踊り子


「ちょっと、やめてよっ! はなしてっ、はなしてってばっ!」
 兵士に両腕を掴まれた、肌も露な衣装を身に付けた女がもがく。薄暗い部屋だ。天井には滑車があり、壁には鎖や鞭がぶら下げられている。いわゆる、拷問部屋という奴だ。
「騒々しい女だ。少しは、おとなしくせんか」
「い、いきなりこんなところに連れてきて、アタシをどうするつもりなの!?」
 彼女の正面の椅子に腰かけた、僧衣をまとった男が苦笑混じりの言葉をかける。恐怖の表情を浮かべ、身をよじりながら問いかける女へと、男--異端審問官が軽く肩をすくめる。
「分からんのか? 貴様には、魔女の疑いがかけられておる。今から、その取り調べを行うのだ」
「魔、魔女、ですって!? 違うわっ、アタシは、魔女なんかじゃない! どうして、魔女の疑いなんてかけられなきゃいけないのよ!?」
「あのような場所で、そのように肌を露にして男を誘惑するなど、魔女の所行でなければ何だというのだ? うん?」
「な、何を言ってるの!? ア、アタシはただの踊り子よ。魔女なんかじゃ……」
 異端審問官の言葉に、女が動揺の表情を浮かべる。くくっと低く笑うと、異端審問官は軽く肩をすくめる。
「魔女であることを否定するか。愚かな。素直に認めれば、痛い目にあわずに済んだものを。……おい、始めよ」
「いっ、いやああああああぁっ!!」
 異端審問官の言葉に、兵士たちがびりびりびりっと女の衣服を破り、剥ぎ取る。元々、薄く布地の少ない衣装はあっさりとすべて引き裂かれ、女は一糸まとわぬ姿になった。更に兵士たちは天井の二つ並んだ滑車にそれぞれロープを通し、その端を女の両足首に結び付け、巻き上げ機を用いて女の身体を逆さに吊るし上げる。
「ひっ、ひいいぃぃっ! お願いっ、やめてっ、アタシは、魔女なんかじゃ、ないっ!」
 両手首を縛られ、女が身体をよじって悲痛な声を上げる。異端審問官が顎をしゃくり、兵士の一人が壁から皮鞭を取って女の前に進み出た。恐怖に表情を引きつらせる女へと、兵士が無言のまま鞭を振るう。
「きゃああああぁっ!」
 ぱしーん、と、乾いた音が響き、女が背を反りかえらせて悲鳴をあげる。
「きゃああああぁっ! ひいいいぃっ! いやああああぁっ! ひいいいいぃっ!」
 ぴしーんっ、ぱしーんっ、ぴしーんっと続けざまに乾いた鞭音が響く。その度に女は身をよじって悲痛な悲鳴を上げた。正面から振るわれた鞭は背中側へと回り込み、彼女の背中に赤い鞭跡を刻む。
「嫌っ、許してっ、アタシはっ、魔女なんかじゃ……きゃあああああぁっ!」
 ピシーンッ!
「ひいいぃっ!」
 パシーンッ!
「あああぁっ!」
 ピシーンッ!
「イヤアアアアァッ! もうっ、やめてぇっ!」
 パシーンッ!
「きゃあああああぁっ!」
 ピシーンッ!
「ヒイイイィッ!」
 単調に鞭音が響き、女が甲高い悲鳴を上げて身をよじる。背中には何本もの鞭跡が刻まれ、腹や胸にも赤い筋が浮かぶ。ぼろぼろと涙を流し、身悶える女へと、異端審問官が問いかける。
「魔女であることを、認めるか?」
「ち、違う、アタシは、魔女なんかじゃ……ひいいいぃっ!」
 懸命に首を振り、否定する女の胸をしたたかに鞭が打ちすえ、女が悲鳴を上げて背をのけぞらせる。ふむ、と、小さく呟くと異端審問官は兵士たちにめくばせを送った。鞭を振るっているのとは別の兵士が、壁のハンドルに歩みより、ゆっくりと回す。ごごご、という低い音と共に仕掛けが作動し、天井の滑車が左右に移動を始める。当然、そこを通るロープも左右に分かれ、女の足が左右に割り開かれていく。
「あっ、何……? ひいっ! 嫌っ、痛いっ! きゃあああああぁっ!」
 足を割り開かれ、動揺の声を上げる女。しかしそこに兵士の振るう鞭が飛び、乳房を打たれて悲鳴を上げる。兵士の方は仕掛けの動きを気にもとめず、単調なリズムで鞭を振るい、乾いた音を上げさせる。
「ひいいぃっ! あ、あう、あ……きゃあああぁっ! ゆ、許して、アタシは……きゃああぁっ!」
 乾いた鞭音が響き、女が悲鳴を上げて身をよじる。その間にも滑車の仕掛けは動きつづけ、女の足を90度よりもやや広いぐらいにまで割り広げてしまう。
「強情な女だ。では、悪魔と交わった部分を責めるとしよう」
「え……? ま、まさか……嫌っ、やめてっ、そんなところを打たれたら、アタシ、死んじゃうっ!」
 異端審問官の言葉に、女が恐怖の表情を浮かべて激しく首を振る。にやにやと笑いながら異端審問官が軽く片手を上げ、ひゅっと振り降ろした。兵士が鞭を振り上げ、割り開かれた女の股間を容赦なく打ちすえる。
「キヒャアアアアアアアァッ!!」
 敏感な秘所を容赦なく打たれ、女が目を見開いて絶叫を上げる。背筋を反りかえらせ、ぶるぶると身体を痙攣させる女の悲鳴が掠れて消えるのをみはからい、兵士が再び鞭を振るう。
「ギャアアアアアアアアァッ!!」
 敏感な粘膜を皮の鞭が直撃し、身体がバラバラになったのではないかと思うような激痛が女の身体を貫く。濁った絶叫を上げ、目を向いて女が身体を反りかえらせた。
「自分が魔女であると認めるまで、打ちつづけるのだ」
「ウッギャアアアアアアアァッ!!」
 バシーンッ!
「グギャアアアアアアアァッ!!」
 ビシーンッ!
「ジヌッ、ギャアアアアアアアァッ!!」
 バシーンッ!
「ヒギャアアアアアアアアァッ!!」
 ビシーンッ!
「ギャビャアアアアアアアアアァッ!! 認めますっ、認めますからっ、もうっ、許してぇっ!!」
 敏感な粘膜を痛めつけられ、涙と鼻水とで顔をべちゃべちゃにして女が絶叫する。軽く異端審問官が片手を上げ、鞭打ちを止めさせた。
「あ、あう……ひ、ひいぃ……」
 半ば白目を剥きかけ、掠れた呻きを女は上げた……。