番外編


 舞台は、薄暗い地下室。
 髪を三つ編みにし、眼鏡をかけた少女が一人、下着姿で部屋の中央に鎖で両手を引き上げられて立たされている。怯えたような表情を浮かべる少女の顎を指先で押し上げ、聖ルシフェル学院放送委員長、五十嵐玲子は幼い表情に似合わない冷たい笑みを浮かべた。
「昼間は、随分と私をいじめてくれたわよねぇ? 睦月」
「あ、あれは……っ! 玲子様がそうしろって……きゃあっ」
 ぱあん、と、乾いた平手打ちの音が響く。頬を赤くして小刻みに身体を震わせる少女--玲子より年上に見えるが、実はれっきとした下級生である--亜崎睦月の肉付きの薄い腹の辺りにすうっと指を滑らせながら玲子が笑う。
「ふぅん、この上、口答えまでするんだ、睦月は。これは、かなり厳しい罰を与える必要があるわね」
「ひっ!?」
 玲子の言葉に、息を飲んで顔を青ざめさせる睦月。堅い性格を反映してか、飾り気のない白のブラとパンティに指を這わせながらくすくすと玲子が笑う。
「だってあなたは私を三回もプールに突き落としたのよ? 一回一時間として、三時間。今日は海老責めでたっぷりいじめてあげる。うふふ……覚悟しておくことね」
「お許しを……! 玲子様……!」
「あら、震えているのね。可愛いわよ、睦月。
 でも、許してあげない。うふふっ、だって、あなたにプールに突き落とされた時は、水は飲んじゃうし、本当に死ぬかと思ったのよ? だから、これは正当な報復であり、しつけなの」
「玲子様……!」
 引きつった声を上げる睦月のブラを外し、小振りな乳房をあらわにすると玲子が指先で乳首をつまみ、引っ張る。小さく悲鳴を上げて身をよじる睦月。と、その時、コンコンッと軽いノックの音が響いた。
「誰よー? こんな時間に」
 不機嫌そうに眉をしかめて玲子が扉の方に視線を向ける。せっかくのお楽しみの時間を、いくら同格の委員長とはいえ他の人間に邪魔をされたくはなかった。
「僕だけど。お邪魔かな?」
「新城様!?」
 扉の向こうから返ってきた声に、玲子が目を丸くする。ちょっと済まなさそうな口調で、扉の向こうから声が響く。
「うん、僕。神宮寺は雲隠れしちゃうし、土門は彼女とお楽しみの最中だろ? 男一人余っちゃってさ、退屈してるんだ。玲子のって最近見てないし、もし迷惑でなければ見物させてもらっていいかな?」
「迷惑だなんて、とんでもない。どうぞ、ご覧になっていってくださいませ」
 慌てて扉に駆けより、そう言いながら玲子が生徒会長、新城正義を室内に招きいれる。パンティ一枚の姿を男の視線にさらす羞恥から、頬を真っ赤に染めて睦月が身をよじり、顔を背ける。
「必要な道具を運ばせますから、少々お待ちくださいね」
「ああ、うん、それは別にかまわないけど……でも、この状況って、これから始める所だったんじゃないのかい?」
 懐から携帯電話を取り出す玲子の言葉に、頷きながらも新城が怪訝そうな表情を浮かべる。短縮ダイヤルを押しながら玲子が曖昧な笑みを浮かべた。
「そのつもりだったんですけど、私の趣味だと新城様の退屈しのぎのお役には立てないんですよね。どうせ見学されるんでしたら、派手なもののほうがよろしいでしょう?
