「閣下、例の女を連れてまいりました」
「うむ」
 扉の外からかけられた言葉に、椅子に腰掛けていた初老の男性が頷く。壁に背を預けていた青年が、くくっと低く笑った。
「さて、素直に話しますかな?」
「素直に話せば、それでよし。話さなければ……おぬしの出番だ」
 不遜な青年の物言いに、特に気分を害した様子も見せずに老人がそう応じる。くくっと再び低く青年が笑いを漏らしたとき、扉が開いた。
「ほら、入れっ」
「あうっ」
 背中を小突かれ、半ば突き飛ばされるようにして後ろ手に拘束されたまだ二十歳そこそこの女性が部屋の中へと入ってくる。不安げな表情を浮かべている彼女へと、老人が重々しい口調で問いかけた。
「カーナ・ディアグスだな?」
「そ、そうですが……あなた方は一体!? 何故、私がこのように罪人のような扱いを受けなければならないのです!?」
「それは、君の妹、サーラ・ディアグスが禁忌に触れたためだ」
 いきなりここに連れてこられて混乱しているのか、詰問口調で叫ぶカーナへと、重々しい口調のまま老人が答える。え? と、目を丸くした彼女へと、壁に背を預けたまま青年が苦笑を浮かべて見せた。
「彼女は、禁止されている古代兵器に関して研究をしていた。ま、そのことがばれて、彼女は拘束されたわけなんだけど……彼女が言うには、君も同じ研究をしていたそうだね?」
「し、してません! 私は、そのような研究など! 誓って、そのような研究をしたこともなければ、興味を持ったことさえありません!」
「おや、そうなのかい? けど、彼女は、むしろ君の方が先に研究を始めたと言っていたけど? 自分は、姉の手伝いをしていただけだ、とね」
 くすくすと笑いながら青年がそう言うと、カーナは更に大きく目を見開いて激しく首を左右に振った。
「そんな馬鹿な! 私は、無関係です! そもそも、ここ数年、妹とは連絡を取ることすらほとんどしていません。あの子が古代兵器の研究をしていたなど、初耳です」
「おやおや。彼女は、自分は姉に命じられてやっていただけで、全ての資料は姉の元に送った、とも言っていたけど?」
「そんな……! 嘘です。お願いです、妹に会わせてくださいっ。そうすれば、妹が言っていることが出鱈目だって、分かってもらえるはずですっ」
「残念ながら、それは無理だねぇ。何しろ、彼女はもう既に、この世にいないから」
 さらりと言われた言葉が一瞬理解できず、呆然とした表情を浮かべるカーナから視線を老人のほうへと移し、青年が肩をすくめて見せる。
「予想通りとはいえ、やはり素直に認めるつもりはないようですね。では、これ以降、彼女の身柄は私のほうでお預かりするということでよろしいですかな?」
「……やむを得まい」
 憮然とした表情を浮かべる老人へと、青年は慇懃な笑みを浮かべて一礼して見せた……。

「離してくださいっ。離して! 私は無実ですっ! 本当に、無実なんですっ!」
 有無を言わせずに連行された、地下拷問部屋。そこで衣服を全て剥ぎ取られ、両腕をすっぽりと頭巾で顔を覆った拷問吏に掴まれたカーナが激しく身をよじりながらそう叫ぶ。もっとも、彼女の力では、屈強な拷問吏たちの腕を振り解くことなど出来ない。そんな彼女のむなしい足掻きを薄く口元に笑みを浮かべて見やりつつ、青年は軽く肩をすくめて見せた。
「無実を主張したいなら、別に構わない。私は、私の務めを果たすだけのことだからねぇ」
「いやっ、いやああああああああぁぁっ!」
 甲高い悲鳴を上げるカーナの身体を、拷問吏たちが台の上にうつぶせに横たえる。暴れる彼女の身体を押さえつけ、拷問吏たちはカーナの両手首と両足首にロープをきつく巻きつけた。
