「それでは、これより、娼婦ラミア・クレイマンに取り憑いた悪魔を祓う儀式を始める」
 厳かな、というよりは、もったいぶった口調で司祭がそう告げる。ここは教会の地下の一室。明かりは壁にかけられた松明だけで、それが一層陰鬱な雰囲気を醸し出している。すっぽりと頭巾で顔まで覆った二人の男が、天井から吊るされた鎖によって両腕を引き上げられ、爪先立ちになっている全裸の女性の前へと進み出た。二人は、大人の腕の長さほどの、よくしなる木で作られた鞭を手にしている。微かに震えながら、ごくっと女性が唾を飲み込んだ。
 非合法とされている娼婦として官憲に捕らえられた時は、最悪そのまま処刑も有り得たのだが、教会での審問の結果、娼婦をしていたのは自らの意思ではなく、悪魔が憑いていたせいだと判定された。そして、悪魔祓いの儀式を受ければ罪を許されると聞かされ、一も二もなしに儀式を受けることを承諾したのだが、いざその悪魔祓いの儀式の場とやらに連れ込まれてみれば、どこからどう見ても拷問部屋としか思えないような部屋だ。彼女が怯え、緊張するのも無理はないだろう。とはいえ、悪魔祓いの儀式を受けることを拒絶すれば待つのは処刑なのだから、彼女に選択の余地などない。
「父と子と精霊の御名に於いて命ず。忌まわしき悪魔よ、速やかに去れ。ここは神の家、汝の居るべき場所に非ず」
 司祭が祈りの言葉を唱えながら、手にした小瓶の中に満たされた聖水を女性の身体へと浴びせかける。冷たい水を浴びせられ、ううっと女性が低く呻いた。
「鞭を」
 司祭の言葉に、頭巾の男たちが鞭を振り上げる。ひゅんっという空気を切る音と共に鞭が振り下ろされ、女性の豊かな乳房にくっきりと赤い筋が刻み込まれた。
「ひいいいいいいいいいいいぃっ!」
 甲高い悲鳴を上げて、女性が顔をのけぞらせる。反り返った背筋へと、もう一人の男が鞭を振るい、ばしんっという乾いた音が響く。
「ああああああああああああぁっ! い、痛い……」
 再び悲鳴を上げて女性が身体をくねらせる。すすり泣くような声を漏らした女性の乳房に、勢いよく鞭が叩きつけられた。
「ひいいいいいいいいいいいいいいいぃっ! あ、ああ、あ……きゃあああああああああああああああああぁっ!」
 乳房に走る痛みに甲高い悲鳴を上げ、ガチャガチャと鎖を鳴らして身悶える女性。時間と共に僅かに痛みが治まったのか、掠れた呻きを漏らす彼女の背を、容赦のない一撃が襲う。鞭打たれる苦痛から逃れようと女性がもがくが、爪先がやっと床につくだけという今の状態では、逃れることなど出来ない。腹の辺りを鞭で打たれ、悲鳴を上げてもがいた拍子に身体が半回転、ちょうど振り下ろされた鞭が乳房を直撃する。
「きひいいいいいいいいいいいいいぃっ! やめっ、やめてっ、もう許してっ!」
「悪魔よ、速やかに去れ。彼女の中に在る限り、汝の苦痛に終わりはない。汝が在るべきはここに非ず、速やかに在るべき場所へと還れ」
 ぼろぼろと涙を流して哀願する女性へと、司祭がそう祈りの言葉を投げかけながら小瓶の中の聖水を振り掛ける。身体のあちこちにくっきりと赤い鞭痕を刻み込まれ、汗と聖水とでびしょ濡れになって女性が喘ぐ。その様子をじっと見詰め、司祭が小さく首を振った。
「まだだ。この程度では、彼女についた悪魔は祓えぬ」
「いやっ、いやあああぁっ! 許してっ、もう許してぇっ!」
 司祭の言葉に、半狂乱になって女性がもがく。その様子を目で指し示し、司祭がもったいぶった声を出した。
「見よ。あのように恥ずかしげもなく股を開くことこそ、悪魔が彼女の身体に潜む証。慎みの欠片もないあの姿は、悪魔がさせているのだ。悪魔を身体の中から追い出し、彼女の魂を救うことが我ら神に仕えるものの務め。一時の苦痛など、悪魔に魂を汚され、死後に永遠の苦しみを味わうことに比べればどれほどのことがあろう。さ、躊躇うことなく彼女を打ち、悪魔を祓うのだ」