 ……ああ、私。倉庫から、アレ、出してきて。急いでね」
 携帯の向こうの相手にそう告げ、ポケットに携帯をしまって玲子が新城に笑みを向ける。苦笑を浮かべながら新城が肩をすくめた。
「別に、無理に気を使ってくれなくてもいいんだよ?」
「いえいえ。新城様こそ、どうぞお気になさらずに。どうぞ、おかけになっていてください。道具が運ばれるまではたいしたものもお見せできませんが……」
 椅子を差し示し、そう言うと玲子は壁の燭台の一つに手を伸ばし、照明用の太い蝋燭を手に取った。炎の揺れる蝋燭を手に睦月のもとに歩みより、無造作に蝋燭を傾けて睦月の胸元へと溶けた蝋を滴らせる。
「ひいいいぃっ。熱っ、熱いっ」
「この程度で泣いてたら、最後までもたないわよ。ほうら」
「あひいいぃっ。ひっ、ひあっ、熱い、ひいいぃっ」
 熱蝋を肌に滴らされ、身をよじって鳴き声を上げる睦月。くすくすと笑いながら彼女の背後に回り込み、椅子に腰かけた新城の視線を自分の身体で遮らないように注意しながら、玲子が更にぽたぽたと睦月の裸身へと溶けた蝋の雨を降らせる。
「本当は、色付きのものが有れば良かったんですけどね。白い蝋だと、肌の上に落ちた時目立たないですから」
「ひいいいっ、玲子様っ、お許しをっ、ひいっ、ひいいいぃっ」
「少しは我慢なさいな、睦月。蝋を滴らされるぐらい、たいしたことじゃないでしょう? これと比べれば……」
「あひいいいいぃぃっ! いやあああああぁっ!」
 くすくす笑いながら、玲子が蝋燭の炎を直に睦月の乳首へと這わせる。絶叫を上げて身をよじる睦月。蝋燭の炎はすぐに乳首から離れたが、それでもじんじんとした焼けるような痛みが残る。はっ、はっと荒い息を吐く睦月の耳元に口を寄せ、玲子がささやきかける。
「さあ、どうして欲しいか言ってごらんなさい。蝋を滴らされるのがいい? それとも、反対の乳首もあぶって欲しいのかしら?」
「あううう……蝋を滴らされる方が、いいです。ううう……」
「お願いします、は?」
「う、ううう……お願いします、玲子様。どうか、私の肌に溶けた蝋を滴らしてください」
「そう、蝋を滴らして欲しいの。お願いされたんじゃ、しかたないわね。いいわ、たっぷりと滴らしてあげる」
「あひいいっ、ひいっ、熱、熱いっ、ひいいぃっ」
 胸へとぽたぽたと熱い溶けた蝋を滴らされ、睦月が悲鳴を上げて身をよじる。しばらくそんなことが続けられた後、遠慮がちなノックの音が響いた。
「入りなさい」
 玲子が扉の向こうへと声をかけ、扉が開かれる。その向こうから室内へと木馬が運び込まれる。膝ぐらいまでの高さの四角い箱からにょきっと金属製の棒が一本のび、木製の馬の模型を貫いている。模型は足や頭まで作られており、宙に浮かんだそれを金属の棒が貫いているのだからある一点を除けば遊園地にあるメリーゴーランドの馬を思わせる形状だ。もちろん、その一点の違いと言うのは馬の胴体部分、人がまたがる部分が鋭く尖った三角形をしていることである。
「へぇ、懐かしいな。これって、去年卒業した前の放送委員長の使ってた道具だよね?」
 運び込まれた木馬を目にした新城が、そう呟く。はい、と従順に頷いて玲子が木馬へと歩み寄った。
「青嶋先輩のお気に入りだった玩具ですわ」
「あれ? だけど、玲子はこういうのが好きじゃないんじゃなかったっけ? ずっとしまい込まれてたものだと、きちんと動かないんじゃないかな?」
「御心配には及びませんわ、新城様。確かに私はこれを使ってはいませんけど、絵夢に頼まれてしばらく彼女に貸していましたから。整備はきちんとされていて、動作に問題はない筈です」
 玲子の言葉に、新城が軽く苦笑を浮かべる。
「絵夢のことだから、他人にじゃなくって自分で使ってたんじゃないかい?」
