酒井法子の受難
「お、お願い、します……。水を……水を、飲ませて、ください……。お願い……」
床の上に転がったまま、酒井法子がうわごとのように哀願の言葉を続ける。男がにやりと分厚い唇を歪めた。
「うふふ、はい、よく出来ましたぁ。それじゃぁ、御褒美を上げようねぇ。うふふふふ」
含み笑いをしながら男が彼女の身体を抱え上げ、浴槽へと運んだ。浴槽の中に彼女の上半身を逆さに押し込み、足を浴槽の外へと出させる。丁度膝の辺りが浴槽の縁に当たり、折れ曲がる。苦しげに上体をよじらせる彼女の顔へと、男はぱさりとタオルを被せた。
「な、何……!?」
「さぁ、たっぷり飲むといいよぉ」
動揺の声を上げる彼女へと、男がホースで水を浴びせかける。タオルが水を吸い、彼女の顔に張りついた。足は男に抱えこまれていて動かせない。自由にならない上体をのたうたせ、酒井法子が激しく苦悶する。
「うぐ、うぐぐっ、むぐぅ~!」
息をしようと大きく口を開けても、入ってくるのは水ばかりだ。激しくむせながら、懸命に水を飲みこむしかない。さっきまではあれほど欲しかった水が、今ではこのうえなく残酷な拷問道具となって彼女のことを責めたてている。
「うぐぅっ! げぇ、ほっ、うぶぅ。うぐ、うぐ、ふぐぅっ!」
激しく頭を振り、身体を弓なりにのけぞらす。だが、顔の左右に広がったタオルの端は浴槽の底に張りつき、彼女の顔から剥がれてはくれない。息を吸いたくとも、後から後から口の中に入ってくる水のせいで空気を肺に送りこむことが出来ない。
このまま窒息するか、と、そう思った時、水が注がれるのが止まった。水を吸い、空気を通しにくくなったタオルごしに、それでも懸命に息を吸いこむ。ついでにいくらか水も気管に入れてしまい、むせながらもなんとか彼女は一息ついた。
もっとも、それでほっとするまもなく再び水が注がれ始めた。いくらかは息をつけたといってもたかが知れている。すぐに激しい苦悶に襲われ、彼女はまた激しく身体をのたうたせた。
「ぐぼっ、や、やめてぇっ、うぶぶ、ぐぶ、ぶぅ、げほっ」
身体がぴんと弓なりにそり返り、男に抱えこまれた足が硬直する。ぎゅっと足の指が曲げられ、びくびくっと彼女の身体が震えた。それを見た男が彼女の顔からタオルを取りのける。
「うぇ、げほっげほっ」
タオルから解放された酒井法子が、顔を横に向け、咳と共に苦しげに水を吐き出す。はぁはぁと荒い息をつく彼女の口の中へと男は水が出たままのホースの先端を押しこんだ。
「うぶぅっ! ぶぶっ、ごぼぅっ!」
ホースをくわえさせられ、強引に喉へと水を流しこまれる苦しみに、酒井法子は身体を波うたせた。到底全てを飲みこみきれるはずもなく、開かれた唇の端から水があふれ出している。
「ほぉら、たっぷり飲んでいいんだよぉ。喉が乾いているんでしょぉ?」
「うぶ、ぶぶ、ふぐぅっ。うべべぇっ」
やめて、といっているのか、不明瞭な音をあげながら酒井法子が首を左右に振る。後から後から注がれる水は口の中をいっぱいに満たし、唇の端からあふれ出している。息を吸うためには口の中の水を飲み干さねばならないのだが、ホースによって際限なく注がれる水を飲み干すことなど出来るはずがない。
「うぶっ、ぐぶぅっ」
びくびくっと、彼女の身体が痙攣するように震える。男がホースを彼女の口から引き抜いた。先端からほとばしる水流が、彼女の顔を直撃してびちょびちょに濡らす。
「げほっ、ごほごほっ、や、止めて……」
顔を左右に振り、水流から何とか逃れようとしながら酒井法子が哀願の言葉をもらす。胸や腹を大きく波打たせ、咳込みながら懸命に息をしていた。その間にも顔へと水は注がれ続けており、時折気管に水を吸い込んでしまって激しくむせる。
「どうしたのぉ? 水が、飲みたかったんでしょう?」
ホースを浴槽の底へと放り出し、男が水道の蛇口を最大限にひねる。ホースの先端から勢い欲水が吹き出し、浴槽の中に結構な早さで水が満たされていく。横を向いて息を荒らげていた酒井法子の表情が恐怖にこわばった。このままでは、溺れてしまう!
