑うと、ミルキーが軽く肩をすくめた。
「どうして、は、私の台詞ですわ。何故、公司を裏切ったりしたんです? あなたの裏切りのせいで母は殺され父は冷凍刑……私だって、裏切り者の妹としてどれだけの辛酸を舐めたことか」
 穏やかな口調の中に強烈な敵意を篭め、ミルキーがそう言う。くっと僅かに唇を噛むと、チェルシーは自分の動揺を振り払うようにぶんっと右手を振って叫んだ。
「あなたが公司の手先になって私の邪魔をするって言うなら、倒すまでよ! 妹だって関係ない!」
「それは、私も同じことですわ。公司に逆らう裏切り者は、抹殺します」
 すずやかにミルキーがそう宣言する。ぎゅっと右拳を握るとチェルシーが身構えた。
「あなたも、私と同じ『重力使い』だったわね。でも、実力は私が上だった……勝てると思ってるの!?」
 出来れば、戦いたくないという無意識の思いがあったのか。身構えつつも一気に間合いを詰めようとはせずにチェルシーが叩きつけるように問いを放つ。こちらは身構えようともせず、あっさりとミルキーが答えを返した。
「一対一では、勝ち目はないでしょうね。けれど、師兵には陰兵が付き従うもの」
 ミルキーの言葉に応じるように、木々の影や植え込みの中からばらばらと陰兵たちが姿を現す。六人の陰兵たちに半包囲されながらも、チェルシーの表情にはまだ絶望の色は浮かばない。
「陰兵なんかで、私の相手が勤まるとでも思ってるの? 馬鹿にしないでよね」
「試して、ご覧になりますか?」
 チェルシーの声に、笑いながらミルキーが応じる。ずいっと、陰兵の一人がその言葉が合図だったかのように無造作に正面からチェルシーへと仕掛ける。
「馬鹿に、しないでっ」
 だんっと地面を蹴り、チェルシーが陰兵へと拳を放つ。両腕を交差させるようにして、その一撃を受けとめる陰兵。だが、たとえガードしても、『重力』の能力を使えばそのまま吹き飛ばし、壁なり地面なりに叩きつけて無力化出来る。陰兵などただの雑魚、と、そういう思いがチェルシーの頭の中にはあった。
 まさか、あっさり吹き飛ぶはずの陰兵が、僅かに身体を揺らしただけでもちこたえるとは。
「なっ……!?」
 驚愕に、一瞬チェルシーの動きが止まる。その隙を見逃さずに放たれた陰兵の回し蹴りは辛うじて左腕でガードしたものの、じぃんと腕に嫌なしびれが走った。
「正面からぶつかれば、確かに私はチェルシー姉様には勝てません。けれど、チェルシー姉様の使う『重力』に反対方向の『重力』をぶつけ、相殺するぐらいなら、できるんですよ」
 笑いながら、ミルキーがそう種明かしをしてみせる。ぎりっと奥歯を噛み締め、チェルシーは焦りの表情を浮かべた。能力なしで六人の陰兵を相手に出来るか、と問われれば、正直いって自信がない。師兵から見れば雑魚扱いされる彼らだが、れっきとした戦闘訓練を受けた相手なのだ。一対一ならともかく、多人数を同時に相手にするのは苦しい。
 陰兵たちがいっせいに間合いをつめてくる。くっと呻きを漏らしてチェルシーはそれを迎え撃った。戦闘の陰兵の放つ蹴りを交わし、懐に潜り込みつつ拳を放つ。手ごたえはあったが、拳に込めた能力はやはり相殺されている。一撃必殺とはいかない。
「くぅ……っ!」
 左右から同時に放たれた陰兵の蹴りを腕でブロックしたチェルシーが小さく呻く。攻撃を放った直後の隙を突かれて避けられなかったのだ。蹴りの衝撃に両腕がしびれる。チェルシーがさっき拳を放った陰兵といれ違いになるような形で別の一人が間合いを詰め、チェルシーへと拳を放つ。腹を殴られてチェルシーが身体のバランスを崩した。
「うぁっ」
 バランスを崩したチェルシーの背中を、何時の間にか後ろに回り込んだ陰兵が蹴りつける。小さく悲鳴をあげ、蹴りの衝撃でよろけるチェルシーの頬を、前の陰兵の拳が捉えた。一瞬吹き飛びそうになる意識を懸命につなぎとめ、チェルシーが何とか体勢を立て直そうとする。けれど、完全に多勢に無勢だ。足を払われ、無様に地面へと倒れ込んだチェルシーへと、容赦のない蹴りが何発も叩き込まれる。
