サマナー


「我が声を聞き、我が声に応えよ。界の狭間を越え、我が元に来れ……」
 床に描かれた召喚用の魔法陣の中央に立ち、緊張した表情で少女が呪文を唱える。三角形を描くように魔法陣を取り囲むかがり火の炎が大きく揺らぎ、彼女の影を壁で踊らせる。だが、少女の呪文が終わり、周囲に静寂が訪れても何も起こらない。
「また、失敗……? 私の力じゃ、足りないの……?」
 明らかに気落ちしたような表情でそう呟き、少女が小さく首を振る。しかし、失意の表情で魔法陣から彼女が足を踏み出した時、唐突にバリバリバリっという音が響き渡った。
「え……!? な、何……!?」
 意表をつかれ、動揺の表情を浮かべて少女が魔法陣を振りかえる。魔法陣の中央部分の空間が揺らぎ、そこから闇があふれ出してくる。
「そんな……! 召喚の門だけが開いたの……!?」
 サマナーの呪文は、二つの効果が組み合わさって出来ている。召喚の為の門を開く効果と、そこから呼び出した魔物(ではないこともあるが)を支配、制御する効果の二つだ。そして、最悪の失敗、それは魔物を呼び出すことには成功したものの制御に失敗した場合、だ。
「きゃあっ」
 あふれ出す闇の中から、びゅっと何本もの緑色をした触手が飛び出し、少女の手足、胴体に絡みつく。焼けるような痛みを感じ、悲鳴を上げた少女の身体がぐいっと触手に引かれ、床の上に転がった。その動きで自分自身の身体も門から引き出したのか、それがゆっくりと闇の中から姿を現す。
「ス、スライム……!? うあぁっ!」
 ドロドロとした、不定形の粘液の塊。汚らしい緑色のそれが、意外なほどのすばやさで飛び上がり、少女の身体に襲いかかる。古代に栄えた魔法帝国で生まれた、魔法生物を作り出す時の失敗作、と、そう言われているが、これでかなりの強さを持つ魔物だ。何しろ不定形な身体のために通常の武器による攻撃はほとんど意味をなさず、身体を構成する素材の影響で魔法に対してもかなりの耐性を持つ。通常の炎に対する耐性は普通の生物並みだが、それ以外の手段ではほとんど傷つけることも出来ない。
「いやっ、助けて、誰か……きゃああああぁっ!」
 ドロドロとした粘液を身体に浴び、少女が悲鳴を上げる。スライムのサイズはまだそれほど大きくなく、不定形の身体を触手状にして少女の身体に絡ませているような状態だ。スライムに絡みつかれた部分の衣服が溶け、素肌があらわになる。スライムは強力な消化液の塊でもあるのだ。金属、石は溶かすことが出来ないようだが、それ以外のものはすべて溶かし、吸収・同化してしまう。
「ああっ、熱いっ、ひいっ、誰か、誰かぁっ。ああっ、ひいっ、ひいいぃっ! 灼ける、身体がっ、ひいいぃっ!」
 悲鳴を上げてもがく少女。服が溶かされ、あらわになった白い素肌に緑色の粘液が触れるとじゅうっと白煙が上がり、赤く腫れ上がる。スライムに絡みつかれ、自由に動かない身体をくねらせ、激しく頭を振って少女が絶叫する。全身を炎であぶられたような熱さと痛みが包み込み、大きく見開いた目から涙をぼろぼろとこぼして少女がのたうつ。
「ぎひいいぃっ、ひいっ、ヒイイィッ! 熱いっ、アアッ、ひいいぃっ! イヤアアアアァッ!!」
 触手状のスライムの身体が少女の身体を包み、はいまわる。服が残っている部分では服を溶かし、素肌があらわになっている部分では肌を溶かし、血を滴らせる。うねうねとうごめくスライムの身体の一部が、少女の股間の辺りに触れ、その辺りを覆う服を溶かし、秘所へとべちゃりと張りつく。
「ギャアアアアァッ! ギヒャアアアァッ! 灼け、灼けるぅぅっ! ギャアアアァッ!!」
 秘所の割れ目の中へとスライムの一部が触手のように伸び、侵入する。敏感な粘膜を灼かれ、少女の口から獣じみた絶叫が上がる。床の上でのたうちまわる少女の二つのふくらみをスライムの身体が覆い、敏感な突起を溶かす。スライムの一部は更に伸びて秘所の奥へと入り込み、別の部分が肛門から少女の体内へと入り込む。
「グギャアアアアアァッ!! ギャヒャアアアアアアァッ!! グウギャアアアアアァッ!!」
 肌が溶け、肉が溶ける。少女の身体を溶かすにつれ、スライムはその身体を大きくしていく。首から下全体にスライムが薄く広がって少女の身体を包み込み、まるで身体にぴったりとあった緑色の服を着ているような姿になって少女が床の上をのたうちまわる。
「熱っ、灼けっ、ギャアアアアアァッ! ヒギャッ、ギャッ、ギャアアアアアアアァッ!!」
 ふるふると震えるスライムに身体を覆われ、ゆっくりと全身を溶かされながら少女が悲痛な絶叫をあげる。秘所と肛門からスライムの一部が彼女の体内に入り込み、内側からも溶かす。肌と肉が溶け、スライムに吸収されていくのを感じながら、少女は強烈な熱さと痛みに半狂乱になって泣き叫ぶ。
「グギャアアアアアアアァッ!! ギャアアアアアアアアァッ!! お腹、がっ、ウギャアアアアアアアアァッ!!」
 腹の辺りの肉が溶け、開いた穴からスライムが入り込む。内臓にもスライムが触れ、溶かされる。ごぶうっと口から血の塊を吐き出し、少女がもがき、のたうつ。
 ……少女の師匠でもある祖母が家にかえって来た時、彼女が見たのは床の上でふるふると震える人間大のスライムの姿だった……。