「そのようですわね。もっとも、これじゃ物足りなくなったらしくて、自分で改良して新しいものを作ったみたいですけど」
 玲子も同じように苦笑を浮かべてそう応じる。くすくすと口元に手を当てて新城が笑う。
「まぁ、それも絵夢らしい話だね。改良って、どんな風にしたか聞いてる?」
「ええと、胴体部分を更に鋭くして、更にギザギザを刻んだ鉄製に変更、木馬の動き自体も前後を大きくしたって言ってましたっけ。そんなことしたら鋸で股間を切られるような感じになっちゃって、普通の人間だとたまったものじゃないと思うんですけど、絵夢の場合はそれが快感らしいですから。ああ、それと、オプションとして身体に電極貼りつけて、木馬に揺られながら電気ショック浴びてるとかいう話ですよ」
「凄いね、それは。今度、見せてもらおうかな?」
「よろしいんじゃないでしょうか。まぁ、それと比べるとかなり落ちますけど、今日はこれをご覧になって行ってくださいませ」
 笑顔で軽くお辞儀をし、ぱちんと玲子が指を鳴らす。木馬を運んできた男子生徒たちが台座の部分にあるスイッチを入れると、低いモーターの唸る音を響かせて木馬が動き始める。上下に揺れるだけでなく、前後に傾いたり左右に捻るように回転したりと、メリーゴーランドというよりはロデオマシーンのような動きを見せる木馬を横目で見やりながら、玲子は睦月の方に向き直った。
「今からあなたにはあれにまたがってもらうわ。支柱に腕を一応固定するから落ちる心配はないけど、あれだけ激しく動くんですもの、普通の木馬の数倍、ううん、もっと凄い苦痛を味わうことになるでしょうね」
「ひっ、ひいいいぃっ! いやっ、あんなのに乗せられたら、私、死んじゃいますっ。玲子様っ、お願いですっ、あれは、あれだけはお許しくださいっ」
 顔面を蒼白にし、ぶんぶんと左右に顔を振って哀願の声を上げる睦月。その哀願を完全に無視して玲子がぱちんと指を鳴らした。木馬の動きがいったん止められ、睦月の腕を引き上げていた鎖も降ろされる。しかし、鎖から手首を解放された睦月が身をよじってもがくのを男子生徒たちが押さえ込み、後ろ手に手錠をはめてしまう。
「お、お願いですっ、許してくださいっ、玲子様ぁっ」
 男子生徒たちに木馬の方に引きずられて行きながら、睦月は懸命にもがき、哀願の声を上げる。くすくすと笑っている玲子が軽く顎をしゃくり、男子生徒たちの手で睦月の身体が木馬の上に押し上げられた。
「きゃああああぁっ、痛いっ、痛いっ! お願い、降ろしてぇっ」
 股間に食い込む鋭く尖った木馬の背の痛みに、睦月が悲鳴を上げる。男子生徒の一人は手錠のチェーンと木馬を貫く支柱とを縄で結び付け、もう一人はじたばたと暴れる睦月の足首と台座とを鎖で繋ぐ。まだ身体をある程度動かす事は出来るものの、木馬の上からは逃れようのなくなった睦月がすすり泣き、椅子に腰かけてその光景を見守っている新城の方へと玲子が一礼する。
「それでは、始めさせていただきます、新城様」
「うん」
 新城が小さく頷き、玲子がぱちんと指を鳴らす。木馬のスイッチが入れられ、ぐんっと勢いよく木馬の胴体が睦月を乗せて上に上がった。
「あひいいいいいぃっ!!」
 じゃらりと鎖が鳴ってぴんと張り、睦月の股間が更に激しく木馬の背に食い込む。激痛に顔をのけぞらせ、甲高い悲鳴を上げる睦月。木馬の側面を鮮血が伝い落ちる。
「あひいいぃっ! ひああああああぁっ! 死んじゃうっ、止めてっ、ひいいいいぃっ!!」
 がくん、がくんと、木馬の上下の運動に激しくあおられ、睦月が悲鳴を上げる。そこに追い打ちをかけるように、木馬の動きに前後に傾く動きが加わった。
「ヒイイイイィッ! イヤアアアアアアァッ! ヒアアアッ、ヒッ、ヒイイイイイイィィッ!!」