「うっ、ぐっ。うぁっ。ぐうぅっ」
 身体を丸め、頭を両腕で抱え込んで少しでも衝撃を和らげようとするチェルシー。ドカッ、ドカッと背中や腹へ重い蹴りを何発も受け、チェルシーの口から呻き声が漏れる。
 陰兵の一人が、チェルシーの髪を掴んで強引に引きずり起こす。散々蹴られ、全身に鈍い痛みが走っていた。骨に異常はなさそうだが、身体のあちこちに青あざが出来ているのは間違いない。
「くうぅぁっ」
 正面の陰兵に蹴られ、チェルシーの身体がぐらりと揺れる。倒れ込みそうになるチェルシーの背中を別の陰兵が蹴り、前につんのめったチェルシーを横からの蹴りが襲う。まるでキャッチボールでもするかのように、陰兵たちはチェルシーの身体を互いの間を行ったりきたりさせていた。抵抗のすべもなく、蹴られ、殴られ、突き飛ばされ、よろよろとよろけながらチェルシーが自分の意思によらない移動をくりかえす。
(ルリ様……すみません)
 リンチとしか呼べないような扱いを受け、全身を鈍い痛みに覆われながら、チェルシーは心の中でそう呟いた。陰兵の放った突き上げるような拳がまともに鳩尾を捉え、かはっと大きく息を吐き出しながらチェルシーは意識を失った。

「っ、う……」
 ずきんと、鈍い痛みに襲われてチェルシーは小さく呻いた。うっすらと目を開け、うなだれていた顔を上げる。身体を動かすと、じゃらり、と、頭上で鎖が鳴る音がした。両手首に大きな鉄のかせをはめられ、両腕を万歳するように上に引き上げられているらしい。気付けば、両足首も短い鎖で床に繋がれている。(挿絵)
「ここ、は……?」
 全身の痛みに顔をしかめながらチェルシーはそう呟いた。コンクリートが剥き出しの、小さな部屋。少なくとも、見覚えのある場所ではない。
「捕まったか……とりあえず、向こうは今すぐ私を殺すつもりはないみたいね」
 全身がずきずきと痛む。ぬるりとした血の感触がした。目の前に落ちかかってきた髪が、血で濡れているのが見える。陰兵たちにリンチを受けた時にどこかを怪我したのだろう。とりあえず、激しい痛みがないからたいした怪我ではないのだろうが。
「あら? 目が覚めたみたいですね」
 がちゃりという音と共に扉が開き、ミルキーが部屋の中へと入ってくる。口をつぐみ、チェルシーは妹のことをにらみつけた。その視線を受けたミルキーがくすくすっと笑う。
「まぁ、怖い顔。でも、チェルシー姉様が悪いんですよ? 『生命の巫女』の護衛という栄誉ある任務を与えられながら、公司を裏切ったりするんですもの。
 さ、チェルシー姉様。巫女の居場所を教えてくださいな。そして、二人で公司に戻りましょう?」
 ゆっくりとチェルシーの前まで移動しながら、ミルキーがそう言う。ふんっとチェルシーは顔を背けた。困ったような表情を浮かべ、ミルキーがチェルシーの顎へと手を掛ける。
「意地を張るのはやめてくださいな。私、チェルシー姉様を痛めつけたりしたくないんです。ね? チェルシー姉様が素直になってくだされば、後は私が悪いようにはしませんから。だって、私……」
 自分の方へと向けさせたチェルシーの唇へと、唐突にミルキーが自分のそれを重ねる。予想外の行動に、大きくチェルシーが目を見開いた。両腕を引き上げられ、半分吊るされた体勢になっている不自由な身体を震わせ、何とか逃れようともがく。
 ミルキーの舌が口の中に入り込み、自分の舌へと絡めてくる。本能的な嫌悪感を感じて、チェルシーは反射的に差し込まれた舌を噛んだ。うぐっと小さく呻いてミルキーが飛びさすり、注ぎ込まれたミルキーの唾液をぺっとチェルシーが吐き出す。
「なっ、何を考えてんのよ、あなたは!?」
「……ひどい」
 嫌悪感に身を震わせ、叫んだチェルシーのことを、口元を右手で覆ったミルキーがじっと見つめる。傷ついたような色が浮かんでいたその瞳に、ぎらっと狂気の光が浮かんだ。
