火責め
炎や熱を用いた拷問。比較的古くから存在する拷問だが、中世以降は単独で行われる拷問というよりも他の拷問の補助として行われることが多くなった。
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拷問編:
1)炎を用いる(単独)
直接炎を用いて犠牲者の身体をあぶる、あるいは焼くというのは火責めのもっとも基本的な形である。人間が火を使うことを覚えた直後から行われていたと思われる。
身体をあぶる場合は、蝋燭を用いる方法がもっとも一般的である。松明などの大型の炎を用いた方が効果は有りそうに思えるが、実際には手軽なことに加え、相手に与える苦痛の大きさをコントロールしやすいため蝋燭のような小型の炎の方が有効なのである。
焼く場合は、あぶる場合と同じように蝋燭などの炎を用いる場合と、犠牲者の身体に油を塗っておいて火を付ける場合がある。あぶられるよりも当然苦痛の度合は大きくなるが、同時に犠牲者が負う火傷も酷いものになるため死に至る危険性も出てくる。拷問として行う場合、過度に犠牲者を傷つけるのは好ましくないため、手加減がしやすい蝋燭などの小さな炎を使うことがやはり多い。網の上に寝かせ、下で炎を燃やすといったやり方も有るが、犠牲者が死に至る危険性が高いためあまり用いられない。
変わった例として、硫黄を浸した羽に火を付け、両手を縛って頭上に引き上げ、立たせた犠牲者に投げ付けるという方法も有る。命中精度は高くなく、どちらかといえば燃える羽を避けようともがく犠牲者を見て楽しむという遊戯的、趣味的な拷問だが、それでも燃える羽は身体に触れると貼り付き、肌を焼くためにかなりの苦痛を与える。-→小文
2)加熱した物を用いる(単独)
用いられるものは鉄が多いが、陶器や石などを加熱して用いる場合も有る。基本的には犠牲者に直接押し付けて用いるが、身体から離しておいて熱であぶることも有る。
直接押し付ける場合は、炎を用いて身体を焼く方法とほぼ同じ効果が有る。炎を用いた場合、炎の揺らぎによって火傷を負う範囲が広がるが、加熱した物体を押し付ける場合は狙った場所だけを確実に焼けるため好まれたようだ。
(特殊)鉄板踊り
熱した鉄板の上で人間を踊らせるというもの。手や髪などを縛り、吊してから鉄板の上に下ろすのが一般的。耐熱性の手袋をはめさせて、四方を檻で囲った鉄板の上に放り出すというやり方もある。逆立ちをすれば熱さからは逃れられるため、
犠牲者は懸命に逆立ちをすることになる。しかし、いつまでも逆立ちを続けることはできないからそのうち鉄板の上に倒れ込み、身体を焼かれてもがき苦しむことになる。
(特殊)目あぶり
目のそばに加熱した物体をかざしておくことで目を乾燥、白濁させ、失明させてしまうといもの。
針などを用いて目を潰す場合と比較すると、じわじわと視力を奪っていくため犠牲者に与える精神的苦痛が大きくなるため、より有効な手段であるといえる。
3)補助として用いる
火責めが補助として行われる場合、最も多いのは他の金属製の拷問器具を加熱してから用いるというものである。ペンチや洋梨、乳房裂き器など、金属で出来た拷問器具は数多い。それらを用いた拷問を行う際に、あらかじめ加熱しておくことでより大きな苦痛を与える効果を狙うことが出来る。
また、それ自体の使用頻度が低い器具では有るが、審問椅子を用いた拷問の際には頻繁に火責めが補助として用いられた。犠牲者の足が床につかない高さの場合は足の裏にラードを塗っておいてから足の下に焼けた石炭を置く、ということが頻繁に行われたし、椅子の下で石炭などを燃やして椅子を加熱、座っている犠牲者の尻を焼くということも行われた。中には、審問椅子自体の座る部分に空洞が作られている場合もあり、このような椅子は最初からそこに石炭を入れて火責めを加えることを想定していると考えられる。
4)見せる
人間も動物の一種であり、本能的に炎を恐れる。そのため、松明などの大型の炎を顔の前に突き付け、脅迫するといったこともよく行われた。脅迫効果を高めるため、身体に油を塗っておくこともある。もちろん、脅しても自白が得られない時はそのまま実際の拷問に移行する事が多い。