「嫌っ、止めてっ。止めてぇっ」
後ろ手に拘束された身体をよじり、酒井法子が悲痛な叫びを上げる。浴槽の縁に足をかけ、底に横たわった今の体勢では身体を起こすことが出来ない。せいぜい、首をねじ曲げて僅かに顔を浮かせるのが関の山だ。
「ほらほら、早く水を飲みなよぉ。のりぴ~が水が欲しいっていうから、たぁっぷり用意してあげたんだからねぇ」
彼女の足を抱え込みながら、男がねちっこい口調でそう言って笑う。ひたひたと浴槽の中を水が満たしていき、顔を横に向ければ鼻の辺りまで水の下だ。水面でゆらゆらと彼女の髪が揺れている。
「お願いっ、水を止めてっ。もう要らないからっ。うぶぅっ」
哀願する彼女の顔へと、男がホースの先端を向ける。勢いよく吹き出す水に顔を直撃され、酒井法子がむせる。彼女が水流を避けようと身体をよじるたびに、浴槽に溜まった水がびちゃぴちゃと水音を立てた。水流を避けようにも、左右には動けず、顔を背ければ鼻や口が水面下に沈む。
「うぶっ、止めてっ、ぐぶぅっ。げほっ、お願い、ぶぶぶっ」
背中に回された腕で懸命に浴槽の底を押し、僅かでも身体を浮かせようとする。首をねじ曲げ、水面から顔を上げる。それでもホースによって顔に直接浴びせられる水流は避けようがないし、哀願の言葉を放とうと口を開くたびに水が入り込んできて激しくむせる。
ぽっこりと、僅かに彼女の腹が膨らみ始めていた。無理矢理飲まされた水のせいだ。身体をよじるたびにふるふると乳房が揺れている。
「えほっ、げほっ。助けてっ、死んじゃうぅっ」
男が再びホースを放り出した。顔への直接の水流は止まったものの、そろそろ水面の高さはどんなに頑張っても彼女が水から顔を上げつづけるのが難しい高さになってきていた。水面が揺れるたびに波が彼女の顔の上を通過していき、鼻や口に入り込む。
男が、立ちあがりながら彼女の足を引っ張った。ごんっと鈍い音を立てて酒井法子の後頭部が浴槽の底に当たる。パニックを起こして身体をのたうたせる酒井法子。ぼこぼこと、気泡が上がって水面を乱した。
「ぶはぁっ、はぁ、はぁ、はぁ……やめっ、ごぼごぼごぼごぼ」
何とか懸命に水面へと顔を出し、助けを乞うた酒井法子の前髪を、男が左手で掴むとぐいっと押した。水中に強引に沈められ、じたばたと酒井法子が暴れる。ごぼごぼと上がる気泡の量が少なくなってきた頃を見計らって、男は彼女の髪をひっぱって顔を水面の上へと出させた。
「ぶはっ、はっ、うぶぅっ!? ぼごぼごぼご……げほっ、げほげほげほっ」
やっと息がつける、と、そう思ったのも束の間、ほとんど息を吸わないうちに再び男の手によって水中に顔を沈められる。息を吸ってる最中に沈められたせいでまともに水を吸い込んでしまい、激しく彼女は身体を震わせた。今度は水中に沈められたいたのはごく短い間で、すぐに顔を引き上げられたのだが、激しく咳込むだけで哀願の言葉を放つ余裕もない。
「うあ……はぁ、はぁ、はぁ……お願い……もう、許し、て……」
男の手によって前髪を掴まれ、引き上げられているせいでかなり痛い。それでも、その状態でしばらくすごすと何とか息が落ち着いてきた。もっとも、その間にも高さを増した水面が、引き上げられた状態の彼女の口元までやってきているのだが。