「君が苦痛から逃れる術は、一つだけ。素直に自分の罪を認めればいい。それ以外の手段では、君が苦痛から逃れることは出来ないと、あらかじめ言っておこうか」
「認めるも何も! 私は本当に、何の罪も犯してはいません! 本当ですっ、信じてください!」
「ふふっ、さて、いつまでそう言っていられるかな?」
 カーナの懸命の訴えに、むしろ嬉しそうな笑みを浮かべると青年は軽く手を上げて合図を送った。拷問吏たちが巻き上げ機のハンドルに手をかけ、回し始める。
「あっ、ああっ、いやっ、いやああああああぁぁっ! あぐああああああぁぁっ!」
 手足に縛り付けられたロープが巻き取られていき、カーナの身体が上下へと引き伸ばされていく。しかも、単に一本の棒のように引き伸ばされていくのではない。彼女の手足に結び付けられた四本のロープは、巻き上げ機の左右の端に立てられた支柱を経由している。つまり、X字型に引き伸ばされていくことになるのだ。
「うあぁっ、ああぁっ、うああああぁぁっ! 腕がっ、足がっ、抜けるうぅっ! 痛いっ、痛い痛い痛いっ! ああああああああぁっ!」
 髪を振り乱し、カーナが泣き叫ぶ。くくっと喉の奥で笑い声を漏らすと、青年は台の上で身悶えるカーナの下へと歩み寄り、髪を掴んでぐいっと仰向かせた。
「君は禁止されている、古代兵器の研究を行っていた。そうだね?」
「違い、ますっ。私っ、はっ、そんなこっ、とっ、してっ、ませんっ」
「ふぅん?」
「私っ、はっ、あああああああぁぁっ!!」
 全身を引き伸ばされる苦痛に、切れ切れに否定の言葉を紡ぐカーナが、更に巻き上げ機を動かされて絶叫を上げる。手足の関節が外れそうな激痛に全身にびっしょりと汗を浮かべて喘ぐカーナのことを、楽しげな笑みを浮かべて見下ろしながら青年は軽く片手を上げた。
 拷問吏たちが、青年の合図に応じて動く。まず、カーナのことを寝かせていた台の横の部分を外し、更に上蓋に当たる部分の留め金を外す。ばたん、と、カーナが今まで寝ていた部分が二つに割れて下に落ち、彼女の身体が宙に浮いた状態になる。引き伸ばされていた全身に更なる負荷がかかり、カーナが絶叫を上げた。 「あぐあああぁぁっ! やめっ、やめてえぇっ! 身体がっ、ばらばらにっ、なるっ、千切れるっっ!」
「まだ始まったばかりだ。ゆっくりと楽しんでくれ」
「こ、これッ、以上、何をっ!?」
 青年の言葉に、悲鳴を上げるカーナ。くくっと低く笑うと、青年は燃え盛る松明を拷問吏から受け取った。
「これを使う」
「ひっ、まさか……ひぎゃああああああああああああああああぁぁっ!!」
 顔を青ざめさせたカーナの身体の下に、無造作に松明が差し入れられる。ゆらゆらと揺れる炎に腹の辺りを炙られ、カーナが絶叫を上げた。
「あぎゃああああああああああぁぁぁっ! うぎゃああああああああああああああああああぁぁっ! ぎええええええええええええええええええええええぇっ!!」
 笑いながらゆっくりと青年が松明を動かす。炎が白い肌を炙り、カーナの口から絶叫があふれる。右手で松明を動かしながら青年が軽く左手を上げ、拷問吏たちが巻き上げ機を動かした。
「ぐああああああああああああああああああああああああぁぁっ!!」
「あまり暴れると、手足の関節が外れるよ?」
 更に身体を引き伸ばされて絶叫するカーナへと、くすくすと笑いながら青年がそう告げる。告げつつ、青年は松明の炎をカーナの胸へと押し当て、完全に彼女の胸の膨らみを炎で包んだ。
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァッ!!」
 かっと目を見開き、カーナが激しく全身を痙攣させる。すっ、すっと、炎を彼女の身体に近づけたり離したりを繰り返しつつ、青年がカーナへと問いかけた。