また、蝋燭などの炎を凝視させるというやり方も有る。まぶたを指で押さえ、目を閉じられないようにしてひたすら炎を見つめさせるのである。失明させるのが目的ではないから定期的にまばたきはさせる。これをやられると網膜に揺れる炎の残像が焼き付き、本能的な恐怖感を呼び起こすという。あまり一般的なものではないが、意志の弱いものであれば最悪発狂してしまうことも有るらしい。
火責めとは呼べないかもしれないが、真っ暗な部屋の中に犠牲者を閉じ込め、蝋燭を一本だけ与えておくという拷問も有る。暗黒の世界で唯一の光源であるために犠牲者は自然と炎を見つめることになり、凝視させるのと同様の効果が有る。また、蝋燭が徐々に短くなっていくことによる不安感や、蝋燭が燃え尽きた後の暗黒に包まれる恐怖感などで、犠牲者を精神的に追い詰めることも出来る。これは、暗闇拷問の補助として用いる場合といえるかもしれない。
処刑編:
1)炎を用いる
火刑、いわゆる火あぶりの刑。洋の東西を問わず広く行われ、大抵は極刑として位置付けられる。しかし、これはどちらかというと『炎は全ての罪を浄化する』という宗教的な意味あいが大きく、必ずしもその苦痛の大きさが他の処刑と比べて著しく大きいというわけでもない。
もちろん、火刑が苦しい処刑であることは確かだが、実際には犠牲者は比較的早い段階で煙によって窒息、失神してしまう。意識を保ったまま身体を焼かれる苦痛を味わう、というのは、処刑の最初の頃だけであるのが普通だ。時には、煙によって失神できないようにじわじわと焼くことも有り、その場合は確かに非常に大きな苦痛を与えることになるが、そのような例は希である。むしろ、苦しみを短くするために処刑の直前に犠牲者の喉を切って殺しておく、とか、胸に火薬の入った袋を下げておいて火に包まれた時点で死ぬようにしておく、などといった処置が施される場合の方が圧倒的に多い。
火刑の方法には、大きく分けて二種類ある。足元に薪や藁を積んでおいて火を放つ方法、そして、犠牲者の全身を藁などを積んで覆ってから火を放つ方法である。
一般的に火あぶりというと前者が連想されるが、実際にはむしろ少数派、初期型である。この方法では風向きなどによっては炎がうまく犠牲者の身体を包まず、薪が燃え尽きても犠牲者の足が黒焦げになっただけで生きていた、などという事故が起こりやすいのだ。利点としては、複数の人間を処刑する場合に手間が掛からずに済むということが上げられるが、確実性は低い。ドイツではこの方法がよく行われていたようだ。
日本、フランスなど、多くの国で採用されている後者は、全身が炎で包まれるため確実に焼き殺せるという利点が有る。また、煙による早期の失神、事前に殺害しても観衆にそれを悟られずに済むなど利点は多い。弱点として、観客に炎に包まれて苦しむ犠牲者の姿が見えないというものがある。中世の処刑は娯楽としての役割が大きかったし、見せしめとしての効果も低くなる。また、絵画の題材としても適さないせいか、火刑を描いた絵画では足元にのみ薪を置いた構図になっていることが多い。映像作品でも見た目の問題からか足元式が一般的であり、火刑といわれて少数派な方式を連想しやすいのはそのせいがあるかもしれない。
(特殊)クエマドロ:
巨大なかまどの中に人間を押し込め、火を放って焼き殺すというもの。中世ヨーロッパの異端審問で行われていたと言うが、現実に行われていた処刑なのか、創作なのかは今一つ判然としない。
ゴミの焼却炉などを利用することで再現が可能。
2)熱したものを使う
鉄板、あるいは網の上に寝かせ、下から炎で熱して焼き殺すというもの。網の上の場合は炎で焼く場合との差異が明らかではない。
実際には、火を用いた処刑といえば火刑であり、この方式はそれほど行われなかったようだ。犯罪を犯した人間を処刑するというよりは、権力者が趣味的に行うものといえるかもしれない。
変わった例として、加熱した鍋、兜などを頭に被せるという処刑法も有る。日本で行われていた『火頂』と呼ばれる方法だが、これをやられると頭蓋骨が砕けるという。
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