サンの受難の続編

アシタカの悪夢

作:兜さん

 ―あらすじ―
あのあと、サンはアシタカの腕の中に抱かれていた。すると、モロがやってきて、このありさまに驚いた。アシタカはモロに、この事を告げると、モロはえぼしにむかって、飛びついた。しかし!モロはえぼしの石火矢にやられ、ひん死の重傷をおった。それで、シシ神様にモロの命をささげる代わりに、サンを元に戻してくれと・・・。シシ神がやってきて、サンを元に戻していく。しかし、モロの命は、尽きた・・・。そのあと、アシタカの看病の結果、サンは1週間で元に戻った。サンはえぼしに対して深い恨みがあり、サンとアシタカをリーダーとする反えぼし組織を結成。といっても、殆どのメンバーは動物なのだが・・・。その組織が初活動する日がやってきた。えぼし一行が、山を開拓しに来たのだ。そこで、アシタカ一行が迎え撃つが、石火矢衆の前に全滅。アシタカは吹き矢に倒れとらわれの身になってしまったのだ・・・。

アシタカは縄で両手両足を縛られ、上着を脱がされ上半身はだかで、男に担がれてたたら場の小屋、いや小屋みたいな牢獄に入れられていた。縄をほどこうとするが、相当きつく縛られているため、ほどけない。しばらくして、えぼしがやってきた。
「具合はどうだ、アシタカよ?」
「なぜ私の名を?」
「我々の情報をあまく見ないで欲しい。して、サンはどこだ。」
えぼしはサンの居場所を突き止めて、一機に殲滅しようという考えだ。
「しらんな~。サンとは誰だ?」
えぼしの顔色が変わり、男がやってきた。男の手には縄があった。男は縄を天井のはりに掛けると、アシタカの手首の縄に掛け、アシタカを吊り上げた。それから、鞭が用意され、えぼしがそれを持つ。
「サンはどこだ?」
えぼしが問うが、アシタカは答えない。そのあと、びしっと鞭がしなる音がした。アシタカは鞭で打たれている。えぼしの手が、右に左に動くたびに、アシタカが苦痛の叫びを上げる。
「うぐっ・・・ぐあっ・・・・・・」
「アシタカよ答える気になったか?」
「ならないな」
「しかたないな。おい、連れて行け」
そう言われると、男がアシタカを吊っていた縄だけをほどいて、アシタカを連れて行く。アシタカに「歩け」と言ったが歩かないので、首に一撃を入れ、運んだ。気を失っていると、鞭で打たれ目を覚ました。
「ここは?」
「タタラ場だ。さあ、どうしようか・・・。おい、好きにしていいぞ。」
そう言うと、男が4、5人来た。アシタカはタタラ場にある、太い柱に後ろ手に縛られている。それと、足首、太もも、首も縄で縛られている。首にいたっては、少しでもアシタカが下がったらしまる仕組みになっている。
「これは女房の仇だ。食らえ!」
そう言うと、アシタカの腹に殴りかかった。次々に男が殴りかかっていく。アシタカは、一発受けるごとに、悶絶しそうだが、したら最後。首がしまるので、必死に立って耐えている。
「ぐはっ・・うおっ・・・・・がっ・・・」
次々に男が殴りかかっている。そこで、えぼしが
「やめ、あれを用意しろ!」
そう男達に命じた。あれとは、木でできた十字架である。
「さあ、こいつを磔にしておしまい」
そう言うと、男達がアシタカを磔にしていく。キリストみたいに、両手足にくぎが打たれた。
「ぐわぁ・・・」
アシタカはくぎを一本ずつ四本打たれた。そのあと、アシタカはタタラ場の外の河原に連れ出された。いく途中で、いろんな人から、石を投げつけられた。
「なぜ、このような事を・・・」
アシタカがえぼしに問う。えぼしは
「我らはこの山を切り開く。そのためには、邪魔な動物などには容赦せんのだ・・・」
アシタカはえぼしの言葉の意味を考えていた。すると
「よし、ここいら辺でいいだろう」
えぼしが、男に十字架を立てるように言った。あらかじめ掘ってあった穴に十字架の下が埋められた。
「アシタカよ、まだ言う気になれんか?」
「貴様ごときに言えるか」
「仕方ない。明朝八時にお前を殺す。じっくりいたぶりながらな。でも、されたくないのなら、降伏しろ。そうすれば助けてやる。気が変わったら教えろ」
そう言うとえぼしはどこかに行ってしまった。アシタカは胸、腹を強く鞭や素手で殴られたので、生々しい傷がいくつもついている。夜の間も、一睡もできなかった。なぜなら、寝たら番人に鞭で打たれて、おこされるからだ。番人は、
「お前も、もったいないよなぁ。いい男なのに、動物に味方するなんて。でも、味方してしまったから最後だ。お前は死ぬのだ。がはははは・・・」
と言うと、鞭で打ちつづけた。しかも、同じところばかり狙っている。
「ぐはあ・・・ぐうっ・・うわっ・・・・・がはっ・・」
この夜、アシタカの苦痛の叫びがやむ事は、なかった・・・。