「じゃぁ、これで終わりだよぉ。たぁっぷり、飲んでねぇ」
「ま、待っ……きゃあっ、ぶぐぅっ」
男が酒井法子の足を抱え、ひっくり返すようにして彼女の全身を浴槽の中へと放り込む。背中を床につけ、頭を下に、足を上にした体勢で浴槽の中に放り込まれて酒井法子は激しくもがいた。両腕が拘束されて使えない上に、身体が浴槽につっかかってしまって思うように動かせない。冷静に、ゆっくりと身体を動かしていけばなんとか脱出も出来るだろうが、息をすることもできない水の中だ。冷静になど、なれるはずもない。
上下の感覚すら混乱してしまい、ただひたすらに身体をよじり、足をばたつかせる酒井法子。悲鳴でも上げているのか、ごぼごぼと気泡が口から漏れる。
ばしゃばしゃばしゃ。ごぼごぼごぼ。
彼女がもがくのと、上げる気泡のせいで水面が激しく波立ち、どんな表情を浮かべているのかははっきりとは見て取れない。まぁ、とんでもなく苦しんでいるのは確かだが。
ばしゃばしゃ、ごぼごぼ。ばしゃ、ごぼ。ばしゃ……。
徐々に彼女のもがく動きが鈍くなる。肺の中の空気をほとんど吐き出してしまったのか、口から漏れる気泡はもうごく僅かだ。男が軽く肩をすくめて両腕を水の中へと突っ込み、酒井法子の身体を引き上げた。ぐったりと全身から力が抜け、失神しているようだ。胸が上下しているから、生きているのは確実だが。
「うっ……」
小さく呻いて、酒井法子が薄くまぶたを開いた。気がつけば、万歳の形に両腕を上げ、天井から鎖で繋がれている。吊るされている訳ではないが、足に力が入らないせいで似たような状態だ。手首には皮のベルトが巻かれ、それが鎖に繋がっているらしい。痛みはないが、不安に駆られて彼女は周囲を見回した。身体は奇麗に拭かれているが、髪はまだ湿り気を帯びたままだ。
「あ、気がついたんだねぇ」
前にも聞いたような台詞とともに、男がソファから立ちあがる。
「こ、今度は、何をするつもりなの……?」
不安そうな口調で酒井法子がそう問いかける。瞳にも声にも恐怖の色がはっきりと出ていて、既に抵抗しようという気力はほとんど感じられない。
「うふふ……。これ、なぁんだ?」
彼女の背後に回り込んだ男が、小さな机ぐらいの大きさの機械をぽんと叩いてそう問いかける。くるりとその場で回転し、そちらに向き直る酒井法子。何に使うものかは分からないながらも、恐怖に駆られて彼女はごくりと唾を飲み込んだ。
「な、何をするの……?」
「うふふふふ……」
不気味な笑いを上げると、男が機械から二本の棒を外した。手に持つ部分はプラスチック製で、その先は金属製だ。手元からはコードが伸びていて、機械へと繋がっている。
男が二本の棒の金属部分を触れあわせた。ばしっと大きな音がして火花が散る。きゃっと悲鳴を上げて酒井法子は身体をすくませた。
「ま、まさか……嫌ぁっ、止めてぇっ」
ゆっくりと男が歩み寄ってくるのを見て、彼女は甲高い悲鳴を上げて身体をよじった。がちゃがちゃと鎖が鳴るが、当然ながら逃げられるはずがない。
「嫌っ、イヤイヤイヤッ。きゃああああああああああっ」
両脇腹を挟み込むように電撃棒を押し当てられ、酒井法子がぐんっと背中を弓なりに逸らせて悲鳴を上げる。これ以上ないというほど大きく目と口を開け、身体を震わせながら絶叫を続ける。
