電気責め


「あ、あ……いや、やめて……」
 十四、五歳程の少女が、恐怖に掠れた声を上げて小さく首を振る。彼女は衣服をすべて剥ぎ取られた上で分娩台を思わせる台に寝かせれ、両手、両足を拘束されていた。両腕は頭の上の辺りで手首に革ベルトを巻かれ固定されており、両足は椅子から伸びた二つの台に膝の部分でやはり革ベルトで固定されている。膝の部分での拘束だから、そこから下は自由に動くのだが、足をばたつかせたところで宙を蹴るばかりだ。
 ヘッドバンドのように額には金属製のベルトが巻かれ、そこからはコードが伸びている。コードの先の機械から延びた別のコードは、途中で二つに分かれ、素足の少女の両足首に巻かれたベルトに繋がっている。
 彼女をこの台に拘束した数人の男たちは、彼女の理解できない言葉で何かを言いあいながら少女のことを眺めている。時折笑いを交えた男たちの会話の内容は分からないものの、自分の置かれた状況に強烈な不安と恐怖を感じ、少女は震えながら懸命に哀願の声を上げた。しかし、その言葉は無視され、やがて一人の男が機械に歩み寄って無造作にそこから突き出たレバーを倒す。
「きゃああああああああああああぁっ!?」
 全身を衝撃が駆け抜け、少女は絶叫を上げた。自然と身体が反りかえり、激しく痙攣する。げらげらという笑い声が耳に届いたが、それを気にしている余裕などどこにもない。全身が燃えるように熱く、ビリビリとしびれる。
「ひあ、ひっ、ひぃぃ……」
 永遠に続くかと思えた衝撃が過ぎ去り、どさっと台の上に身体を投げ出して少女は喘いだ。激しく心臓が脈打ち、全身にびっしょりと汗が浮かぶ。
(何で、私が、こんな目に……)
 ぼんやりと少女がそう考えた次の瞬間、再び少女の全身を衝撃が貫いた。
「きゃああああああああぁっ! あああぁぁぁああああああぁぁぁぁああああぁあぁあぁあああぁぁああぁぁああ」
 一回目よりはやや弱い衝撃が全身を駆け抜ける。弱い、といっても、それまでに少女が味わったこともないような熱さと痛みを伴っていた。それだけでなく、最初の衝撃が消えぬまま、更に強い衝撃が断続的に少女の身体を貫く。衝撃に翻弄されるように悲鳴を不安定に上下させながら、少女ががくがくと身体を跳ねさせる……。

「あははははは、いい腰の振りじゃねえか、おい」
「まったくだ。こいつの腰振り音頭は絶品だぜ」
「悲鳴もそそるねぇ。言葉は違っても、あげる悲鳴は変わらねえからなぁ」
 電圧を変えた通電に、悲鳴を上げながら弓なりに身体を反りかえらせた丸太の少女が腰を上下に揺らす。少女の悲痛な叫びと、電気ショックによる身体の痙攣を眺めながら緋号部隊の隊員たちが笑い声を交わす。腕時計を見ながら時間を計っていた隊員の一人が通電レバーを戻し、少女を電気ショックから解放した。どさっと台の上に崩れ落ち、大きく肩を上下させて喘ぐ少女。水でも浴びたかのように全身にびっしょりと汗を浮かべ、はぁはぁと喘いでいる。嗜虐心をそそるその姿に、隊員たちがにやにやと笑いを交わす。
「あひいいいいいぃぃっ! ひいぃぃいいいぃぃぃいいいいぃいいぃぃぃいいぃいぃぃいぃっ!」
 僅かに少女が息をついた頃を見はからって、再び通電レバーが倒される。少女の全身を電流が貫き、甲高い悲鳴が響き渡った。男たちのほうに腰を突き出し、上下に揺さぶって少女が絶叫を上げつづける。きゅうっと足の指を丸め、少女の足が激しく宙を蹴っていた。
「ひっ、ひぎぃ……」
 掠れた呻きを漏らし、通電から解放された少女ががっくりと顔を伏せる。半開きになった口からよだれが滴り、焦点を失った瞳が宙をさまよう。ぐったりとしている少女の汗に濡れててらてらと光る幼い裸身を、にやにや笑いながら男たちが撫でまわした。男たちの手が肌の上をはいまわり、乳房や秘所をまさぐっても少女は反応を示さない。そんな余裕など、ないのだ。
「そぅら、踊りなっ」
「たっぷりと腰を振ってなぁ」
「キヒャアアアアアアアアアァァッ!! ああぁああァああアアアアアァアあああぁああアアアァあァああ!!」
 男たちの手が離れ、笑いと共に少女の身体を電気ショックが襲う。大きく目を見開き、弾かれたように頭をのけぞらせ、狂ったように宙を蹴りながら少女は激しく身体を震わせ、腰を上下させる。音程も音量も不安定な絶叫が少女の口からとめどなくあふれ、それに男たちの笑い声が混ざる。
 緋号部隊において、丸太は申請さえすれば自由に使える。一応、申請は士官以上でなければ出来ないことになっているが、実験に申請した士官が立ち会わなければならないという決まりはないし、実験内容も自由だ。時には、部隊員に頼まれて、彼らの娯楽にするために申請を出す事だってある。
 時折休憩を挟みながら、少女は踊りを踊りつづける。男たちが飽きるまで、ずっと。比較的ありふれた、緋号部隊の昼下がりの出来事だった……。
「キャアアアアアアアアァッ! アアアアァアアアァアアアアァァァアアアァッ!!」
(何、で、私、が……? どう、して……?)