翌朝。えぼし一行がやってきた。
「言う気になったか?」
「ふん」
「よし、お前を殺す。石火矢構え!」
えぼしがその号令をかけた時にサンが飛んできて、えぼしの首にすかさず刀を押しつけた。
「えぼし、アシタカを放せ!さもないとお前の首が飛ぶぞ」
サンのとっさの攻撃に、えぼしも反応しきれなかった。
「サン、じゃあお前が降伏するのならば、アシタカを放そう」
「うっ・・・」
この時、サンとアシタカには石火矢が2丁ずつ向けられていた。えぼしを殺せば、同時に撃たれる仕組みみたいだ。とっさにアシタカが、
「サン!私にかまうな!やれ!」
「さあ、どうするサンよ。アシタカを解放するため降伏するか、それとも2人で死ぬか、どちらがいい?」
えぼしの問いにサンは少しためらって、
「しかたない。降伏する!」
そう言ってサンは、えぼしの首から刀をひいた。それを見たえぼしが、男に合図する。男はサンに近寄って、思いきり殴った。
「貴様、何を・・す・る・・・・」
サンは倒れた。サンは、全裸にされると、縄で木の十字架に縛られ、アシタカの横に磔にされた。
「おい、大丈夫か?サン?」
アシタカの必死の呼びかけに、サンは意識を取り戻した。しかし、サンもアシタカも、解放されてはいない。サンは、
「約束が違うだろ、えぼし!アシタカを放せ!」
「動物との約束など、守る必要はない!」
えぼしはそう言って、男に何か言った。
「お前らは、動物の手先ゆえ、じっくりといたぶってやる」
そう言うと、男が手に持っていた槍を投げた。
「ぎゃああああ・・・」
どうやらサンの左足に命中したようだ。サンはアシタカとは違い、くぎではなく、縄で縛られていた。縄が切れたが、槍が足を貫通していて木の十字架に刺さっているので、サンは完全に身動きが取れなくなった。
「この外道め!殺すなら一思いにや・・・ぎゃあああ」
サンが言い終わる前に、2本目が投げられた。今度は右の乳房に命中した。
「さあて、もうやっておしまい!」
えぼしの一声で、石火矢が放たれた。
「サン―!!!!!」
アシタカが呼ぶが、答えがない。死んだみたいだ。
「アシタカをおろせ。だが、磔のままだ。そして、タタラ場に連れて来い。私は先に行ってる」
えぼしはそう言うと、タタラ場に行った。アシタカは、磔のまま、タタラ場に運ばれた。
「アシタカよ、お前にはここの名物の飲み物を味わって死んでもらう。いいな?」
「飲み物?なんだそれは?」
「じゃあ、持って来い」
えぼしが持ってこさせる間に、アシタカは仰向けにされ、口に筒をいれ込まれて、口が閉じれないようにされていた。
「ほうら来たぞ・・・。じゃあ、まずはへそに一滴飲ませてあげよう」
アシタカがよく見ると、それは鉄が溶けて赤くなっている液体だ。
「やめろ、やめてくれ・・あああああ熱い・・ひいいいいい・・」
アシタカのへそに落とされた一滴は、周りの皮膚や肉を焼きながら徐々に冷えていった。完全に冷えると、へそが鉄で埋まってしまっていた。
「どうだ?さあ、これからが本番。タタラ場名物、鉄の汁をとくと味わえ」
えぼしは、アシタカの口にいれ込まれている筒に、それを流し込もうとしている。すかさずアシタカが、
「まってくれ!降伏するから、許してくれえ~!」
「降伏?笑わせるな!降伏など、ハナから認める気はなかったんだぞ」
そう言うと、鉄の汁をアシタカの口に流し込んだ。
「ぎゃあ~~~~~~~・・・・・・・・・」
のどが焼けて声が出ない。あたりは、異様なにおいに包まれていた。
「おい、こいつを炉にいれてとかせ。使った鉄がもったいない。」
えぼしは、アシタカを炉に投げ込み、完全に息の根を止めた。
「動物にかかわった者はこうなるのだ!はっははは・・・」
えぼしは、誇らしそうにアシタカが溶けていくのを見つめていた。
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