「どうして!?」
 叫びざまに、ミルキーが握った右拳をチェルシーの腹へと叩き込む。かはっと大きく息を吐き出し、チェルシーが目を見開いた。部屋の中央の辺りで拘束されているため、身体をくの字に折って衝撃を逃がす余裕があったのは幸いだった。背中を壁に付けた体勢であれば、今の一撃で内臓破裂を起こしていたかもしれない。それほど、重い一撃だった。
「どうして!? どうして!? どうして分かってくださらないの!?」
 どすっ、どすっと、叫びと同時にミルキーが拳を放つ。腹筋を締め、更に自らの能力でガードしてもなお、内臓が破裂しそうなほどの衝撃がくる。腹を殴られるたびに呻きとも、単に押し出された空気が鳴る音ともつかない声を上げてチェルシーが苦悶に身体を震わせる。
「私がっ、私がっ! どんなにチェルシー姉様のことをっ! 思っているかっ!」
「うぐっ、あっ。がはっ、ぐっ、ぐぅっ」
 身体をくの字に折り、チェルシーが苦痛の声を漏らす。一撃で意識を断ち切る頭へのパンチと異なり、ボディーブローはじわじわと効いてくる。吐き気、めまい、呼吸困難。意識がはっきりしている分、苦痛が鮮やかに味わえる。
 十発を越え、二十発を越えてもミルキーの攻撃は止まらない。瞳に狂気の光を浮かべ、ひたすらにチェルシーの腹を殴りつづける。
「がっはっ」
 大きく開かれたチェルシーの口から、息に混じって真っ赤な鮮血が吐き出される。頭を下げる体勢のため、その吐き出された血を頭から浴びながら、ミルキーはなおも拳を放った。
「ぐぶっ! げほげほげほっ」
 息を一瞬詰まらせ、激しくチェルシーが咳込む。腹に鉛を詰め込まれたような、重い痛み。ごぼっと、再び鮮血の塊を吐き出す。はぁはぁと肩を上下させ、ミルキーがいったん動きを止めた。チェルシーの唇の端からつうっと流れた血の筋へと指を伸ばし、拭う。がっくりとうなだれたチェルシーの顎に手を掛けてあおむかせると、ミルキーは再び唇を重ねた。チェルシーの口の中に残る血を味わうように、彼女の舌が動きまわる。
「チェルシー姉様の血、美味しい……」
 いったん口を離すとうっとりとしたような表情でそう呟き、またミルキーがチェルシーの唇へと自分のそれを重ねる。舌と舌とを絡め、恍惚とした、と形容したくなるような表情を浮かべたミルキーが、不意に表情をこわばらせた。がりっと、チェルシーが舌を噛んだのだ。激昂したミルキーがばしっとチェルシーに平手を放ち、その衝撃で顔を背けたチェルシーが顔を元の向きに戻すなり血の混じった唾をミルキーの顔へと吐きかける。顔を真っ赤に染め、ミルキーが再びチェルシーの腹へと拳を叩き込んだ。大きく目を見開き、息と鮮血を吐き出してチェルシーが苦悶に身体を震わせる。
「このっ、このっ、このぉっ」
 どすっどすっどすっと、ミルキーが拳を放つ。その拳を腹に受けるたびに苦痛の呻きをあげ、咳込むチェルシー。このまま、殴り殺されるかもしれない、と、そう思いつつ、チェルシーの口から哀願の声は漏れない。強い意志を秘めた瞳で、狂ったようにボディーブローを放ちつづける妹のことをにらんでいる。
「がはっ。ぐ、ぐぅ……ぐぶっ」
 もう、何十発の拳が放たれただろう。血を吐き、苦悶にのたうちながらもチェルシーは許しを乞おうとはしない。意識はしょっちゅう途切れ、時折腹を殴られる衝撃で覚醒する。ひたすら、それのくり返しだ。拳に走る鈍い痛みに、やっとミルキーが動きを止めた時、チェルシーは完全に意識を失ってぐったりとしていた。
「ふふ……うふふふふ。そうよね……簡単に人に屈服するチェルシー姉様じゃ、ないわよね。間違った道を歩いているんだもの、正しい道に引き戻すためには、多少の荒療治は、しかたないわよね……」
 ぐったりとうなだれている姉へと視線を向け、ミルキーが低く笑った。