「君は、禁じられた研究をしていた。そうだね?」
「違、い、ま……ぎゃああああああああああああぁぁっっ! 熱いっ、胸がっ、燃えるっ! やめてえええぇっ! ぎゃあああああああああああああぁぁっ!!」
「止めて欲しいかい? 最初に言っただろう? 君が苦痛から逃れるには、どうすればいいかは」
「熱いっ、熱いっ、やあぁッ、ギャッ、ギャあああああああぁっ! 止めてっ、もうっ、許してええぇっ!!」
 全身にびっしょりと汗を浮かべ、宙に吊られた身体をくねらせながらカーナが叫ぶ。すうっと胸から腹の辺りまで撫でるように松明の炎を動かし、青年が問いかける。
「認めるのかな? 君が、禁じられた研究をしていたということを?」
「認め、ますっ、からあああぁっ、もう止めてえええええええええええええぇっ!!」
 苦痛に耐え切れなくなったのか、カーナがそう絶叫する。ふむ、と、小さく呟くと、いったん青年は松明の炎を彼女の身体から離した。
「あ、ああぁ、うああぁ……降ろして、早く、降ろして……身体が、千切れそう……」
 松明の炎による火責めからは解放されたものの、依然として全身を引き伸ばされ、宙吊りにされていることには変わりがない。その苦痛だけでもかなりのものだ。ぼろぼろと涙を流しながら、訴えるカーナへと青年が苦笑を浮かべながら首を横に振って見せた。
「いや、まだ君をそこから降ろすわけにはいかないな」
「ど、どうして!?」
「君を解放するのは、君が全ての質問に答えてからだ。そう、君が研究していた古代兵器に関する情報を、全て話してもらう」
 青年の言葉に、カーナが目を見開く。ふふっと楽しげに笑うと、青年はカーナへと問いかけた。
「さあ、話してもらおうか。古代魔法王国の作り上げた究極の兵器、かつて世界を七日七晩で滅ぼしたという『神殺し(ゴッドベイン)』について」
「そ、それは……」
 青年の言葉に、カーナが口篭る。『神殺し』。大陸でも最も魔法に関する研究が盛んなこの国では、子供でもその名を聞いたことぐらいはある。だが、それに関して研究を行うことは、最大級の禁忌とされ、その詳細に関して知るものはほとんどいない。青年が口にしたように、かつて世界を滅ぼしたといわれる兵器だからだ。その力を復活させれば、自らが大陸に覇を唱えることが出来るかもしれない。だが、それ以上に、再び世界を滅ぼすことになるかもしれないという恐怖が、この国の支配者たちにそれに関する研究を禁忌とさせてきた。もっとも、自分たちへ反旗を翻す者たちにその力が渡るのを恐れた、というのが本当のところかもしれないが。
「私が聞いた話では、『神殺し』とはかつて魔法によって生み出された生体兵器だとか。全部で五体が作られ、名は確か……ライア、パールパ、テュッティス、ボルディック、アルフィ。彼らは自らの意思を持ち、創造主たちの制御を離れ互いに熾烈な戦闘を繰り広げた。世界を滅ぼすほど熾烈な戦いをね」
 青年が語る言葉に、カーナが大きく目を見開く。彼女は、古代兵器の研究をしてなどいない。当然、『神殺し』についても、世間一般で知ることしか知らない。青年の語る内容は、初めて聞くことだった。そんな彼女の反応を楽しむように、青年が言葉を続ける。
「そして、戦いを終えた彼らは、この大陸のいずこかで眠りについた、と、そう言われている。もっとも、彼らが眠る場所がどこかとか、どうすれば目覚めさせるか、なんてことは、それこそ禁忌の研究をしている人間しか知らないことだけどね」
 軽く肩をすくめてそう言うと、青年はカーナの顔を覗き込んだ。
「さ、話してもらおうか。『神殺し』が眠る地と、その目覚めさせ方を」
「そ、そんなこと、知りませんっ」