 木馬の前後の傾きに、睦月の身体が短い距離とはいえ前後に滑る。木馬の背によって引き裂かれた傷口を更にえぐられ、激痛が全身を走りぬける。完全に固定されているわけでない彼女の上体が激しく前後左右に揺れ動き、鮮血が木馬の胴体や彼女の足を伝って台座の上にぽたぽたと滴り落ちる。
「じぬっ、じんじゃううぅっ! ギヒイイイイィッ!! とめて、とめてっ、ヒイイイィッ!!」
 上下、前後の傾き、左右の回転と、不規則に激しく動く木馬の背に揺られ、睦月が絶叫を上げつづける。がちゃがちゃと鎖が鳴り、木馬の背に彼女の股間を押しつける。
「ウギイイィッ! じんじゃぶっ、アヒイイイイィッ!! ひゃめってぇ、ギヒイイイイィッ!!」
 こぼれ落ちんばかりに目を見開き、口の端に白い泡を浮かべて睦月が絶叫する。前後左右に激しく揺さぶられ、彼女の小振りな胸が踊る。全身に浮かんだ油汗が飛び散り、悶絶寸前といった状態で睦月がただただ悲鳴を上げつづける。

「うっ、う、あ……?」
 床の上に転がされていた睦月が、ばしゃりと冷水を浴びせられて意識を取り戻す。ぼんやりとした頭を持ち上げ、周囲を見回そうとした彼女へと、笑いを含んだ声がかけられた。
「目は覚めた? 泡吹いて悶絶してたのよ、あなた」
「れい、こ、さま……?」
 そう相手の名前を呼んだ自分の声はひどく掠れていた。叫びつづけていたせいか喉に痛みすら感じる。下半身は麻痺したようになっていて、まったく力が入らない。
「まぁ、一時間はよく持った方だと思うわよ、実際。新城様にも満足していただけたみたいだしね」
「い、一時間……?」
「そうよ。もっと早く気絶するかとも思ったんだけどね。まぁ、新城様を送っていく時間分、ゆっくり休めたでしょう? 予定外の事が起きて遅れたけど、あなたへの罰、これからじっくりと与えてあげるわ」
「ひっ!?」
 玲子の言葉に、睦月が息を飲む。
「玲子様っ、お願いですっ、どうかお許しをっ。これ以上責めを受けたら、私、死んでしまいますっ」
「だーめ。最初に言ったでしょ。あなたへの罰として、海老責めでたっぷり三時間苦しんでもらうって。きっちり三時間の罰を受けてもらうわよ」
「玲子様っ!」
 必死に叫び、身を起こそうとする睦月。しかし両腕は背中に回されて手錠をかけられ、下半身にはまったく力が入らない。僅かに身体を揺するのが精一杯だ。
「さ、はじめましょ。まずは、普通の海老責めからね」
「ひいいいぃっ! いやっ、やめてくださいっ、玲子様っ!」
 悲鳴を上げる睦月の身体を男子生徒たちが引き起こし、乾いた床の所まで引きずって行ってから力の入らない足をあぐらの形に組ませる。足を掴まれ、動かされた拍子に木馬責めによってかなり酷い傷を負った股間がずきんと痛み、くううっと睦月が苦痛の呻き声を上げる。しかしそれに同情したそぶりも見せずに男子生徒たちは縄で彼女の足首を縛り上げてしまう。別の縄が折り曲げられた足をぐるりと巻かれ、太股とふくらはぎとを密着させられてしまう。
 更に睦月の首の後ろに縄が回され、男子生徒の一人が彼女の背中に膝を当てて体重をかけ、縄を引き絞りながら強引に彼女の身体を折りたたんでいく。あぐらを組まされた足と胸とが密着するほどに身体を折り畳まれ、苦しげな呻きを漏らす睦月。縄の端が固定され、背中に乗っていた男子生徒が離れるが、身体を起こす事は出来ない。
「うっ、ううっ、くううぅ……」
 小さく身体を丸めた形で束縛された睦月が苦しげに呻く。手錠がいったん外され、両手首が組んだ反対の腕の肘の先に出るぐらいまで腕を絞り上げられて縄で固定される。腕が背中に密着し、背中から離そうと少し動かしただけで肩と肘とに激痛が走った。
 がんじがらめに束縛された今の睦月に動かせるのは、首から上、手首と足首から先のわずかな部分だけだ。更に胸を圧迫されているために大声で叫ぶ事も出来ず、苦しげな呻き声を唇の間から絞り出す事しか出来ない。