 司祭の言葉に頭巾を被った男たちが小さく頷き、手にした鞭を振り上げる。ヒイイィッと甲高い悲鳴を上げてもがく女性の身体を、容赦のない鞭が襲った。
「ひいいいいいいいいいいいいいぃっ! あひいいいいいいいいいいぃっ! いやああああぁっ、きゃああああああああああああぁぁっ! ひいいいいいぃっ! ひいいいいいいいいいいいぃぃっ!」
 乳房、背、尻、腹、太腿。容赦のない鞭が次々に女性の身体を打ち据える。真っ赤な鞭跡が白い裸身に縦横に走り、ところどころ肌が裂けて血があふれる。
「やめっ、しぬっ、死んじゃうっ。きひいいいいいいいぃっ! あひいいいいいいいいいいいぃっ!」
 鞭で打たれるたびに激しく身悶え、甲高い叫び声を上げる女性。打たれるたびに身体にかけられた聖水と汗、そして血が飛び散り、白い肌が赤い鞭痕と鮮血で覆い尽くされていく。
「手を休めるな。悪魔が去るまで、鞭を振るうのだ」
「やめっ、死ぬっ、これ以上は、ほんとに、死ぬぅぅっ!」
 にも拘らず放たれた司祭の冷酷な宣告に、女性がぼろぼろと涙を流しながら悲鳴を上げる。無言のまま頭巾の男たちが鞭を振り上げた。激しく首を振って恐怖の悲鳴を上げる女性へと、まず正面に立つ男が横薙ぎに鞭を振るう。女性の二つの胸の膨らみを鞭が綺麗に水平に打ち抜き、甲高い絶叫を上げて身体を半回転させた女性の股間を、今度はもう一人の男が垂直に振るった鞭が打ち据える。
「うぎゃああああああああああああああああああぁぁっ!?!?」
 獣じみた絶叫を上げ、大きく首をのけぞらす女性。びくびくと痙攣するその身体へと、なおも鞭が振るわれる。ビシッ、バシッという鈍い湿った音が続けざまに響き、とうとう女性は白目を剥いて悶絶した。全身の肌がぼろぼろになり、刻み込まれた鞭痕と流れ落ちる鮮血で全裸であるにも拘らず、赤い服を着ているようにも見える無残な姿となっている。だが、これでもまだ、終わりではない。
「よし、次の段階に移る」
 司祭の言葉に、頭巾の男たちが完全に意識を失っている女性の身体を下ろし、部屋の隅に置かれていた台の上へと横たえる。台、といっても、全体が鉄で作られた重厚なものだ。そして、女性が横たえられた部分は、目の荒い網状になっている。女性の手足を台の四隅から伸びた短い鎖で拘束し、頭巾の男たちは松明をそれぞれ手に取った。
「始めよ」
 司祭の言葉に、男たちが台の下に松明を差し入れる。松明の燃え上がる炎が、網越しに女性の背を炙った。
「ぎっ!? ぎゃあああああああああああぁぁっ!! 熱いっ、熱いいぃっ!?!?」
 意識を失っていた女性が、肌を焼く炎の熱と痛みにかっと目を見開いて意識を覚醒させ、絶叫する。二人の頭巾の男たちは、一人は肩から背にかけて、もう一人は尻から背にかけての範囲に松明の炎をゆっくりと動かし、女性に凄まじい苦痛を味合わせていく。
「アヅッ、アヅイッ、アアアアアアアアアアァッ、ギエエエエエエエエエエエエエエエエェッ!!」
 炎を肌に近づける、などというレベルではなく、網を越えた炎で直接肌を焼かれる痛みに、女性が大きく目を見開いて絶叫し、少しでも炎から遠ざかろうと必死に背を逸らす。だが、手足を短い鎖で拘束された彼女は、どんなに頑張っても数センチ背を網から浮かすのが精一杯、という状態であり、当然、炎から逃れることは出来ない。それでも必死に炎から逃れようとする彼女の動きは、上下左右に腰を振り、胸を弾ませて身悶えるような格好になり、もちろん本人にそんなつもりはないのだろうが、ひどく淫らに男を誘うようにも見える。
「悪魔よ、汝の名を告げ、速やかに去れ。我らは神に仕える者、汝の誘惑など無益と知れ」
「アヅッ、ギャアアアアアアアァァッ、ヤメッ、ジヌッ、ギエエエエエエエエエエエエエエエエェッ、アヅイイイイィッ、ジンジャウウウウゥゥッ!!」