 ばしゃりと、気絶したチェルシーへと水が浴びせられる。小さく呻いて、のろのろとチェルシーが顔を上げた。口の中に鉄の味が広がり、腹に重い痛みが残っている。
「う、うう……うあぁっ!?」
 呻きながら、小さく頭を左右に振ったチェルシーが悲鳴を上げて顔をのけぞらせた。腹の辺りの服がぱっくりと裂け、肌が破れて血を滴らせる。
「うふふ。さ、チェルシー姉様。巫女の居場所を私に教えてくださいな。さもないと私、もっとチェルシー姉様に酷いことをしなくちゃいけなくなりますわ」
 刺の生えた凶悪な鞭を手に、ミルキーが笑う。ぎりっと奥歯を噛み締め、無言でチェルシーが妹のことをにらみつけた。ふぅっと吐息を吐いてミルキーが鞭を振り上げる。
「く、うっ。うぁっ」
 鞭が風を切る音、肉を打つ音、そして、チェルシーの口から漏れる微かな苦鳴。連続してそれらの音が何度も響き、チェルシーの服がズタズタに切り裂かれていく。肌のあちこちから鮮血を滴らせ、チェルシーが荒い息を吐く。
「うふふ、チェルシー姉様。私、能力のコントロール、上手くなったんですよ?」
 ミルキーが笑いながら手首をひねる。くんっと鞭が命有るもののようにうねり、チェルシーの身体を回り込むようにして背中を打つ。つっと小さく呻いてチェルシーが首をのけぞらせた。ミルキーが手首を小さくひねるたびに鞭がうねり、チェルシーの服を引き裂いていく。
(重力を制御して、鞭を操ってる……? そんなの、能力の限界を越えるはず……!)
 確かに、重力の属性を使えばものの『落ちる』方向を制御できる。けれど、鞭を自由に操れるほど細かな制御は出来ないはずだ。元々、自分の身体から離れた場所で重力を発生させるのは難しい。
 チェルシーの服が引き裂かれ、ぼろ布となって床に散らばる。唇を笑みの形に歪めてミルキーがうなだれているチェルシーの元へと歩み寄った。意識して無傷で残しておいた下着のラインへとつうっと指を這わせる。
「可愛い下着を使ってるんですね、チェルシー姉様。ちょっと、色気が有りませんけど」
「っ、う、やめなさいよっ」
 ぞわぞわと背筋に寒気を感じてチェルシーが身をよじる。くすくすと笑いながら、ミルキーがチェルシーの首筋に唇を押し当てた。
「チェルシー姉様が、私のお願いを聞いてくださらないんですもの。私だけがお願いを聞くわけにはいかないでしょう? 『生命の巫女』の居場所を教えてくれれば、私もこれ以上酷いことしなくて済むんですけど」
「……っ!」
 両腕を頭上へと引き上げられ、両足も固定された体勢から、チェルシーがそれでも強引に身体でミルキーの身体を押す。密着した体勢から僅かによろけたミルキーが、傷ついたような光を瞳に浮かべて溜め息をついた。
「本当に、チェルシー姉様ったら強情なんですね……。しかた、ないですわね」
 そう言って、ミルキーが壁のボタンを押す。部屋の扉が開き、二人の陰兵たちが部屋の中へと三角木馬を運び込んでくる。その木馬をチェルシーの目の前に置くと、陰兵たちがチェルシーの足首の鎖を外した。自由になった足で蹴りを放とうかと一瞬考えたが、その暇もなく陰兵に足にしがみつかれ、チェルシーはぎゅっと唇を噛み締めた。
 二人の陰兵が、それぞれチェルシーの足を抱えて持ち上げる。どさっと、鋭く尖った木馬にまたがされてチェルシーの口から小さな呻きが漏れた。
 ずりずりと、ミルキーが木馬を押して位置を調整する。そんなことをしなくても、元々余裕のあった鎖はたるんでいるのだから、かんぐろうと思えば木馬の頂でチェルシーの股間をこすり、苦痛を味合わせるのが目的とも思える行動だ。実際、チェルシーは額に油汗を浮かべ、懸命に悲鳴を噛み殺している。
「くうぅっ、あっ。くっ……ぅっ。うぅっ」
 チェルシーの足に石の錘がぶら下げられる。一応、下着を身に付けているとはいえ、薄い布一枚では大して痛みを減らす役には立ってくれない。木馬の上で身をよじり、手首を捕らえる鎖を握り締めて少しでも身体を浮かせようと無駄な努力をしながらチェルシーが小さく呻きつづける。