「ううう、くうう、うく、く、くうううぅっ……」
「うふふっ、いい声よ、睦月。大きな悲鳴もいいけど、私はやっぱりそういう呻き声の方が好きね」
「うう、苦、苦し、い、です、玲子、様。お許し、を、ううううう……くううぅぅ」
 ほとんど唯一自由に動かせる首から上を懸命に持ち上げ、睦月が哀願の声を上げる。くすくすと笑いながら、しゃがみ込んだ玲子は両手を頬に当てて睦月の苦しみ、呻く姿を眺めている。泣きそうな表情を浮かべて、睦月がうなだれる。
「うう、あ、う……くう、う……ううっ。うっ、く、うううぅ……」
 全身にびっしょりと汗をかき、睦月が呻く。時間が立てば立つほど、動かす事の出来ない状態で固定された筋肉は引きつり、痛みを発する。苦痛は時間が立つのに比例して増すばかりなのだ。悲鳴を上げたり、身体を動かしたりして気を紛らわす事も出来なず、睦月は全身を包む苦痛に苛まれ、掠れた呻き声を上げつづけている。
「さて、と。二時間たったわね」
 ずっと黙って睦月が上げる苦しげな呻きを聞いていた玲子が、腕時計にちらりと視線をやってそう呟く。睦月は苦しげに呻くばかりでその言葉にも反応を見せない。彼女の身体からあふれた油汗で、彼女の居る辺りの床がぐっしょりと濡れていた。
「それ、持ってきて」
 睦月の苦鳴を楽しげに聞いていた玲子とは異なり、退屈そうにしていた男子生徒たちがその言葉に慌てて壁に立てかけられていた十露盤そろばんを運んでくる。睦月の背後にその十露盤が置かれ、男子生徒たちが睦月の身体に手をかけてごろんと後ろに転がす。
「うっ、ぐっ、ううっ、ぐうううううぅっ」
 ギザギザの上に転がされた睦月が苦痛の呻きを上げる。くすくすと笑いながら、玲子は折り畳まれている睦月の足の上に腰を降ろし、彼女の顔を覗き込んだ。
「うぐぐぐぐぐっ! ううっ、ぐううううぅっ! う、あ、ううぅっ!」
 自分の体重だけでもギザギザが背中や腕に食い込み、激しい痛みを感じているというのに、その上に玲子が座ったのだからたまらない。目を見開き、イヤイヤをするように首を振り立て、何とかこの苦痛から逃れようと身体を揺する。しかし、厳重に折り畳まれ、束縛された身体を揺すってみた所で、玲子を振り落とすことなど出来る筈もない。
「痛い? それとも、苦しい? どっちが大きいのかな?」
「うううううっ、くうううぅぁっ! うぐぐっ、ぐぐっ、ぐうううぅっ!」
 玲子の問いにも答える余裕がないのか、睦月は苦しげな呻きを唇の間から絞り出すばかりだ。
「ふぅん、私の質問、無視するんだ。ねぇ、それ、持ってきて」
 玲子の言葉に、男子生徒が石の板を運んでくる。薄いものだが、それでも石は石だ。決して軽いものではない。
「素直に質問に答えなかったから、罰を追加してあげるわ。御主人様の言うことを聞けないペットには、罰を与えなくっちゃいけないものね」
「うぐうううぅぅ---っ!! ぐぐぐぐぐぐ----ぅぅっ!!」
 立ち上がった玲子と入れ代わりになるような格好で、十露盤の上に転がされた睦月の上に石の板が乗せられる。背中や腕の皮膚が破れ、鮮血があふれ出す。ますます大きく目を見開き、首を振り立てる睦月の姿を楽しそうに笑いながら見下ろし、玲子は石の板の上に腰を降ろした。
「うぐううあああ----っ!!!」
「残りの一時間は、このまま過ごしてもらうわ。うふふ、私はね、ペットのしつけは厳しくすることにしてるの。あなたは特別なペットだから、しつけも厳しいの。嬉しいでしょう? どうでもいいような相手には、ここまではしないもの、私」
 苦悶の表情を浮かべ、苦しげな呻きを漏らして身悶える睦月のことをいとおしそうに見下ろしながら、玲子はそう言って笑った。
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