 零れ落ちんばかりに目を見開き、途切れることなく絶叫しながらじたばたと女性が身悶える。直接炎で焼かれる肌からぶすぶすと白い煙が上がり、肉の焦げる嫌な臭いが立ち込める。
「やめっ、ギャアアアアアアアアァッ、熱いっ、ギエエエエエエエエエエエエェッ、ウギャアアアアアアアアアアアアアァァッ!! 出てったっ、悪魔は、もうっ、出てったあああぁっ、ウギャアアアアアアアアアアアァァッ!!」
「悪魔の言葉に騙されてはならぬ。悪魔がその名を告げ、二度と彼女に近づかぬと誓うまで、炎で責めよ」
「イヤッ、イヤッ、イヤアアアアアアアアアアアアアァァッ!! ギエエエエエエエエエエエエエエエェッ、ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!!」
 半狂乱になって泣き叫ぶ女性の言葉に、司祭が冷淡な宣告をする。松明の炎が女性の背と尻とを炙り、女性の声からすさまじい絶叫があふれた。背中を炙る炎から逃れようと背を逸らし、左右に身体を揺する動きにあわせて血塗れになった乳房がブルンブルンと弾む。尻から太腿へと動く炎の熱と痛みに、何とか逃れようと腰を振りながら足を開けば、女性器を見せ付けるように突き出す格好となる。その姿を見やり、司祭がもったいぶった口調で言葉を続ける。
「悪魔よ、そのような淫らな誘惑など無益。汝の名を告げ、去れ。そうする以外、汝が苦痛から逃れる術はない」
「知らないっ、悪魔の、名前なんてっ、知らないいいぃっ! アアッ、ヤメッ、ギヤアアアアアアアアアァッ、許しっ、ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!」
 涙と涎、鼻水で顔をべちゃべちゃにした女性が泣き叫び、炎に炙られてのたうつ。小さく首を振ると、司祭は真っ赤に焼けた焼き鏝を手に取った。丸い円の中に十字架が刻まれたその先端を、ひくひくと痙攣する女性の下腹へと無造作に押し付ける。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!!」
 絶叫を上げて顔をのけぞらせる女性から焼き鏝を離し、司祭がくっきりと刻み込まれた烙印の上へと清めの塩を振り掛ける。焼き鏝を押し当てられて負った火傷へと塩を振り掛けられ、ますます大きな絶叫を上げて女性が身悶えた。
「ウギャアアアアアアアアアァッ!! ガアッ、ギエエエエエエエエエエエエエエェッ!! ジヌゥッ、ジンジャウッ、ユルジデッ、モウッ、ギエエエエエエエエエエエエエエエエェッ!!」
 凄絶な絶叫を上げながら身悶える女性の右乳房に、司祭が焼き鏝を押し付ける。びくんびくんっと身体を大きく跳ねさせ、女性が口から白い泡を吹いて身悶える。依然として網の下ではゆっくりと松明が動かされ、彼女の背や尻などをじりじりと焼き、網自体も炎によって加熱されて触れた肌を焦がす。乳房にくっきりと刻み込まれた十字架の烙印へと塩を刷り込み、司祭が反対の乳房に焼き鏝を押し当てる。
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!! ダズゲッ、デッ、イヤアアアアアァッ、ヤベッ、グギャアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!!」
 ガチャガチャと鎖を鳴らし、半ば白目を剥きながら女性が絶叫する。いったん松明を引き抜かせ、身悶える女性の身体に聖水をふりかけると司祭が問いかけた。
「悪魔よ、汝の名は?」