 チェルシーの足に石を吊るすと、用は済んだとばかりにミルキーが手を振り、陰兵たちを部屋から追い出す。再び二人だけになるとぺろりとミルキーが唇を舐めた。
「うふふ……。ね、チェルシー姉様。この石に、重力を掛けたらどうなると思います? 今よりもずぅっと痛みが増すとは思いません?」
 ゆらゆらと揺れている錘の石へと足をかけ、ミルキーが悪戯っぽい笑いを浮かべる。石を踏まれたせいでより股間に荷重がかかり、激しさを増した痛みに表情を歪めながらもチェルシーがミルキーの顔をにらみつけた。
「す、好きにしたら? 私が泣いて許しを乞うだなんて思ってるなら、大間違いよっ」
「うふふ、さすがはチェルシー姉様。その我慢がどこまで続くか、楽しみですわ」
「ううぅっ、あっ、ああっ。くうぅぅっ」
 笑顔で放たれたミルキーの言葉と同時に、石がその重みを増す。激痛に髪を振り乱し、チェルシーが木馬の上で悶える。下着が真っ赤に染まり、木馬の側面を鮮血が伝う。
「苦痛に歪む顔を素敵ですわよ、チェルシー姉様」
「い、いいかげんに、くうぅっ。あっ、ああああっ」
 ミルキーの台詞に、反射的に叫び返そうとしたチェルシーが悲鳴を上げる。何時の間にか、ミルキーの手が彼女の腰にかかり、木馬へと押しつけていた。もちろん、彼女の腕の力で加わる負担など両足に吊るされた石の重みに比べれば小さな物だが、微妙に前後に動かされるせいで脳裏が白くなるほどの激痛が走った。
「今、大体50Kgって所かしら? 小柄な人間が両足にぶら下がってるようなものですわね。そろそろ限界なんじゃありません? チェルシー姉様」
「あ、甘、く、みないでっ。こ、これぐらい……っ」
 気を抜けば、恥も外聞もかなぐり捨てて泣き叫びたくなるほどの激痛。それに懸命に耐えながら、チェルシーが切れ切れに答えを返す。くすっと笑うとミルキーが右手を上げた。
「それじゃ、一気に倍に……っ!?」
 不意に表情をこわばらせ、左手で胸を押さえてミルキーがその場にうずくまる。木馬の上で苦痛に身をよじりながら、不審そうな視線をチェルシーは妹へと向けた。
(能力の、使いすぎ……?)
 苦痛から意識を逸らす意味もあって思考をそちらに向けたチェルシーが見守る中、震える手で懐から錠剤の詰まった小瓶を取り出し、ミルキーが中身をざらっと手のひらにあける。何錠出たかも確認せずに錠剤をまとめて口に放り込む妹の姿に、ひやっとしたものを感じてチェルシーは僅かに目を見開いた。まるで、薬物中毒患者のような行動……?
「ア、ンタッ。まさか、薬で能力を……!?」
「ウルサイッ」
 別人のようにしゃがれた声でミルキーが叫び、床に放り出してあった鞭の柄を掴んで振るう。とっさのことで狙いが甘くなったのか、それとも最初からそこを狙ったのかは不明だが、ピンと張りきったチェルシーの太股に刺の生えた鞭が当たり、皮膚と肉を引き裂いた。ばっと鮮血が飛び散り、チェルシーの表情が歪む。
 ほとんど同時にぐんっと石に重力がかかり、重みが一気に倍加した。このまま、股間からまっぷたつに引き裂かれるのではないかと思うほどの激痛が全身を貫く。たまらずに大きく身体を震わせ、チェルシーが絶叫を漏らした。ミシミシと、股間と膝の関節が嫌な音を立てる。
「うあっ、ああっ。きゃあああああああっ!」
「はぁ、はぁ……。うふふ、どうしたの? チェルシー姉様。どうってこと、ないんじゃなかったの?」
 額に浮かんだ汗を拭い、立ちあがるとミルキーが笑みを浮かべてそう問いかける。その言葉が耳に入ったのか、懸命に悲鳴を押し殺し、チェルシーがミルキーのことをにらみつけた。
「ア、ンタッ。自分が、何してるか、分かってるの!? それは……!」
能力増幅薬ブースター……。能力を飛躍的に高めるけど、未完成で、使えば遠からず廃人と化す……!)