「おやおや……そんなはずはないだろう? さっき君は、自分が禁忌に触れる研究をしていたと、認めたじゃないか。絶対確実とはいえないまでも、推測ぐらいは出来ているんだろう?」
 青年がそう言うが、元々カーナはそんな研究などしていない。ただ苦痛から逃れたい一心で研究していると認めたものの、その内容に関して質問されても答えられるはずもない。
「私の、研究は、まだ……そこまで、進んで、いません。さっき、あなたが、口にした、内容と、ほぼ同じ、段階で、止まっています」
 苦し紛れに、そう告げるカーナ。研究をしていたのは事実だが、ほとんど何も分かっていないも同然だということにすれば、これ以上質問されずに済むとそう考えての返答だ。だが……。
「嘘はよくないな。君の妹は、もっと色々知っていたよ? もうほとんど『神殺し』の眠る地を特定できる段階まで進んでいるんだろう?」
「そんなことはっ、ありませんっ! 本当、ですっ!」
「ああ、そう。じゃ、仕方ないな」
「ひいぃっ! やめっ、ぎゃああああああああああああああああぁぁっ!!」
 再び青年の手にした松明がカーナの身体の下へと差し込まれる。素肌を炎で炙られる、灼熱の痛み。絶叫を上げて身悶えるカーナの姿を楽しげな笑みを口元に刻んで見やりながら、青年が片手を上げて合図を送る。その合図に、拷問吏たちは燭台の準備を始めた。中央のものと同じ高さになるように枝を四本張り出させ、同時に五本の蝋燭を立てられるようになった燭台へと、蝋燭が立てられ火が点される。
「君が素直に話す気になるまで、せいぜい楽しませてもらおうか」
「や、め、て……もう、許し、て……」
 息も絶え絶えになっているカーナの身体の下へと、燭台がいくつも並べられる。松明の炎とは比べ物にならないほど小さい炎だが、肌を焼かれる痛みに変わりはない。むしろ、全身を満遍なく炙られる今の状態のほうが、苦痛は激しいかもしれない。
「ああっ、ああっ、あああああぁぁっ! 死ぬッ、焼けるッ、死ぬううぅぅっ!! くああああああああああああああぁぁっ!!」
 悲痛な叫び声を上げながら、カーナが苦痛から逃れようと身悶える。だが、ぴんと全身を引き伸ばされた状態でもがけば当然、全身に激痛が走る。しかも、そうやってもがいたところで身体を動かせる範囲はほとんどないに等しく、蝋燭の炎から逃れることも出来ない。かえって自らの苦痛を増すだけの愚かな行為だ。しかし、例えそうと分かっていたとしても、我慢してじっとしていられるほど生易しい苦痛でもない。
「許し、てッ、もうっ、やめっ、てええぇっ!! あああああぁっ! 熱いっ、死ぬっ、焼け死ぬううぅぅっ!!」
「止めて欲しければ、質問に答えることだね。……答えられるものならば、だけど」
 くくっと嘲るように笑うと青年が拷問吏に合図を送って巻き上げ機を更に回させる。喉が裂けんばかりに絶叫を上げて顔をのけぞらすカーナの姿に笑みを浮かべつつ、青年は壁にかけられていた長いイバラ鞭を手に取った。ひゅっと軽く一振りして具合を確かめ、満足そうに頷く。
「さあ、これはどうかな?」
「やあぁっ! やめっ、嘘っ、嘘でしょっ、いやあああああああぁぁっ!!」
 鋭い棘の無数に生えた凶悪な鞭に、カーナが恐怖に引きつった絶叫を上げる。くくっと低く笑い、青年はぴんと張り詰めたカーナの背中へと鞭を振り下ろした。
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァッ!!!!」
 肌と肉とが弾け、鮮血が飛び散る。かっと目を見開いて絶叫するカーナの背へと、二撃目、三撃目の鞭が振るわれた。
「ギエエエエエエエエエエエエェエェェッ!! グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!!