「知ら、ない……そんな、の、知ら、ない……助け、て……もう……許し、て……ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!? 知らないっ! ほんとにっ、ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェッ!!」
 息も絶え絶えに答える女性の身体の下へと、再び松明が差し込まれる。炎が既にぼろぼろとなった彼女の身体を焼き、再び絶叫しながら網の上で身体をくねらせ始める女性。
「悪魔よ、汝の名を告げよ!」
「ギャアアアアアアアアアアアァッ! 知らないっ! ウギャアアアアアアアアアァッ、熱いっ、やめっ、ギャアアアアアアアアアアアアアァァッ!!」
 司祭が再び語気を強めて問いかけるが、悪魔の名前など知らない女性には答えようがない。正直に知らない、と答えても、司祭は取り合わずますます責めを過酷にする。発狂しそうな激痛に責めさいなまれ、ともかくこの苦痛から逃れたい一心で女性は適当な名前を叫んだ。
「モリガンッ、モリガンッ、名前っ、モリガンッ!」
「嘘をつくな。汝の真実の名前を答えるのだ」
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァッ!!」
 必死に叫ぶ女性の言葉を一蹴し、司祭がじたばたと暴れる彼女の太腿へと焼き鏝を押し当てる。網に押し付けられるような形になった太腿を、網越しに炎が包む。目の前が真っ白になるほどの激痛に、ほとんど思考力を失った女性が思いつく限りに名前を連呼した。
「フェリッ、シアッ…ミー、アッ…ゲパルッ、ト…モーゼ、ルッ…ミレニッ、アアァッ……止めッ、もうっ、アアアアアアアァッ、答え、たっ、のにっ、ギャアアアアアアアアアアアアアァッ!!」
「ええい、しぶとい悪魔だ。汝の真実の名を答えよ。我らに偽りなど通じぬ」
「ギエエエエエエエエエエエエエエェッ! グギャギャギャギャッ、ギャアアアアアアアアアアアアァァッ!! 名前っ、はっ、リリス、リリスうぅっ!!」
 反対の足にも焼き鏝が押し当てられ、下から松明の炎で炙られる。ぶんぶんと激しく首を左右に振りたてながら、女性が絶叫する。ちっと小さく舌打ちを漏らし、司祭がいったん女性の傍を離れた。
「アヅッ、アヅヅッ、アヅイイィッ、ユルジッ、グギャアアアアアアアアアアアアアァッ!!」
 司祭が石炭を燃やし、焼き鏝などを加熱するための炉から先端部分が真っ赤に焼けた一直線の鉄の棒を持ち出す。その間も間断なく背や尻、足や腕を松明の炎で炙られ続ける女性の絶叫は止むことがない。ただ、体力の限界が近づいてきているのか、身悶える動きはだいぶ緩慢に、小さくなってきている。背中側の大部分を松明の炎で焼かれ、火傷を負わされているのだから、それも無理はないが。
「足を開かせよ。悪魔が潜むは女の秘所。ならば、そこを直接責める」
 司祭の言葉に、頭巾の男たちが女性の両太腿に手をかけ、ぐいっと左右に割り開いた。女性が反射的に抵抗しようとするが、その抵抗はごく弱い。大きく割り開かれた女性の股間へと司祭が真っ赤に焼けた鉄の棒を向け、そのままぐいっと秘所へと捩じ込んだ。

「アギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!!」

 今まで上げていた絶叫に数倍する、絶叫。零れ落ちんばかりに目を見開き、顎が外れそうなほど大きく口を開く。ぶくぶくと大量の白い泡を口から吐き出し、女性は白目を剥いた。
 ひくッ、ひくっと痙攣する女性を見やり、司祭が小さく頭を振る。女性の鼻の下に手をやった頭巾の男が、無言のまま首を左右に振った。秘所へと鉄棒を差し込んだまま、司祭が女性の身体へと聖水を振り掛ける。
「主よ、どうかこの哀れな魂をお救いください。死の間際、このものより悪魔は離れたはず。どうか、主の元へとこのものを導き、お救いください」
 司祭の祈りの言葉が、空々しく響いた……。