「私は力が必要だった。だから使った。それだけですわ。
 私のことより、チェルシー姉様? 御自分の心配をしたらどうです? 今のうちに素直になっておいたほうが身のためですわよ。白龍パイロン様が出てこられたら、チェルシー姉様が味わう苦痛はこんな物では済みませんわ。それに、あの方はチェルシー姉様がすべてを話したとしても生命を助けてはくださらないでしょうし……ね、チェルシー姉様。今ならまだ間にあいますわ。意地を張るのは、もうやめにしませんか?」
「ふざけっ……くぅっ」
 叫ぼうと大きく息を吸った途端、ずきんと激痛が走りぬける。絶叫したくなる衝動を必死になって押さえ込み、チェルシーは唇を噛み締めた。呻きまでは完全に殺すことが出来ないが、それはしかたないと割りきる。
「チェルシー姉様……あんまり、私を困らせないでくださいな」
「うっ、あぁっ。ああああっ」
 ミルキーが手を伸ばし、チェルシーの腰を木馬の背へと押しつける。悲鳴を上げて身悶えるチェルシー。微妙に前後にチェルシーの腰を揺すりながら、ミルキーが言葉を続けた。
「許してって、言ってみませんか? そうしたら、石に掛けてる重力を切りますけど」
「だっ、誰、がっ。うあぁっ、くぅぅっ。ひっ、きゃあああああっ」
 激痛に身悶えながら、チェルシーがきっぱりとミルキーの言葉を拒絶する。ふうっと溜め息をついてミルキーがチェルシーの腰から手を離した。はっはっはと荒い息を吐きながら、うなだれる姉の顔を困ったように見つめ、軽く肩をすくめる。
「本当は、こんなことしたくないんですよ? チェルシー姉様が、意地を張るのがいけないんですからね」
 少し拗ねたような口調でそう言うと、ミルキーが木馬の横を回り込み、部屋の隅へと向かう。チェルシーからは死角になっていたそこには真っ赤に焼けた石炭が満たされた石造りの箱が有り、その中には数本の鉄の棒が差し込まれていた。
「火傷は、跡が残るから嫌なんですけど……ね、チェルシー姉様。やめてって、言ってみません? やめてくださいってお願いされたら、私、こんな酷いことやらないで済むんですけど」
 冗談めかした口調でそう言いながら、ミルキーが半ばから先が真っ赤に灼熱した鉄の棒を手に取る。首を僅かにひねり、肩越しにその焼けた鉄を目にしてチェルシーが唇を噛み締めた。
「ね、チェルシー姉様。これってとっても熱いですよ? やめてって、一言お願いするだけで助かるんですもの。別に拒否する必要はないでしょう?」
「や、やるなら、さっさとやったら!?」
 顔の向きを正面に戻し、ぎゅっと目を閉じてチェルシーがそう叫ぶ。叫んだ拍子に股間から激痛が走り、彼女は小さく呻いた。刺付きの鞭であちこちの肌を裂かれ、あふれた血で白い肌はまだらに赤く染まっている。木馬の背に押しつけられ裂けた股間からあふれ出す血と、上体を伝って滴ってくる血とでチェルシーが身に付けたパンティは真紅に染まっていた。ここに連れてこられる前に受けたリンチまがいの暴行のせいで顔や髪も身体に比べればごく僅かとはいえ血で汚れているし、満身総痍という言葉がぴったりとくる無残な姿だ。
「強情ですね……チェルシー姉様」
 少し呆れたようにそう呟き、ミルキーが背中へと流れ落ちるチェルシーの髪を肩から前へと回す。あちこちに刺鞭で引き裂かれた傷が走る白い背中へと、ミルキーは口元に薄く笑みを漂わせて焼けた鉄の棒を押しつけた。じゅうぅっという音と共に白い煙が上がり、肉の焼ける嫌な臭いが周囲に立ち込める。身体を震わせ、目を大きく見開いてチェルシーが悲鳴を上げた。
「あっ、ああっ、ああああっ。ひっ、きゃあああああああっ」
 背中の痛みから逃れようと身をよじれば木馬の背によって股間を引き裂かれる。灼熱の棒に背中を焼かれながら、チェルシーが木馬の上で激痛に身悶えた。
「うっ、くっ。あっ、あっ、あっ、ああああ--っ」