「あガっ、はっ、はっ、はっ」
電撃棒が離されると、がくっと全身を弛緩させて大きく酒井法子は喘いだ。背後に回り込んだ男が今度は一本を背中、もう一本を尻へと押し当てる。
「いやああああああああああっ」
ぶるぶると全身を痙攣させ、酒井法子が絶叫する。全身にどっと汗が浮かび、細かく身体が震えるたびにきらきらと電灯の明かりを反射しながら玉の汗が飛び散る。
「おなかの中に水がいっぱい入ってるから、痺れるでしょぉ? 筋肉のコリがねぇ、ほぐれるんだよぉ」
「きゃあああああっ、あああああああっ、うああああああああっ」
男の言葉も、酒井法子の耳には届いていない。電気ショックに本人の意志に寄らずに身体が弓なりに反り、硬直する。ぶるぶると、痙攣するように身体を細かく震わせながらただひたすらに彼女は悲鳴を上げつづけた。
「ぎぃっ、いぃ、あっ、はっ、はぅっ、うぅっ、はっはっはっはっはっ」
電撃棒が身体から離れ、がっくりとうなだれて酒井法子が肩を喘がせる。半開きになった唇からつうっとよだれが糸を引いた。全身に汗が浮かび、シャワーを浴びでもしたかのようにびっしょりと濡れている。電灯の光を反射して汗が光り、無残ながらも美しい姿を見せている。
「えっとぉ、次はどこだっけなぁ……。あ、思い出したぁ」
軽く首を傾げながらそう呟いた男が、不気味な笑いとともにそう言って酒井法子の前面に回る。顔を上げる余力もない彼女の股間へと、男は無造作に電撃棒の一本をねじこんだ。
「いぃっ、痛、いっ……!」
「よい、しょっとぉ」
一本は秘所の中へ。そして、もう一本は横向きにして両乳首を同時に押し潰すように。二本の電撃棒が、酒井法子の身体に押し当てられる。
「ぎぃあぁぁっ、ぎあっ、ぎぎぎ、ぎぃやぁああああああああっ」
酒井法子の身体がピンと反りかえる。濁った悲鳴が口からあふれる。
「ぎゃあああああっ、ぐぎゃぎゃぎゃぎゃあああああっ」
可憐な顔からは想像も出来ないような、獣じみた濁った悲鳴。汗と涙を飛び散らせ、小刻みに身体を震わせる。しゃあああっっと股間から小水が飛び散り、電撃棒の表面に跳ねて火花を散らした。
「あぎぎぎぎぎぎぎぎ、ぎひぃっ」
男が二本の電撃棒を酒井法子の身体から離す。力尽きたようによろよろとよろける彼女に向かって、男が満面の笑みを浮かべて問いかけた。
「ボクの気持ち、分かってくれたかなぁ? ボクがこんなにのりぴ~のこと愛してるんだもん、のりぴ~だってボクのこと、愛してるって言ってくれるよねぇ?」
「あ……あ……」
のろのろと顔を上げる酒井法子。軽く男が首を傾げた。
「まだ足りないかなぁ? うん、いいよぉ。のりぴ~がボクの気持ちを分かってくれるまで、頑張るからぁ」
再び電撃棒が持ち上げられる。酒井法子の表情が恐怖にこわばった。
「ま、待ってっ。愛してるっ、私もあなたのこと、愛してるからっ。もう分かったから、やめてぇっ」
「本当? じゃ、じゃあ、ずっとボクといっしょにいてくれる?」
「いっしょにいる! 何でも言うこと聞くからっ。お願いっ、もう、それはやめてぇっ」
泣きながら、酒井法子はそう叫んだ……。
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