 あ、ぎ、あ……あぁ……ぁ」
 濁った絶叫をあふれさせ、びくびくとカーナが全身を痙攣させる。口の端に白い泡が浮かび、ぐるんと白目を剥いたかと思うと、そのままカーナは意識を失った。弛緩したカーナの股間から、ちょろちょろと小水がこぼれる。
「おや、もう気を失ったか。脆いものだね」
 苦笑を浮かべながらそう呟き、青年が拷問吏たちへと合図する。両掌いっぱいに荒塩を盛った拷問吏が、無造作に気絶したカーナの背にそれを擦り込んだ。
「ギャウウゥゥッ!? グアッ、ガアアアアアアアァァッ!?」
 元々、浅い失神だったのか、傷に塩を擦り込まれる刺激にびくんっと大きく跳ねてカーナが絶叫し、身悶える。
「お目覚めかな? じゃあ、続きだ」
「やめっ、てええっ! 知らないっ、私は何も知らないっ! もう許してええぇっ!!」
「なら、そのまま死んでもらうまでさ」
 ぼろぼろと涙を流しながら半狂乱になって叫ぶカーナへと、笑いながら青年がそう告げる。顔を引きつらせ、動揺と苦痛のあまりまともな言葉になっていない叫びを上げるカーナの背に、拷問吏たちが革鞭を叩きつけた。
「アギャギャギャギャッ! ギャウゥッ! グギャアアァッ! ヒギイィィッ!!」
 カーナの左右に二人づつ立った四人の拷問吏たち。彼らが振り下ろす革鞭が、びしっ、ばしっ、びしっと続けざまに鳴る。白い肌がたちまちのうちに真っ赤な鞭痕で埋まり、裂けた傷口からあふれる血がカーナの背を赤く染め上げた。
「ギャッ! アァッ! ガッ! ギイィッ! ギャウッ! アガッ! ギヒィッ! ヤッ! ベッ! デエェッ! ギャウゥッ! ギエエェッ! アギャッ! ギャッ! ガアッ!」
 鞭の連打に、悲鳴の上に悲鳴が重なる。もはや喋ることも出来ず、鞭が背や尻に当たる度に身体を跳ねさせて短い絶叫を上げることしか出来ない。痛みに身体が跳ねる度に関節が軋み、身体の前面を蝋燭の炎で焼かれる痛みは止む事がない。間断なく繰り出される鞭の痛み、軋む手足の痛み、身体を焼かれる痛み。意識の全てが苦痛によって塗り潰され、もはや何かを考えることさえ難しい。
「ギャッ! グギャッ! ギイッ! ギャッ! アギッ! ガアッ! アアッ! ヒギッ! ガッ! ギャウゥッ! ギエエッ!!」
 口から白い泡を飛ばし、半ば白目を剥きながらも気絶することも出来ず、カーナが泣き叫ぶ。更に追い討ちをかけるように、青年が笑いながら片手を上げ、巻き上げ機が動かされた。ゴキッ、バキッとカーナの手足から鈍い音が続けざまに響く。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!?!?!!」
 獣の咆哮にも似た、絶叫。それでも、容赦なく拷問吏たちの鞭が痙攣するカーナの身体を打ち据える。既にぼろぼろになった彼女の背からは鞭で打たれるたびに鮮血の飛沫が飛び散り、口からは絶叫があふれた。
「ウギャアァッ! ギャアアアッ! ヒギイイイィッ! グギェエエエッ!! ガアアアァァッ!! ジヌウゥッ! ウギャギャギャギャッ! ギャウウゥッ!!」
「さて、死ぬのと狂うの、どちらが早いかな?」
 全身を支配する激痛に、獣じみた絶叫を上げながら身悶え続けるカーナ。その姿を見やりつつ、青年が楽しげにそう呟いた。かなり早い段階、いや、それこそ初めの段階から、彼にはカーナが古代兵器の研究に手を染めていない、ということは分かっていた。だから、彼女が死んでも何の問題もない。もしも万が一、本当に古代兵器の研究をしていたのならば、それに関する情報を引き出すためにも殺すわけにはいかなかったのだが。
「ギャウウゥッ! イギャアアアアァッ!! ヒギイイイイイイイィッ!!」
 泣き叫ぶカーナのことを見つめ、青年は楽しそうに笑った。
 そして、カーナへの責めは、そのまま、彼女が息絶えるまで中断されることはなかったのである……。