 転がすように、チェルシーの背に押しつけたまま棒を移動させるミルキー。べろりと皮が剥け、肉の焼ける音と臭いが広がる。傷を焼かれるために出血がほとんどないのが見た目の悲惨さを少なくしているが、今まで懸命に悲鳴を噛み殺していた反動かチェルシーの口からはとめどなく悲鳴があふれ出していた。顔をのけぞらした拍子に長く美しい金の髪が後ろへと流れ、焼けた棒に触れて嫌な臭いと共に縮れる。
「せっかく、忠告とチャンスを上げましたのに。自業自得ですわね、チェルシー姉様」
 身体を震わせ、悲鳴を放ちつづける姉へとくすくすと笑いながらそう呼びかけ、ミルキーが開いた左手を軽く上げた。石炭の中で熱せられていた鉄の棒が一本、ふわりと浮きあがって彼女の手の中に収まる。
「どうします? 今謝れば、追加はなしにしますけど」
「くうぅっ、あぁっ。だっ、誰にっ、言ってんのよ。くううぅっ」
 背中に灼熱した鉄棒を押し当てられ、木馬の上で苦痛に身悶えながらも気丈にチェルシーがミルキーの言葉を拒絶する。その返事を半ば予想していたのか、小さく肩をすくめただけでミルキーは左手に握った鉄棒をチェルシーの腰の辺りに押しつけた。
「くっ、あっ、あつっ、熱いっ、きゃあああああああああっ」
「ほらほら、強情を張っても痛いだけですよ。楽に、なりたいでしょう? 大体、その様子ではそろそろ我慢も限界なんじゃありません?」
 ぐりぐりと、左右の手で握った鉄棒を動かしながらミルキーが笑う。嘲けるようなミルキーの言葉に、あふれつづける悲鳴を強く唇を噛み締めて何とか殺し、チェルシーが激しく首を左右に振った。呆れたような表情を浮かべ、ミルキーが軽くチェルシーの足に吊るされた石を蹴る。100Kgから150Kgへと、吊るされた石が更に重量を増した。左右の足に、それぞれ人間二人がぶら下がっているに等しい重みだ。ますます強く股間を尖った木馬の頂に押しつけられ、チェルシーの目が大きく見開かれる。
「うぐっ、ぐっ、ふぐうぅっ」
 強く噛み締められた唇から血が滴る。歯で唇を食い破り、激痛に身をよじる。背中へと二本の灼熱した鉄の棒を押しつけられ、その痛みに髪を振り乱して身悶える。発狂してしまいそうな激痛の嵐に翻弄されながらも、チェルシーは懸命に歯を食い縛り、耐えつづけている。
「ぐ、うぐぅ……」
 股間からあふれ出した血が床にかなり大きな血溜りを作り、背中のかなり広い範囲が焼けただれる。どれくらいの時間がたったのか、もうチェルシーには分からなくなるほどの時が過ぎた頃。懸命に悲鳴を噛み殺した、くぐもった悲痛な呻き声が不意にとだえた。まぶたを伏せ、がっくりとうなだれたチェルシーの顔を見上げると、ふうっとミルキーが溜め息をつく。
「本当に、強情なチェルシー姉様……」
 完全に意識を失うまで責め抜かれて、それでも一度も許しを乞おうとしなかった姉のことを、ミルキーは感心したとも呆れたともつかない表情で見つめていた。

「うっ……つつっ」
 うっすらと目を開け、全身を包む痛みにチェルシーが小さく呻く。痛みで朦朧となりかける意識を懸命につなぎとめ、状況を把握しようと努める。
 狭い部屋だ。床に転がされているが、とりあえず周囲に人の気配はない。両足首は短い鎖で繋がれ、両腕は背中側に回されてやはり短い鎖で両手首を拘束されている。服は着せられていないが、全身にぐるぐると包帯が巻かれているせいでさほど寒くはない。
 結論。気絶した自分に一応の手当を施し、どこかの部屋に放り込んである。
(ともかく、脱出しないと……)
 体力の回復を待って再び拷問が加えられるのも、自分を人質としてルミナやルリをおびき出されるのもごめんだ。ずりずりと芋虫のように床を這って壁に近寄り、そこに上体をもたれさせるようにして起き上がる。たったそれだけの行動を取っただけで叫びたくなるような激痛が全身に走った。
「く、うぅ……この、程度で、泣いてなんかいられないのよっ」
 自分に気合を入れるようにそう小さく呟くと、チェルシーは両腕に力を込めた。自分の重力使いとしての能力も使って、両手を縛る鎖を引き千切る。痛みで集中がうまく行かなかったのか、鎖だけに重力を掛けることが出来ず、両手首にかなりの激痛が走ったがあえて無視する。骨にヒビぐらいは入ったかもしれないが、とりあえず動かせる以上折れてはいないはずだ。そして、今はとりあえず動いてくれさえすればいい。
 自由になった両手で足を結ぶ鎖を掴み、同じように引き千切る。とりあえず拘束から逃れたチェルシーは壁に手を付いてよろよろと立ち上がった。
「っ……! くうぅ……っ!」
 ずきんと、股間と膝で激痛が弾ける。幾重にも巻かれた包帯に赤く血がにじむほど深く引き裂かれた股間の傷が痛むのは当然の事だし、片足に150Kgもの荷重が掛けられたのだから膝の関節がおかしくなっていても不思議はない。むしろ、脱臼もせずにいた事が幸運なのだ。まぁ、もしかしたら外れていた関節をはめ直してくれたのかもしれないが。
(痛い、けど、とりあえず、動く)
 ふっふっふっと短く息を吐き、激痛に油汗を浮かべながらもチェルシーは笑みの形に唇を歪めた。生きていて、動ける。今はそれで充分だ。
「それにしても……こんなに傷だらけになってばっかりじゃ、お嫁に行けなくなっちゃうな……」
 脈絡のない、くだらない自分の呟きにチェルシーは小さく笑った。痩我慢であれ空元気であれ、冗談を言える余裕が有るならまだ大丈夫だ。ぐっと右の拳を握り、大きく息を吸う。全身を包む痛みを意識から追い払い、一点へと集中する。
(私は……帰る。私の居場所へ)
 気合と共に、チェルシーは拳を壁へと叩きつけた。鈍い痛みと共に、血がしぶく。同時に、ぴしっと壁に大きく亀裂が走り、砕けた。吹き込んでくる夜風に髪をなびかせ、チェルシーがぐっと体勢を低くする。
(絶対に、負けない)
 自分へと働く重力を弱め、大きく跳ぶ。全身に激痛が走り、包帯のあちこちに血がにじんで赤く染まる。傷が開いたのか、それとも、能力の酷使が身体に反動として返ってきたのか。目が眩みそうなほどの激痛に襲われながらも、チェルシーは強い意志を秘めた瞳でひたすら前を見つめていた。

「ルミナ? 何してんの?」
 庭に立ち、月を見上げているルミナへと銀の介がそう問いかけた。ん? と、生返事を返してルミナが軽く肩をすくめる。
「別に。金髪の奴、なかなか帰ってこないなぁって思ってさ」
「……捕まったの、かな、やっぱり」
「さぁね。あいつがあっさりやられるたまとも思えないけどな、俺は」
 軽い口調でそう言いながらも、ルミナの表情は真剣だ。まだ出会ってから間もないとはいえ、彼女が酷い目にあっているかもしれないと思えば平静ではいられない。ルリと銀の介と共に自宅でもあるこの寺に戻ってきてから、気になって襲撃を受けた公園まで戻っても見たのだが、何の手がかりも得ることは出来なかった。あの場で自分が踏み止まっていたからといって何が出来たわけでもないだろうが、女の子一人を危険な目にあわせたのは男としてやはり情けない。
(チクショウ……俺が、もっと強ければ)
 内心の怒りにルミナが拳を震わせたその時。
 がさがさっ、どさっと、寺の植え込みが大きな音を立てた。慌ててその音がした方へと走っていくルミナと銀の介。
「っ、な……っ」
「あ、あはは。ただいま」
 思わず絶句し、立ちすくむルミナたちへと血まみれになったチェルシーが地面に転がったままひらりと手を振る。
「やー、ドジっちゃった。でも、ま、何とか帰ってこれたから大目に見てよね」
「なっ、何やってんだよ!? その怪我は……!?」
「んー……ちょっと、詳しい話は後にさせて。いいかげん、能力の使いすぎ、で……」
 チェルシーの声が掠れ、途切れる。ぱたりと手を地面に落としたチェルシーへと慌ててルミナが掛け寄った。胸が微かに上下しているのを確認してほっとした表情を浮かべる。
「だ、大丈夫……?」
「ああ。気を失ってるだけみたいだ。しっかし……ほんと、たいした奴だよな、こいつは」
 血まみれのチェルシーを、躊躇なく抱え上げながらルミナはそう呟いた。
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